バリアフリー社会に向けたノンステップバス
都市部を中心に普及の進むノンステップバス。一般的には床が低く、乗降時に乗りやすくするために車体が傾斜するニーリングシステムを備え、中扉から後ろが高くなっているというモデルがほとんど。しかし、この仕様となるまでにはさまざまな紆余曲折を経ているのだ。バリアフリーに向けての公共交通のひとつの流れを振り返ってみたい。
2段ステップからステップなしまで
現在、首都圏ではほとんどの路線バスがノンステップモデルとなっているが、その歴史は古く、1985年に三菱自動車工業(現 三菱ふそうトラック・バス)が前扉、中扉間のノンステップバス試作車を開発。この試作車が京急バスや名鉄バスなど、一部のバス会社に試験的に導入された経緯がある。とはいえ、当時はまだノンステップバスの統一規格などはなく、バリアフリーに向けたバスの低床化は、車両メーカーとバス会社が模索を続ける。
車イスでの車内移動考慮の公共バスへ
もともとバスのボディは事業者によるほぼワンオフとなっており、登場時のノンステップバスもさまざまな形態が見られた。2018年に東京都交通局が導入したスカニア社製「のぼるグレン」というモデルは、前方から後方まですべての床を低床化した「フルフラットバス」として注目を集めている。だが、じつは1997年から国内メーカーが発表したノンステップバスも、当初はフルフラットタイプとなっていた。
ドロップ・センター・アクスルと呼ばれる、バス用の後輪に用いられる中間部分が低い特殊なホーシング・ユニットを採用することで、当初からフルフラットを実現していた。しかし、標準的な路線型よりも導入コストが高額となるうえ、後輪のホイールハウスの張り出しにより、中扉より後ろの座席は3~4列となってしまう。それにより立ち席スペースも狭くなることから、標準的な5列仕様と比べると座席定員が少ないのがネックとなっていた。
また、座席位置も高くよじ登るように着席しなくてはいけないことからも、高齢者には負担が多かった。そこで、中扉から後ろの部分を1段高くし、標準的なバスと同じ後輪の駆動システムを採用することで低価格化を実現。さらに座席も5列配置を可能としたのが現在のノンステップバスである。