エンジンパワーに余裕を与える1L直4ターボ搭載の2ドアクーペ
【FIGARO(フィガロ)/1991年発売/限定販売台数2万台】
そしてパイクカー3部作の最後となるのが、1991年に登場したフィガロだ。車名はもちろんモーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」が由来となる。バブルはすでに弾けていたものの、その余韻は十分に残っていて、不況がやってくるなんて微塵もなし。8000台限定のところ、人気がありすぎて結局2万台が抽選販売された。
こちらも酒井氏が関わっている。ベースは当初の2モデル同様に初代マーチだったが、実際に運転すると正直パワー不足でもあったので、フィガロではターボを装備しているのが注目点だ。つまりマーチターボベースとなる。
海外にまで日産のパイクカー人気が波及した!!
【S-Cargo(エスカルゴ)/1989年発売】
この3部作以外にも、限定などではないがラシーンもパイクカーとされるし、1989年、つまり3部作と並行というか、スピンオフ的な扱いの商用パイクカー、エスカルゴもあった。
3部作のどれもが、今見てもまったく色褪せないし、フィガロはドラマ『相棒』で水谷豊が演じる杉下右京の愛車として登場したし、『攻殻機動隊』にも出てくる。さらにバラエティでは『バナナマンのせっかくグルメ』でも、足として活躍するのを目にしたことがあるだろう。また、なぜかフィガロが海外では刺さるようで、イギリスにはフィガロ専門店があるほど。セレブではエリック・クラプントが乗っていた。
また、どれも作りが贅沢というのが今見ても色褪せない理由のひとつで、Be-1やパオは当時としては最新素材だった樹脂パネルを使ったり、細かいデザインもかなり凝っていた。パオやフィガロのラジオ&カセット(フィガロはCD付き)はレトロなデザインの専用品で、これだけでもプレミアがついているほどだ。
さらにクルマを中心とした文化を発信するというのも掲げていて、Be-1では東京の青山にグッズを扱うアンテナショップのBe-1ショップがあったし、フィガロではなんと『フィガロストーリー』という映画も作られたほど。しかも海外の監督も含めた3名による、東京、パリ、ニューヨークを舞台にしたオムニバスで、東京はかの林海象が担当。しかも、CM感満載かと思いきや、フィガロを前面に出さないという贅沢なものだった。 どこを取っても贅沢というか自由。バブルのあだ花と言ってしまえばそれまでだが、現在のクルマにもエッセンス的なところは継承できるとだろうし、実現すれば面白いことができると思う。実際、専門店もいくつかあって、各車ともプレミアが付くほど。この本格的な遊びグルマに対する需要はあるのではないだろうか。