エンジンは新開発された3LV6ツインカムユニット
エンジンは新開発された3L V6ツインカムのVG30DE型。シングルカムのVG30E型は、1965年の登場から20年近くが経ち旧態化してしまったL系ユニットの後継として1983年に、Y30系のセドリック/グロリアに搭載され世に出ていました。ですが、ツインカムヘッドが組み込まれたユニットはMID4に搭載され、フランクフルトでお披露目されることになったのです。 ツインカムヘッドに乗せ換えただけでなく、NICS(ニックス=NissanInduction Control Systemの頭文字を連ねた造語で可変吸気システムの意)やNDIS(Nissan direct ignitionsystemの頭文字を連ねた造語で直接点火システムの意)、さらにドライブバイワイヤシステム、気筒別燃焼制御システム、可変バルブタイミングシステムなど幾つもの電子制御システムが盛り込まれています。パフォーマンス的には最高出力が230ps/6000rpm、最大トルクが28.5kg-m/4000rpmと発表されていました。
ちなみにVG30DEユニットは翌86年の2月にレパードに搭載されてデビューしています。これはレギュラーガソリン仕様で最高出力も185psに過ぎませんでしたが、MID4に搭載された仕様では、1989年に登場するフェアレディZ(4代目のZ32)に搭載されたプレミアムガソリン仕様とほぼ同スペックでした。
意外にコンパクトなボディサイズ
その新型エンジンはミッドシップに横置きでマウントされていました。ハンドリング性能を高めるためには、長すぎるホイールベースは厳禁とされていますが、このMID4でもエンジンを横置きマウントしたことで、少しホイールベースを切り詰めることになりました。 3サイズは4150mm×1770mm×1200mmでホイールベースは2435mm。ミッドシップと2シーターとふたつの共通項を持ったフェラーリ308GTBの3サイズとホイールベースが、それぞれ4230mm×1720mm×1120mm、2340mmでしたから、ホイールベースが長いほかは、意外にコンパクトにまとまっていました。
エンジンをミッドシップマウントしたこと以上に、技術的に大きな特徴となっていたのは4WDと4WSのシステムを組み込んだシャシーのパッケージでした。現在でこそ4WDや4WSが、高速走行時のスタビリティを高くキープすることは広く知られたころとなっています。ですが、当時はまだまだ「4WDは悪路(=低μ路)での走破性を高めるもので、4WSは小回りが利いて狭い道路で有効」といった認識が一般的でした。 しかし日産ではMID4によって4WDや4WSの開発を続け、それぞれアテーサE-TS、スーパーHICASのネーミングで商品化は進み、単独のシステムが組み込まれるケースも少なくありませんでした。1989年に登場したスカイラインGT-R(第2世代最初のR32)では両者を組み合わせたシステムが装着され、当初想定していたようにグループAによるツーリングカーレースでライバルを圧倒。シャーシの高いパフォーマンスを証明することになりました。
スーパースポーツに相応しい軽やかなデザイン
MID4のデザインについても触れておきましょう。ボディは2ドアの2座クーペで、低められたノーズにはリトラクタブルライトが埋め込まれています。サイドビューではキャビン後部のBCピラーが一体化されているように見え、通常のクーペボディのようにも映りますが、じつはリヤデッキはフラットで、左右をパネルで、前方を直立するリヤウインドウ囲まれています。 後方左右の視界が遮られているのが気になるところではありますが、スーパースポーツに相応しい、軽やかなデザインだと、当時から好意的な声が多く聞こえていました。