わずかな放置が招いた最悪の事態
黒い塗装色のクルマを所有していた時のことだ。高速道路のパーキングで一服してクルマに戻ると、ボンネットの上になにやら白と緑、2トーンの粘性の物体……鳥のフンだ!
傷や汚れが目立ちやすい色だったため、新車の時に専門業者にボディコーティングをオーダー。塗膜はしっかりガードされているものと安心していた。気にはなったが、その場で拭き取るのは億劫だし、「あとでいいや」と放置したのがマズかった。
1時間放置してわかった鳥糞の恐ろしさ
およそ1時間後。自宅に戻ってホースの水で、カピカピに乾ききったフンを洗い流す。ところが、フンを取り除いた跡には直径4cmほどのクッキリと輪ジミが。目を凝らして見てみると、コーティングの被膜なのか塗装面なのか、プツプツとした細かい凹みのようなもの。あわてて目の細かいコンパウンド(研磨剤)で補修を試みるも、磨き傷でさらに黒い塗膜が小傷で白っぽくボケてしまった。 これは自分の手に負えないとあきらめ、業者に持ち込み、磨き直してもらって塗膜は復元したが、鳥糞の恐ろしさを実感することに……。
鳥類の消化液は硬い食物も溶かす強酸性
鳥糞の被害は、鳥類の活動が活発になる春先から秋がピークといわれるが、冬だって鳥は飛ぶ。季節による程度の差はあるかもしれないが、電線や樹木の下などに不用意にクルマを停めれば、いつ“糞害”に遭ってもおかしくない。
食性によっても異なるが、野鳥の主食は木の実や虫、魚など、酸性物質とアルカリ性物質の2種類。歯をもたないためクチバシでついばんで、直接腹中の消化器官に送り込む。それらは、体内で咀嚼(そしゃく)、消化液で分解され、カスは最終的にフンとなって体外に放出される。硬い食物も消化する=溶かす必要上、きわめて酸性の強い消化液を持っているという。
一般的に、クルマの塗膜は比較的アルカリ性に強いとされる反面、酸性に弱い。そのため、酸性雨などの対策としてコーティングで保護するのだが、鳥糞が含む酸は、その被膜を簡単に侵してしまうほど。また、鳥糞には木の実の殻や、食物に付着していた微細な砂など、消化液で溶かしきれなかった硬い異物が含まれている。