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貴重な「文化遺産」が存亡の危機! 日本初の常設サーキット「多摩川スピードウェイ」跡地を絶対に保存すべき理由とは

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 多摩川スピードウェイの会/原田 了

治水事業と両立されることを切に願う

 そんな多摩川スピードウェイ(のスタンド)跡地ですが、じつは今、存亡の危機に瀕しています。『多摩川スピードウェイ』の跡地保存と、その歴史的意義の研究・情報発信を行う任意団体『多摩川スピードウェイの会』(会長:片山 光夫/https://www.facebook.com/TamagawaSpeedwaySociety)の緊急声明によると、「多摩川河川敷の堤防強化工事の一環として、現存する観客席を完全に取り壊し、盛り土や連接ブロックにより新たな堤防を造成することになった」とされています。

 そして「多摩川河川敷の堤防強化工事を順次進めてきた国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所からは、多摩川スピードウェイの跡地がある丸子橋付近(川崎市・上丸子天神町地区)について、2021年10月ごろに着工する旨、7月2日に初めて通達がなされた」とのことです。

多摩川沿いのイメージ

『多摩川スピードウェイの会』では、「国交省による一級河川の治水事業は公益性・流域住民の安全のため、最優先で実施されるべきもの」との認識を示しています。そのうえで、「本跡地と観客席の日本の自動車産業発展における産業遺産的な重要性、さらに川崎市の行政ビジョン『川崎市新多摩川プラン』で跡地の保存が明言されていることに鑑み、観客席の保全と治水事業の「両立」が図られるべきものと考えます」としています。

 また「両立を図るために、7月12日に行われた会議において工事計画見直しの申し入れを行い、観客席の部分的な移設などの妥協案も提示したところ、担当官は現工事計画を決定事項として伝えるのみで、保全に向けたほかの工法については検討・協議の意志さえ示すことがなかった」とのことです。

 これまでにも各地で、こうした問題が起きてきました。そしてこれまでのケースでは“文化遺産”の価値がないがしろにされ、問題解決に長い時間が割かれることも多くありました。もちろん、治水事業の重要性は言うまでもありませんが、それと同じくらいに“文化遺産”の価値も見過ごすことはできません。とくに、今回のようなケースでは、一度取り壊してしまうと、二度と手に入らない訳で、国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所には『多摩川スピードウェイの会』と議論を尽くす会議をし、その上でも決断には慎重にも慎重を期してほしいものです。

観客席イメージ

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  • 『商工大臣カップレース』スタートシーン 多摩川スピードウェイの会
  • 跡地の解説プレート 多摩川スピードウェイの会
  • 多摩川スピードウェイの観客席
  • 観客席イメージ
  • 多摩川沿いのイメージ
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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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