「スバリストの聖地」までSVXの美味を味わい尽くした
スバルマガジン編集部所有のSVXは、ガレージに18年間保管されていたいわゆる「納屋物件」であった。当時の走行距離はなんと3.5万kmだが、長きにわたり不動のまま保管されていたため、スバリストの聖地として知られる岐阜県中津市の「中津スバル販売」にてレストアを敢行。内外装からパワートレインまで見事に復活したSVXは、現在も編集部のスペシャル過ぎる「足」として稼働中だ。
幸運なことに昨年、SVXで東京の編集部から中津スバルまで車検を受けるために長距離ドライブする機会があった。あらためてじっくり味わいながら走らせると、「500mils a day」(1日に800km)という当時のキャッチコピーのとおり、刻々と変化する路面状況や気象条件でも快適で官能的なドライブを享受することできた。
なかでも3.3L水平対向6気筒エンジンは軽やかながらも、ほどよくしっとりとしたフィーリング。決してスポーティではないが、アクセルを踏み込めば自然吸気らしい乾いたボクサーサウンドを奏でながら1.6t弱のボディを軽やかに加速させてくれた。
とくに最高出力240ps/6000rpm、最大トルク31.5kg-m/4800rpmというスペックは発売から四半世紀が経過した現在でも十二分に通用するもの。ただし10.15モード燃費の8.0km/Lという数値から察することができるように、気持ちの良い加速とともに燃料計の針がみるみる下がっていくさまは、最新のクルマではなかなか味わうことができない貴重な体験でもあった。
理想のダンピング性能を得てさらにスペシャリティ感が際立つ
水平対向エンジンと言えは、EJ20ターボのようなドロドロ音を想像するかもしれないが、走れば走るほど基本設計が30年前のクルマとは思えないほどの高い静粛性に驚かされる。それはフラット6の快音を聴きたいがために、ウインドウを少し下ろしてしまうほどであった。
加えて、編集部のSVXの足まわりにはNEOチューンと呼ばれる純正ダンパーのまま、好みの粘度にブレンドしたダンパーオイルに交換するチューニングが施されているため、SVXのキャラクターに見事にマッチした走りを披露してくれた。
特筆すべきは、路面の荒い場所でも決してバタつくことがなく、4輪がきっちり路面を捉えてくれること。乗り心地はもちろんハードではなく、しなやかにいなしてくれる印象。純正のダンピング特性をそのままワンランク上に引き上げたイメージといったらわかりやすいだろうか。
道中、大雨に見舞われることがあったが、自慢のAWDシステムのおかげで安心感はやはり高い。
唯一、弱点があるとすれば、LEDヘッドライト全盛期のクルマに慣れ過ぎたせいか、ハロゲンヘッドライトでの夜間走行はさすがに暗いと感じたぐらいだ。もちろんそれも味ではあるのだが……。
手に入れるならいまが最後のチャンスか!? 迷ったら「買い!」が正解
2021年8月現在で、SVXは中古車サイトに27台掲載されていた。今回紹介したスバルマガジン号のようなミントコンディションのモデルには、300万円台の値付けがされている。なかには70万円台という個体も存在するが、もちろん格安の個体は年式を考えると、それなりに手を加える必要がありそうだ。純正部品も手に入りにくい状況を考えると、少し高くてもレストア済みの車両を手に入れたい。
人気グレードはバージョンLだが、6気筒ならではのフィーリングや美しいデザインはそれ以外のモデルでも手に入れることができる。レザーシートなどにこだわらないのであればバージョンEやS4といったグレードもオススメだ。 コレクションとしての要素が強い年代のモデルではあるが、まだまだ現役として走らせることのできる実力をもつSVX。ネックは自動車税と燃費、故障時のパーツ調達の難しさ。これらをクリアできるのであれば、注目度も抜群なラグジュアリークーペを今こそ所有してみてはいかがだろうか?