売れなかったが良いものは良い そんなホットハッチとは
コンパクトなハッチバックに力強いエンジンを搭載し足まわりを締め上げて走行性能を高めた、いわば庶民的なスポーツカーといえる存在が“ホットハッチ”だ。初代「VWゴルフGTI」がその発祥といわれ、日本でも多くのクルマ好きを虜にしてきた。
近年、日本だけでなく欧州においても“クルマ離れ”進んでいると言われる背景もあり、クルマ好きを魅了するホットハッチも以前のように百花繚乱とは言えない状況になっている。しかし、新車でもゴルフGTIなどのように注目されるモデルは少なくないし、中古車市場をみればさらに多くのモデルが存在。そこで今回は、新車ではあまり売れなかったけれど今ならまだ中古車で買える注目のホットハッチを紹介しよう。
マツダ・マツダスピードアクセラ
2005年から2010年ごろのマツダは、ある意味突き抜けていた。まずは4ドアセダンの「アテンザ」に272psのターボエンジンを積み、MTと4WDを組み合わせたエボモデルの「マツダスピードアテンザ」をリリースしたのだ。確かに超高性能セダンとして「インプレッサWRX」や「ランエボ」もあるのだから不思議ではないのだが、突如登場したスポーツモデルに誰もが驚いた。
そして続いて2006年に登場したのが、264psのターボエンジンを積んだホットハッチの「マツダスピードアクセラ」。パワートレインは6速MT+FFだった。その後、フルモデルチェンジで2代目に進化している。
すごかったのは操縦性。シャーシにパワーが勝っていたというか、とにもかくにもジャジャ馬。逆に言えばどことなく懐かしく、乗りこなす楽しさに満ち溢れていた。 今どきの出来のいいクルマなんて楽しくない。そんなメッセージが込められた、ホットハッチらしいホットハッチだ。こんな乗り味は、今後二度と楽しめないかもしれない。
プジョー308GTi 270 by PEUGEOT SPORT
プジョー308はフォルクスワーゲン・ゴルフのガチンコライバルとなる、フランスのCセグメントハッチバック。そこにメーカー直系のスポーツ部門である「PEUGEOT SPORT」が手を加えたホットハッチが「308GTi 270 by PEUGEOT SPORT」だ。 そもそも、ベースとなった308GTiからして定番的なホットハッチ。そこへさらにドーピングしているのだから、刺激は鋭いなんてものじゃない。
車名のとおり、エンジンは270ps。それをターボ付きとはいえわずか1.6Lの排気量で実現しているのだからかなりのハイチューンで、動力性能はかなりのものである。 特別色として設定された赤/黒の2トーンカラーは、上下などではなく前後で色が異なるという常識を超えるセンス。それもまた個性だ。
フォード・フォーカス ST
フォードといえばアメリカンブランドだが、欧州にも拠点を持っている。そして欧州拠点で開発されたクルマは、アメ車とは一線を画する欧州テイストで玄人筋のクルマ好きから一目置かれる存在だ。
その代表といえば、かつて日本にも正規輸入されていた「フォーカス」だろう。そんなフォーカスを高性能に仕立てたホットハッチが「フォーカスST」だ。 2006年に日本上陸したフォーカスSTは、2.5Lの5気筒エンジンを搭載し最高出力は225ps。その数字だけをみると物足りなく感じる理由は、さらに上の「フォーカスRS」(日本未導入)の存在もあって遠慮がちだったからだろう。 しかしながら、このホットハッチの魅力はトータルバランスだ。サスペンションが秀逸で、エンジンもサスペンションもでしゃばることなく正統派の高性能車に仕上がっていた。 まさに、初代ゴルフGTIの現代版のような存在だ。フォードのクルマ作りの巧みさを垣間見せてくれた1台だった。