パネル以外にもウッドを採用する例が増えていく
そのほか、当時流行ったのはステアリングやシフトノブだけでもウッドにするというもの。上記の車種と同時期でいうと、マツダ・コスモスポーツが大径&フラットのウッドステアリングを採用している。こちらも海外の影響があるように思え、イギリス製ではモトリタのウッドステアリングはブランド品だったため、このイメージを取り入れる目的もあったのではないだろうか。
当時の純正ステアリングやシフトは樹脂製でツルツルした表面のものが多かった。そこに対して細身でニスが表面に塗ってあるものの、握り心地は比べものにならないほどで、憧れの装備だったのも納得だ。
その後1990年前後になると、好景気を背景にしてデザインが複雑化する。樹脂の加工技術が向上したこともあって、本物と見紛えるようなウッド調パネルも登場。ミニバンやワゴンなどの実用車にも、ウッドパネルの使用例は増えている。クルマの内装は耐火性能を確保する必要もあることから、樹脂のほうが取り入れやすいというのも後押しした。
木目調の樹脂パネルが増えていくなかで、逆にウッドにこだわって注目を浴びたのが、1985年にバブルの追い風もあって登場したホンダ初の高級車レジェンドだ。当時、ホンダはイギリスのローバー(正確には複数企業体のブリティッシュ・レイランド)と提携していたこともあって、さまざまなノウハウを得ている。そのうちのひとつがウッドの使い方だ。これを受けてホンダは、柳宗理のバタフライスツールなどを手がけた、日本を代表する木工メーカーである天童木工にパネル製作を依頼して、歴代レジェンドに採用。その後もインスパイアなどにも拡大して使っていたほどだ。
過去には外装にウッドを採用した例も
ウッドつながりで紹介したいのが、1980年代に流行ったウッド柄のボディ。日産サニーカルフォルニアやシビックカントリー、日産スカイラインや日産セドリック・グロリアバンなど、いくつかのモデルに採用されていた。木目調のシートをサイドに貼ったもので、当時のサーフィンブームを狙った装備だったと言える。ルーツとしてはこちらも海外で、馬車づくりから派生したのも同じ。アメリカではジープのグランドワゴニアなどが採用していて、無骨な開拓イメージをアピールしていたし、イギリスではミニのカントリーマンなど、牧歌的な雰囲気を持っていた。
現在、外装については消滅してしまった。内装についても、未来的なデザインが好まれる時代に。昔のようにウッドパネルが諸手を挙げて採用される時代ではないが、本物のウッドパネルももちろんまだある。たとえばレクサスのLSはウォールナットなどの定番だけでなく、寄木細工の技術を取り入れたものやレーザーで金属を埋め込んだものなど、木製のパネルを複数用意している。また、今後ますます進むであろう、プレミアム化や高級化の波において、レザーとともに重要な素材になっていくのは確実だろう。