クルマ好きじゃなくても一度は見たいと思わせた存在感
2001年の東京モーターショーは衝撃だった。光岡自動車が出展した「オロチ」は、クルマ好きだけでなく、ラジオやTVでその存在を知った女性たちまでも、一度は見てみたいと騒いでいた。そして実際に会場まで足を運んだオバサマ方がいたのも事実。キワモノというひと言では片付けられない、個性派スーパーモデル。10年以上に渡り、世の中に話題を振りまいた光岡自動車の「オロチ」について振り返ってみよう。
10番目の国産自動車メーカー「光岡自動車」
光岡自動車といえば、古くは「BUBU501」などのミニカーを製作したり「クラシックSSK」や「ラ・セード」といったクラシックカーテイストあふれるクルマがお馴染み。また、マーチをベースにしてジャガー風のボディとしたパイクカー、ビュートが大ヒットとなって、街中でもよく見かけたものだ。このようにクルマ作りといっても、イチからではなく、市販車をベースとして、その上にボディを架装したり、パネルを追加することでオリジナルとしているのが光岡の特徴。霊柩車を作ったり、中古車店や輸入車ディーラーまで経営している、ネットワーク企業である。
光岡の注目すべき点は上記のように、ベースに追加しているクルマだけでなく、シャーシから作ったモデルもあること。その第一号が「ゼロワン」で、スーパーセブン風のデザインながら、シャーシも自社開発。これが型式認定されたことで、10番目の国産自動車メーカーと騒がれたものだ。ちなみに、スーパーセブンにかなり似ているのは「コンセプトが同じだとどうしても似てしまう」とのことだった。
第35回東京モーターショーでコンセプトモデル登場
そのゼロワンに続く、型式認定第2号車が2006年に登場したオロチだ。車名の由来は「八岐大蛇(やまたのおろち)」からきていて、車名も漢字で書くと「大蛇」となる。もともとは2001年の第35回東京モーターショーにホンダのNSXをベースにして作ったコンセプトカーとして出したのが始まり。
会場で反響があったので市販化に前向きに検討するようになり、その後も2003年の第36回東京モーターショーで、さらに煮詰めたコンセプトカーを登場。自社製シャーシに進化するなど着々と市販化に向けて準備が進んでいることが見て取れた。
そして2005年に行われた第37回東京モーターショーで、市販モデルをお披露目している。この際に、カウンタックのような上開きのドアを採用した参考モデル(しかもオーブン)も置かれていて、プレスデーからしてかなり注目を浴びていた覚えがある。
2006年ついにオロチ発売! 400台限定だったが……
実際に発売されたのは2006年10月で、400台限定。発表と同時に予約を開始して、順調に受注が進んだが、よくわからなかったのが限定なのにイヤーモデル制を採用していたこと。一気に売れるわけではなくて受注途中で進化するのと、1台ずつ手作りなのでこなしていくうちに仕様が変わるからだったようだ。ちなみに400台を手作りすると最後の納車まで4年かかるとされていた。
ベースは前述したようにオリジナルのシャーシで、エンジンはトヨタと契約を結んで供給してもらった3.3L V6をミッドシップに横置き搭載した。このV6は3MZ-FE型と呼ばれるもので、ハリアーなどに搭載されたエンジンだ。ミッションについてはアイシンの5速ATで、そのほかの細かいパーツも他社の純正部品を流用して使っていた。
ボディサイズは全長4560mm、全高1180mmで、注目すべきは全幅で2035mmもあったこと。実車を見てみるとこの幅広さは強烈に実感できて、ワイドすぎる佇まいはオロチならではだ。