スペシャリティと呼ぶにふさわしい至高の2+2クーペ
スバル史上もっともラグジュアリーなスペシャリティモデルといえばアルシオーネSVX(以下、SVX)だろう。巨匠ジウジアーロ率いるイタルデザインが手掛けた、美しい2+2のグラスコックピットを持つ3ナンバー専用のクーペボディに、3.3L水平対向6気筒エンジンを搭載。当時の先進メカニズムを積極的に搭載するフラッグシップモデルであった。
専用エンジンの3.3L DOHC水平対向6気筒を全モデルに搭載
SVXの前身にあたる初代アルシオーネ(AX型)は、当時国産車初のCd値(空気抵抗係数)0.30の壁を超えた0.29(VRターボのFFモデル)の空力性能を実現。くさび型のクーペボディにはフルタイムAWDとFFの駆動レイアウトが設定され、組み合わされるエンジンは水平対向4気筒ターボに続き、水平対向6気筒などがラインアップに追加された。
2代目アルシオーネとなったSVXは1991年9月にデビューした。エンジンはDOHC化され排気量は3.3Lへと拡大。EG33型のエンジンはSVXのみ搭載の専用エンジンで、6気筒エンジン+AWDという組み合わせのみの設定であった。また登場時は4WS(4輪操舵)を備えるバージョンLと標準モデルのバージョンEというシンプルな2グレードを展開する。
スバルの真骨頂であるAWDシステムは、2代目レガシィ以降のターボ×ATモデルではお馴染みのVTD-4WD(不等可変トルク電子制御4WD)をスバル車として初搭載したことも、スバルの最新のテクノロジーを惜しみなく投入したという点は共通だ。
専用装備の追加で商品性を高めた特別仕様車を次々に投入
1993年11月には、バージョンEをベースとした富士重工業(現SUBARU)40周年記念車としてアルシオーネSVX S40というモデルを限定300台で発売した。シルバーのインパネやジャガードファブリックシートなどの専用装備が多数採用された。1994年7月にはS40のシートをファブリックからモケットへ変更したS40IIが300台限定で発売されている。
同年11月にはバージョンEをベースにBBS製鍛造アルミホイールや高級オーディオを標準装備した特別仕様車のS3を限定500台で販売。このようにSVXは台数限定の特別仕様車が数多く設定されていたことでも知られる。 そして1995年7月には後期型が登場する。フロントグリルのデザイン変更がエクステリア面のトピックとなったが、同時に4WS搭載車が廃止されたほか、BBS製鍛造アルミホイールを装着したS4グレードを新たに設定。以降、販売終了までS4のみの単一グレードで販売された。
イベント会場では黒山の人だかりで色褪せないインパクトはいまも健在
初期型の登場してから今年で30年となるSVXだが、その流麗なフォルムは30年という歳月をまったく感じさせない美しいフォルムだ。2018年の大阪オートメッセではスバルマガジンブースに編集部所有の後期型アルシオーネSVX S4を展示したが、スバルファンはもちろん、それ以外の来場者からも熱い視線が注がれていた。 来場者のなかには当時を懐かしむ元オーナーをはじめ、SVXが輸入車だと勘違いするほど、発売から四半世紀が経過してもクルマ好きの若者に強烈なインパクトを与えたモデルでもあった。