乗り心地も大きく左右する重要な機能
タイヤとボディの間に介在し、クルマの動きを適切に制御する存在がサスペンションです。オイル、ガスを内包した直径わずか数cmのダンパーの動きが、路面の凸凹を受け止め車両を安定させ、コーナリングの姿勢を制御してくれているのです。ダンパー内にあるピストンの、たった20cmにも満たない上下動が、そのクルマの性格をも決定するという重要なパートなのです。
減衰力調整はどのような走り方をするかによって決まる
最近ではエレクトロニクスによる制御で、乗り味を可変させるテクノロジーも花盛りです。しかし、サスペンションの基本は、あくまでもバネとダンパーです。上下動を受け止める存在がバネとなります。入力を受けると縮み、そして反力で戻ろうとします。バネだけではふわふわしたままになってしまう。それを収束させるのがダンパーの仕事「減衰」なのです。
アフターメーカーがリリースしている多くのサスペンションキット(車高調)には、ほとんどこの「減衰力調整機構」が備わっています。多くは24段、32段などメーカーによってその調整範囲の段数が決められています。この間を任意に選ぶことで、自分好みの乗り味を見つけていくのです。
ただその探求ですが、どこを走るのか、どのような走りのスタイルなのか。柔らかい乗り味が好きなのか、多少は堅くてもシャープに切れ込むハンドリングが好きなのか……。これらは個人的な好みの要素が多く、すんなりと正解にたどり着けるというものではありません。
「沼」と例えられるように一見、終わりのないように感じられます。しかし、これが逆にサスペンションセッティングの面白いところであり、皆がハマってしまう魅力なのです。
あえて大きく変更して違いをわかりやすくする
減衰力の調整は、多くはダンパー本体に備わる調整ダイヤルによって行われます。ダイヤルを回すことで減衰力の強弱を選んでいくことになるのですが、設定されている段数が、調整範囲の幅の広さではないことに注意しましょう。段数が多いからといって、硬い~柔らかいの調整範囲が広いわけではないのです。
その調整範囲も、ダンパーメーカーの考え方や工作精度によって違いがあります。HKSの新作、ハイパーマックスSのように、従来品よりもソフト方向へ変化量を大きくすることで、奥の深いセッティングが楽しめる車高調もあります。
メーカーによってはキメ細かなセットを行うため、96段といった段数を選べる車高調もあります。ただしこの細かな調整範囲を使いこなせるのは、ハイアマチュア以上と思ってもらったほうがいいでしょう。
減衰力調整をこれから使っていきたいといったビギナーであれば、1段ずつといった細かな段数でセッティングを始めてしまうと、正直、走りの微差を体感することはどうしても難しくなります。そうするとせっかくのセッティングの楽しさから離脱してしまうことにもなりかねません。せっかく調整機能が付いているのですから、積極的に活用していきましょう。
ポイントとしては、4段階ごと、8段階ごとなど、あえて調整の振り幅を大きくして自分の好みを探していくことです。
32段調整の場合なら、まずは基本セットの中間、16段目にセット。多くの場合はこの位置メーカー推奨値なのですが、まずはこの状態で走り込み、自分の好みに合っているかどうかをチェックします。
硬いと感じるなら柔らかい方向へ調整していくことになります。その際、思い切って24段目までダイヤルを回してみましょう。初めは大きく8段動かしてみるのです。それから走ってみて、まだ柔らかくしたいと思ったなら28段目まで、もっと柔らかめがいいならMAXの32段目へといったように、思い切って荒めの段数でセッティングしていくほうが、結果的に好みの乗り味を見つけやすくなります。
乗り心地だけでなく、ロール(横方向の揺れ)&ピッチング(縦方向の揺れ)の発生も抑えられることで、ステアリングの応答性も向上します。