ミニバンや背の高いコンパクトカーに採用例が多い
では、具体的に各自動車メーカーにどんな福祉車両があるのか? ここではすべてを紹介できないので、一例としてトヨタとホンダの車両を紹介してみたい。コンパクトカーでも背の高いクルマ、そしてミニバンの採用例が多いことの裏付けになるはずだ。
トヨタでは、比較的にルーフの高さが気になりにくい助手席回転シートとしてプリウス、シエンタ、ヤリスがある。しかし、より大開口なドア開口部が必要になる助手席リフトアップシートでは、なるほど、ルーミー、ノア&ヴォクシーといったハイトワゴン、ボックス型ミニバンに設定されている。
サイドリフトアップチルトシートの場合も、アルファード、ノア&ヴォクシーのボックス型ミニバンとなる。だがトヨタでは、アルファードにサイドリフトアップシート(脱着タイプ)が用意されているのが大きな特徴だ。これは、2列目席のキャプテンシートがそのまま車外で車いすとして活用できるタイプ。車いすをわざわざ用意しなくて済むメリットがあり、また、いすのかけ心地もクルマのシート基準となり、車内外で快適に移動できるというわけだ。
ホンダでは、助手席回転シート仕様車としてコンパクトカーのフィット、軽自動車のN-WGN、5ナンバーサイズのコンパクトステーションワゴンのシャトル、助手席リフトアップシートはフリード、ステップワゴン、オデッセイに用意されている。
サイドリフトアップシートはコンパクトミニバンのフリード、ボックス型ミニバンのステップワゴン、そして上級Lクラスミニバンのオデッセイに設定されている。2021年内に生産中止となるオデッセイは、広大なキャビンスペース、荷室ともに低床パッケージが自慢。そのフロアの低さが福祉車両の強い味方になる。
また、車いす仕様車としてはスーパーハイト系軽自動車最大級の室内空間を持つN-BOX、フリード、ステップワゴンがラインアップされている。とくにN-BOXの荷室フロアの低さは驚異的で、引き出し式のスロープの角度も穏やか。もちろん、ルーフ、天井高も高く、介助されるほう、介助するほうの双方が、快適に車いすの乗降機能を利用できるのである。
シートを展開できるスペースの確保も大事だ
ただし、サイドリフトアップシートは駐車スペースの横方向(左隣)に、スロープ仕様は車体後方に余裕がないと、展開できない点は要考慮である。車体まわりにもっともスペースを要せず展開できるのは、助手席回転シートである。
あとは、どのタイプの福祉車両が必要かを、少し長いスパンで考えて選ぶことが重要になるだろう。いずれにしても、ドア、荷室の開口部の大きさ、フロアの低さがキーワードになるということは覚えておいていただきたい。そうした乗降性、居住性に優れたクルマが、ファミリーカーとして使い勝手に優れている点も、である。