現代のクルマでは味わえない魅力がある!
1980年代後半以降のクルマは、燃料供給といえば電子制御のインジェクションが当たり前。でもそれ以前のクルマは、ベルヌーイの法則を応用した機械的なキャブレターが主流だった。
小まめなセッティングは必要になるが走りは最高
かつては「ソレ・タコ・デュアル」といった言葉があったように、1970年代・1980年代のチューニングでは、キャブレターを「ソレ」=ソレックスなどのスポーツキャブレターに交換するのが定番。ソレックスやウェーバーなどのキャブに交換すると、独立スロットルになってスロットルバルブの口径も大きくなるのでパワーアップし、レスポンスも鋭くなる。
その代わりキャブは、気温、湿度、気圧の影響を大きく受ける。気温が高くなれば、空気密度が少なくなって、空燃比は濃くなるし、湿度が高くなっても空気密度は少なくなって、空燃比は濃くなる。ワインディングなど標高の高いところにいっても空気が薄いので、空燃比は合わなくなってしまう……。
電子制御インジェクションならコンピュータが最適な空燃比に調整してくれるのでグズることはない。なによりつねに理想空燃比に近い状態で燃焼させることができるので、排ガスをクリーンにできる。インジェクションが普及したのも、厳しい排ガス規制をクリアし、低燃費を実現するのに欠かせなかったからだ。
キャブレターの場合、そのシチュエーションに合せて、ジェットを交換したりニードル位置を変更して、セッティングを出さなければならない。キャブレターのセッティングは、ノウハウが必要になる。だが、高価な道具は一切不要で、アマチュアでもイジることはできた。
手間といえばけっこうな手間だが、その代わりセッティングが決まったときの加速フィールは快感そのもの。独特の吸気音とともに回転数が鋭く上昇していく伸びの良さとパンチ力は、インジェクション車ではちょっと味わえないものかもしれない。