重要な任務を終えオーナーを募集
95台だけ作られたグロリアの希少なオリンピック協賛車の1台を手に入れ、新車のようにレストアしたのが「プリンスガレージかとり」の代表を務める香取孝司さんである。
「このグロリアは、2006年にひょんなことから手に入れたんです。関西に行った帰りに、知り合いのクルマ屋さんに寄ったら、そこに淡いブルーのグロリアがありました。ボディカラーと多摩ナンバーだったことから、ひょっとすると1964年の東京オリンピックに使われたクルマでは、と思い、引き取ったのです。あとで友人が持っているオリンピックバッジと証明書と照らし合わせ、実際に使われたクルマであると確信しましたね。北京オリンピックに間に合わせようとレストアを始めましたが、間に合いませんでした」と、発見したときのことを振り返る。
当時のプリンス自動車の新聞広告には「わずか1カ月間だけオリンピックに使ったグロリア・デラックスを特別価格でお譲りします」と書かれていた。このグロリアは、そのうちの1台だろう。ほとんどオリジナルの状態だったし、トランクには車載工具やジャッキなどが入ったままだった。程度はそれなりによかったし、走ることができたため、レストアを実施したのである。
幸運だったのは、その当時、プリンス自動車の宣伝部にいた人が予備の聖火を保管していたし、予備のステッカーや東京オリンピックの布製フラッグなどもいい状態で保管されていたことだ。そこで縮んでしまったステッカーなどは作り直し、ボディに貼っている。聖火は、火薬が入っている状態のまま見つかったので、意外に重いそうだ。
ボディ色だけじゃない専用エンブレムも!
ボンネットとボディサイドには日の丸と五輪マーク、そしTOKYO1964のステッカーを貼った。また、フロントグリル向かって左側には東京オリンピック東京大会に使用する公認車両であることを示す四角いプレートとJAFが製作した東京オリンピックのカーバッジを装着している。リヤで目を引くのは、ナンバープレート右側に装着されたTOKYOと1964の二段のエンブレムだ。特別装備ではないが、ゴールドのGLORIAのレタリングも似合っている。この東京オリンピック協賛車は、クラシックカーイベントなどに招かれ、年代を超えた人たちから注目を集めた。また、地元の香取市役所でも展示イベントを開催したが、ここでも市民の人たちを虜にしている。