走行状況に応じて自動でセッティング変更できる製品もある
そしてネクストステップとして大事なのは、前後の減衰力のバランスです。フロントの減衰をリヤより強くすればアンダーステア傾向に、その逆はオーバーステア傾向になるというのがセッティングの基本です。実際には車高やバネレート、タイヤ銘柄など複雑な要素がからみ合っていくので、段階を踏んでセッティングしていきましょう。
調整の際は「戻し」という概念で合わせていきます。これは、調整ダイヤルはその先にあるニードル(針)を動かしてダンパー内部のオイル流動抵抗を調整していく機構になっているのですが、ニードルのネジ山には微少ではありますが公差があります。この影響をできるだけ避けるための措置です。4輪(4本のダンパー)を同条件にすることはセッティングの基本です。
目いっぱいダイヤルを締めた「全締め」の状態からダイヤルを緩めていきます。メーカーによってクリック感に違いがあるので、愛車のダンパーのクセを覚えておきましょう。
フロントサスペンションの多くは、トップ位置に調整ダイヤルが備わるので、ボンネットを開ければ簡単にダイヤルを回すことができます。
リヤサスの調整に関しては、サスペンション形式によってダイヤルの回し方の難易度が異なります。ジャッキアップの必要があったり手や服が汚れてしまうこともあったりと、どうしても調整がおっくうになってしまいがちです。しかし、それを手助けしてくれるのがワイヤレスで減衰力を調整してくれるデバイスです。
ブリッツの「ダンパーZZ-R DSCプラス」のように、減衰力をフルオート制御してくれるキットが人気です。リモコン操作で任意に減衰力を可変できるのはもちろん、車速や加速度をリアルタイムにセンシングして自動で減衰力に可変してくれるモードなどかなりの先進感です。
スポーツ走行では、たとえばコーナーでは外側輪だけの減衰力を硬く、加速時には後2輪を、減速時では前2輪を硬くすることができたりと、マルチな攻めたセッティングも可能です。またKWのように、スマホアプリでの減衰力調整が可能なものもあります。この方向への進化は時代の流れですね。
ほかにも、伸び・縮み側を同時調整するだけでなく、KWからは、伸び側・縮み側それぞれ独立した減衰力調整ができる車高調も揃っています。さらに縮み側を低速域・高速域と別立てに調整できるというハイエンドなキットもあります(KWクラブスポーツ3ウェイや、ST XTAプラス3)。
サーキットでは、縮み側を強めにしてしっかりとしたダンピングを効かせ車体を安定させつつ、段差などの不意な入力の多い街中では伸び側を柔らかめにしタイヤの追従性を上げる。こういった、しっかりと二兎を追えるオールラウンダーとして仕上げることができます。それなりに高価ですが、まるでレーシングマシン並みのキメ細かなセッティングができることを考えると、がぜん魅力的に映ります。