ボディ形状によってデザイナーが異なっていた
ややこしい話になるので一度まとめておくと、ジュリエッタの3車形のうち、最初に登場した2ドアクーペのスプリントはベルトーネのスカリオーネがデザインしています。 半年後に登場した4ドアセダンのベルリーナはアルファロメオの社内デザイン、またベルリーナと同時にデビューしたオープンシーターのスパイダーはピニンファリーナの工房で仕上げられていました。 ピニンファリーナで仕上げたスパイダーは、スプリントやベルリーナと同様に、センター部分に盾型のグリルを置き、その左右の低い位置にサイドグリルを配していて、ジュリエッタのファミリーフェースであることが一目瞭然です。 それとは反対に、スプリントと同じベルトーネ(のスカリオーネ)がデザインしたスパイダーの方は、スプリントやベルリーナとはまるで別モノのフロントビューを見せていることに驚かされます。空力に凝ったデザイン手法を得意としていたスカリオーネならではのデザインと言ってよいでしょう。
ただし、このスカリオーネ版のスパイダーは、生産車(市販車)としてはコストが掛かり過ぎると判断されたことなどから、結局お蔵入りになってしまったようです。展示パネルでは詳しい出自は語られていませんでしたが、レトロ・モビルに展示されていたのは2台製作されたうちの1台だったようです。
ザガートモデルも存在したジュリエッタ
いずれにしても、スプリントやベルリーナの流れを汲んだデザインでスパイダーを仕上げたピニンファリーナのデザイナースキルに驚かされるとともに、自らデザインしたスプリントとはまた違ったテイストを持ったフェイスでスパイダーを仕上げたスカリオーネの才能にも感服です。流石高名なデザイナーです。
ところで、ジュリエッタは、ここで紹介した第一世代以外にも、1977年に登場した第二世代、2009年に登場した第三世代と、通常のモデルチェンジではなく一度消えては蘇ることを繰り返してきました。多くの根強いファンがいればこそ。 また今回紹介した第1世代のジュリエッタにはスプリント以外にも、魅力的なクーペがいくつか存在しています。レースで大破したスプリント・ベローチェ(SV)にザガート製の空力的に優れ、また軽量化も追求したアルミボディを架装したスプリント・ベローチェ・ザガート(SVZ)などはその好例でしょう。 SVZには幾つかのバリエーションが生まれることになりましたが、この魅力的なボディと、ハイパフォーマンスさを併せ持った、ジュリアの一層魅力的なクーペについては、第二、第三世代のジュリエッタも含めて、また別の機会に紹介することにしておきましょう。