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「新車状態が絶対!」原理主義者にモノ申す! 旧車は「完全オリジナル」じゃないと価値はないのか?

レストアしたR32の下まわり

完全オリジナル維持はある意味究極系!

 旧車の世界にはいろいろと流派というか、こだわりのポイントがあったりする。そのなかのひとつが、オリジナル派と呼ばれるもの。読んで字のごとく、オリジナル、つまり新車の状態に価値を見出すオーナーのことだ。

ボルトひとつにまで当時物へこだわる人も!

 別に悪いことではなく、新車の状態をそのまま維持できていればそれに越したことがないのは確か。だが、30年以上も経っているとそうも言っていられないのもまた事実。塗装やボディの腐食、内装の破れなど、そのままにしておくのはみっともなかったり、被害が拡大する場合も多い。

 また旧車の場合、例えば10年落ちぐらいの時代は中古車として底値だったりして、変な改造やチューニングなどが施されている場合もあったりする。

 ひと口にオリジナル派と言ってもレベルはさまざまで、塗装はもちろん、ネジ一本まで新車当時のものにこだわる人や、見た目や仕様が新車の状態に近ければよしとする人もいる。さらにその中間にはボディに穴を開けるのは抵抗があるという人もいる。このネジ一本までというのはよく言われることなのだが、例えばオリジナルうんぬんについて考えるいいポイントと言っていい。

 古いボルトの頭には今の新品にはない刻印が打ってあったり、なかにはメーカー名が入っていることもある。純正部品として新品が出てくることもあるが、デッドストックが出てくるわけではないため、最近作られたものだと刻印などがなかったり、メッキの風合いが違っていることはよくある。

 それを使ってレストアや修理をした場合、そこだけ浮いた感じになるのをどう考えるかだ。この点をした解消するのに行われるのが、外したナットやボルトの再メッキ。汚れやサビを落として、往年の風合いをもったメッキをあらためてかけてやるというもの。スプリングやドアのキャッチなど、金属部品にもよく行われる。

 そうなると、再メッキでいいじゃないかと思うかもしれない。だが、何十年も経ったネジは金属的な強度が落ちていることも考えられるし、ネジ山自体も崩れている可能性がある。つまり見た目がピカピカになっても、機能が低下していることがあるわけだ。

復刻の純正部品ながら当時物より精度が落ちた例も……

 同様のことは塗装やボディ、内装、足まわりなど、すべてけっこうな部分に当てはまること。デッドストックが見つかればいいかもしれないが、これも作られた当時の性能が確保されているか微妙だ。ある程度の性能低下に目をつぶっても、昨今の旧車ブームはパーツにも波及していて高騰しているため、気軽に買えるわけでもない。

 実際に旧車オーナーのなかでの現実的なオリジナルというのは、当時の雰囲気を壊さなければいいということになるように思う。実際、ネジまでオリジナル、復刻部品もダメというのは、かなり特殊な存在ではある。ちなみに復刻部品が出ても、メーカー純正ながら当時物とまったく同じではないことがあったりして、逆にオリジナルの価値が上がったりするから難しい世界ではある。最近のオートバイのヘッドはいい例だ。

 また、以前、某メーカーがある名車のボディパネルを復刻したものの、プレスのラインが甘いなどの声が出て散々だったということがあった。こういったのは少々行き過ぎた感じはするが……。

 さすがにエンジンを現代のものに換装したり、併せてATにしたり、さらに最近ではEVにすることもある。このような作業を行うのはオーナーの自由なので否定はしないが、オリジナルかどうかという点では旧車そのものの持ち味が変わってしまうことなので、どうかと思うこともある。当たり前だが、旧車は減ることはあっても増えることはなく、文化遺産的な要素もあるものだ。

当時の味と現代の技術をうまくミックスさせるのもオススメ

 ある旧車専門店の店主は、ことあるごとに「旧車だってクルマ、クルマは走ってナンボ」と言っているが、オリジナルにこだわりすぎて気を使って維持するよりも、そのときどきであるものを使い直してやる。クーラーも当時の雰囲気に近い吊り下げ式を付けたり、軽自動車のパーツを流用してのパワステ化もアリで、気軽かつ快適に楽しむという点ではありだろう。そもそもサビたボディを溶接で切り次ぐのは、火が入るからイヤといってもどうしようもない。

 極太タイヤや極端なシャコタンなど、変な改造や最新のパーツを付けなければオリジナル派と言っていいのではないだろうか。ただ、チューニングも当時のパーツ、ノウハウで行う「“古”チューン」なる言葉もある。いわば往年のオリジナルチューンとも言えるだけに、奥深いところだ。まぁ、「そうだ」「いや違う」「このレベルなら許す」といった、オリジナル論争というのも、また楽しいものだったりするのだが。

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