スバル車独特だったサウンドの秘密
90年代後半から2000年代前半までのスバル車は、「ドコドコ~」という独特の排気音を奏でるのが特徴的だった。人によってはドロドロ~やボロボロ~と表現は異なるが、スバルならではのサウンドとして、クルマ好きの人なら耳にした記憶もあるのではないだろうか。
一般的なクルマの排気音と比べ、その独特なサウンドは好みの分かれる音ではあったが、当時のスバル車を象徴する音といえる。なぜ、スバルだけがこの独特なサウンドを奏でていたのか? それは搭載している水平対向エンジンに秘密があったのだということを、振り返ってみよう。
水平対向エンジンの排気管不等長による味わいの音
シリンダーから排出される排気ガスは、エキゾーストマニホールドと呼ばれる排気管で4気筒なら4本、6気筒なら6本を1本にまとめ、触媒やマフラーへと接続される。だが、各シリンダーから1本にまとめる部分までの長さが異なる場合、集合部分で排気ガスがぶつかり合う。このぶつかり合ったときの音があのドコドコ音というわけだ。
スバル車では2003年に登場した4代目レガシィ(BP/BL型)から、排気効率向上を目的に等長等爆エキゾーストと呼ばれる排気系へ一新したことが有名である。だが、じつは1966年に登場したスバル初の市販小型乗用車「スバル1000」も等長エキゾーストとなっていたことは意外と知られていない。
そのあろは1部のNAエンジン車に等長エキゾーストが採用されたが、スバル1000登場から37年後に発売した4代目レガシィではスバル渾身のモデルとしてターボモデルもエキゾーストも一新したことで、独特のサウンドが聞かれなくなった。もちろん不等長ならではのあの音こそがボクサーサウンドだ! と惜しむ声も多かった一方で、排気音の音質までもこだわって調律したと言われる4代目レガシィの排気音は、直列エンジンとはまた異なる新世代のボクサーサウンドといえる。
“ピストンパンチ”を右左へ繰り出す“ボクサーサウンド”
4代目レガシィ登場後は3代目インプレッサWRX STiなど、少しずつだがスバルのラインアップが等長エキゾーストへと変わっていった。ちなみに不等長の排気音=ボクサーサウンドという人も多いが、水平対向エンジンの排気音=ボクサーサウンドであり、等長、不等長問わず“ボクサーサウンド”なのである。
スバル1300からレオーネを経て親しまれてきた不等長のボクサーサウンドはターボエンジン搭載車を中心に3代目レガシィ(BE/BH型)やGD/GG型と呼ばれる2代目インプレッサ(STiは丸目と呼ばれる2002年10月までのモデル)、3代目フォレスター(SH型)、2.5Lターボエンジンを搭載するWRX STI A-Line などで聞かれ、2015年まで販売されていたエクシーガのターボモデルを最後にいったん消滅した。
不等長サウンドを好むユーザーはいまでもこれらのモデルを積極的にチョイスする人も多く、根強い人気を誇る。しかし、前述のとおり、この音が苦手……というユーザーも一定数存在することである意味排気音の好みとしてはバランスが取れている印象だ。ちなみに2代目から5代目までの歴代レガシィを経て初代レヴォーグを所有する筆者は、「どちらのボクサーサウンドも魅力的」と感じる。
アフターパーツのマフラー交換でノスタルジックサウンドも
そんななか、スバルファンの間がざわついたのが、2020年に登場した2代目レヴォーグだ。搭載されるCB18エンジンは、完全新設計で環境にも配慮しつつ1.8Lで300N・mという強大なトルクを発生させる直噴ターボエンジンだが、注目はエキゾーストが不等長となっているところ。
従来はエンジンから4本出ていた排気をひとつにまとめるエキゾーストマニホールドだったが、CB18エンジンは、なんとエンジン内部で2本の排気をひとつにまとめ、エキゾーストマニホールドは4気筒でありながら2本を1本にまとめるだけの形状となっている。これはターボチャージャーまでの排気経路を最短とすることでタービンの効率をあげようというのが目的だ。