トヨタ編【GT-FOUR】
トヨタもラリーマシンからチョイス。クルマ好きの誰もがその活躍に心熱くした記号といえば、やはりセリカの「GT-FOUR」だろう。4代目のST165、5代目のST185、6代目のST205と3世代にわたってWRCで活躍した。1993年に日本車として初となるドライバー/メーカーのWタイトルを獲得するなど、日本車のWRC黄金期を築いたマシンでもある。
GT-FOURはGrand Touringに4WDを意味するFOURを組み合わせたと思いがちだが、じつはGrand Touring Fulltime On road Uniquely Responsiveを略した造語だ。日本語にすると「比類なきレスポンスを持つフルタイム4WDシステムを持つオンロードGTカー」といったところで、トヨタ開発陣の思いがグレードに込められているといっていいだろう。このグレードの意味を理解すると、FOURが大文字である理由がよくわかる。
ちなみに1991年9月にWRCホモロゲーションモデルと登場した、5代目の「GT-FOUR RC」のRCはRally Competitionの略である。これは日本国内のみの名称で、海外名はカルロス・サインツ・リミテッドエディションだった。セリカGT-FOURの志はGRヤリスの4WDシステム「GR-FOUR」に受け継がれている。
日産編【SSS】
日産のモータースポーツ活動は、サーキットを軸としたクローズドコースだけでなく、ラリーフィールドでも大活躍した。とくに1970年代のオイルショック以降から1980年代中盤までは土系イベントでの活躍が目立ち、「ラリーの日産」として世界に名を刻んでいた。
その足がかりとなったのは、1970年のサファリラリー総合優勝で快挙を達成した3代目(510型)ブルーバード1600「SSS」。その勝利はブルーバードの高性能をアピールし、販売面のイメージアップにも繋がった。そのSSSはSuper Sport Sedanの略で、2代目410型から登場。ブルーバードのイメージをけん引するスポーツモデルとして、2001年の生産終了(10代目)までネーミングは継続された。
ただし歴代で唯一、9代目(U13型)がSophisticated Sporty Sedan(洗練されたスポーティなセダン)と、ソフィスティケートな意味とされていたのはあまり知られていない事実である。また、ブルーバードのイメージが強いSSSだが、一時期バイオレットにもSSSグレードが存在していた。
マツダ【NR-A】
マツダも日本初のフルタイム4WDスポーツマシンとして、国内外のラリーで一世風靡した6代目ファミリアGT-X(Xは未知数、未知の可能性を秘めたという意味)の紹介といきたいところだが……。シンプルすぎるので、より読解難易度の高いロードスターのモータースポーツ参戦車両である「NR-A」を取り上げる。
残念ながらマツダでは正式には公表していないが、ある筋からの情報をまとめるとNはナンバー付き、Rはレースカー(Numberd Racecar)が語源とのこと。AはグループAやBのようなカテゴリー記号のようで、Aは一番底辺を意味しているらしい(BやCを設定する構想があったかは定かではない)。
総合するとレースベース車両として、ナンバー付きのままレースにも参加できる入門マシンという名称だ。まさに名は体を表すグレードといえよう。また、6、7代目に設定されていたファミリアのラリー参戦ベース車両「GT-A」のAも、NR-A同様にカテゴリー記号であるそうだ(こちらはグループA)。
ちなみに、ロードスターがグレード名に言葉の意味を持たせないのは、ロードスターは全車スポーツカーであり、特定のグレードをスポーツと呼ぶのはおかしいという考えからのようだ。