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「ナルディ」に「MOMO」「水中花」! 懐かしのド定番カスタム「MTシフトノブ交換」のトリビア

アルミとカーボンのシフトノブ

令和時代では信じられない!? その昔大流行したシフトノブ交換カスタム

 ひと昔前はATと言ったらトルクコンバーター式ATのみでしたが、近年はCVT(ベルト&チェーン)やAMT(オートメーテッド・マニュアル・トランスミッション、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)など、ATといっても多彩で、スポーツカーでもATのみのモデルが主流の時代となりました。 ところが昔ながらのクルマ好きはにとって、AT車は論外でMT車一択! とはいえMT車はすでに絶滅危惧種的な存在です。いつまで現存しているかわかりませんが、それゆえにMT好きはいまのうちに最後の1台を選んだ方がよさそうです。そんな悲しい話題はひとまず忘れて、ひと昔前のMT車乗りが勤しんだシフトノブ交換のカスタマイズを振り返ります。

手で触れるパーツだからこそ肌触りや感触にこだわった

 シフトノブ交換の狙いのひとつが手触りでしょう。MTは頻繁にシフト操作をするため、手のひらの感触は非常に大事。昔は本革なんて高価でしたから樹脂系のものが多く、本革にするだけで気分は盛り上がりました。もちろん、ステアリングも一緒に本革にしなければ効果は半減でしたから、ステアリングとシフトノブをセットにした純正オプションパーツも販売されていました。 またモータースポーツ系も人気が高くて、TRD(トヨタ)、NISMO(日産)、MUGEN(ホンダ)、ラリーアート(三菱)、マツダスピード(マツダ)、STI(スバル)などのメーカーワークス系が人気を集めていました。

不器用な人でも失敗知らずの交換のしやすさも人気の理由に!

 シフトノブの形状も多彩でした。どこから触れても感触が変わらない、WRCなどのラリーシーンで主流であった球形や、手が触れる面が多いガングリップ型、さらにシフトノブを長くしてステアリングとの距離を近づける場合に適した丸棒型など、好みに合わせて理想のスタイルを選ぶことができました。 交換はいたって簡単で、シフトノブは基本的にネジ込むようにはめられていて、回転させて脱着するだけなので、工賃いらずなことも人気の理由でした。

 もちろん、シフトリンケージ(ギヤボックスから生えているシフトノブを取り付けるシャフト:以下シャフト)のネジの太さとか溝のピッチ幅によって適合が決まります。メーカーワークス系列から発売される商品はそのまま装着できることが多い反面、サードパーティ製ではしっかり適合を確認しないと交換することができませんでした。

 近年では変換用のアダプターが豊富にありますから気にしなくて良いと言えるのですが、これを逆手にとって「A社製のパーツはじつはC社のクルマにも使えるぜ!」なんて、メーカーワークスの垣根を超えた流用チューンで、他メーカー(ワークス系)のシフトノブを取り付けることも流行しました。

 余談ながらトラックなどの商用車では、シフトノブに「水中花」と呼ばれるノブの頭頂部がクリスタルで、中に花が入ったタイプが昔からありましたが、こちらは現在でもトラックドライバーの方を中心に定番アイテムとなっているそうです。

ステアリング同様に「NARDI」「MOMO」で宗派が分かれていた!?

 海外の一流ブランドからも数多くの社外品が販売されていました。ステアリング交換ではNARDI(ナルディ派)やMOMO(モモ)派といった派閥争いも、政権与党会派の勢力図のごとく激しさを極めていました。もちろん二大巨頭の「NARDI」&「MOMO」は現在でも国内のアフターパーツメーカーから商品が発売されています。

 こうした社外品の特徴は、メーカー系よりも幅広い選択肢があることです。例えばシフトノブの重さを変えることでシフト操作を軽く、もしくは重く感じるようにすることができ、シフトノブを短く(低く)することで、ストローク量を少なくしてより好みのフィーリングに近づけることができました。

 かつて自動車雑誌ではスポーツカーのシフト操作について「手首を返すだけでシフトチェンジができる」などの評価がなされました。シフトノブを短く、重いタイプに交換すればストロークが大きいクルマでもスポーティにすることができたのです。

 例えば上が1速で下が2速の一般的なMTの場合、純正では肘まで使って1速→ニュートラル→2速の「ヨッコイショ!」と操作が必要なクルマでも、ストロークが短くなれば肘を使う仕事量が減ります。そして、手首を上手く使うことでシフト操作量を減らし、より俊敏なシフト操作が可能になりました。

サーキット派には軽量で熱伝導率の低いチタン製が人気に!

 ホンダ・シビックタイプRなど、一部の車種では純正でチタン製シフトノブを採用していましたが、アフター品ではさらに豊富な素材が用いられていました。なかにはカーボン製シフトノブも発売されており、夏は熱くなりにくく、冬は冷たくなりにくいなどの利点がありました。チタンも同様で熱伝導率が低くサーキットをガンガン走り、ギヤボックスの熱がシフトノブまで伝わるような走りをする人には、チタン製シフトノブがオススメでした。

 対して、比較的よい気候の春秋シーズンは、本革のしっとりした感触を楽しむなんてこともできます。シフトノブは季節に応じて気軽にコーディネート(交換)できるパーツというわけです。

 商用車では、インスタ映えする禁じ手みたいな方法もありました。例えばシフトリンケージを加工して、ドライバーのグリップ部をシフトノブに加工してしまう商品がいまも大手通販サイトで販売されています(商標登録的に問題がありそうですが……)。操作感覚こそ解りませんが、見た目のインパクトは大きいため、安全性に影響がない範囲で楽しめるのもグリップ交換の醍醐味と言えるかもしれません。

シフトパターン表示がないと車検には通らないので要注意!

 そして忘れてはいけないのが社外品に交換する場合、ギヤの位置を示すパターン表記。シフトノブの上部に1-2-3-4-5-6-Rなどのシフトポジション位置が表示されていますが、この表記が明示されていないと車検には通らないのです。

 社外品に交換して表示がない場合は、このパターン表記のシールなどが付属品として同梱されているのはそのためです。

純正シフトレバーの構造によっては交換不可な車種もあった

 懐かしのシフトノブ交換を紹介してきましたが、近年忘れていけないのが、例えばリバースギヤに入れる際に、リングを引き上げながら操作するタイプやシャフトの角度が途中で曲がっている形状のモノ、さらにシャフトの径が途中で変わっている仕様などなど、さまざまな進化を遂げていること。場合によっては交換不可の純正シフトノブもあるので、愛車に取り付けられるかどうかをチェックしなければなりません。

 また本格的にスポーティなシフト操作に仕上げたいのであれば、クイックシフトと呼ばれるシフトリンケージから交換する部品を取り付けることで、より素早く正確な操作が可能になります。

 今回は、ドレスアップ&カスタマイズでシフトノブ交換を紹介しました。スポーツ性能を追求する方は、シフトリンケージも販売されていますので、まずそちらから追及していきながらシフトノブ交換のカスタマイズを楽しんでください。いずれにせよ、簡単にカスタマイズができるのは楽しいものですね。

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