WRCトヨタのライバル、ヒュンダイとはどんなチームか?
開幕戦のモナコを筆頭に、第3戦のクロアチア、第5戦のサルディニア、第6戦のサファリとエースのセバスチャン・オジェが4勝を挙げたほか、チームメイトのエルフィン・エバンスが第4戦のポルトガル、カッレ・ロバンペッラが第7戦のエストニアを制覇。8戦を消化した段階で計6勝を獲得するなど、2021年のWRCでも主力モデル、ヤリスWRCを武器に抜群の強さを誇るトヨタのワークスチーム、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームだ。
が、その一方でライバルチームもトヨタの隙を突くように躍進。なかでもトヨタ勢の最大のライバルと呼べるのが、ヒュンダイのワークスチーム、ヒュンダイ・ワールドラリーチームだと言えるだろう。
2年連続マニュファクチャラーズ王者のヒュンダイはトヨタを追撃中
今シーズンの選手権ポイントスタンディングにおいて、現在トヨタのオジェが162ポイントでドライバーズ部門の1位、エバンスが124ポイントで同2位につけるほか、マニュファクチャラーズ部門においてもトヨタ陣営が後続に41ポイントの差をつけてランキング首位を快走している。
だがヒュンダイは、オイット・タナックが主力モデル、i20クーペWRCを武器に第2戦のアークテック・フィンランドでシーズン初優勝を獲得したほか、ティエリー・ヌービルが第8戦のベルギーを制覇。その結果、ポイントスタンディングでもヌービルがドライバーズ部門で3位につけるほか、マニュファクチャラーズ部門でもヒュンダイが2位につけるなど、両部門でトヨタGAZOOレーシングを追走している。
ヒュンダイはご存知のとおり、韓国の自動車メーカーで、イギリスのMSD(モータースポーツ・ディベロップメント)をパートナーに1990年代後半からWRCで活躍。1998年〜2000年にかけてアクセントF2キットカーを投入したほか、その後はアクセントWRCを投入するなど最前線で活躍していた。
2003年を最後にヒュンダイはWRCから撤退したが、2014年に復活を果たした。その理由について当時、ヒュンダイ・ヨーロッパのマーク・ホールは「WRCは地球上でもっともドラマチックなモータースポーツのひとつで、メーカーに対して技術力を要求することからヒュンダイのエンジニアリングの優秀さと耐久性を示すことができるカテゴリー。ブランドの具現化と市販車の強化に役立てたい」と発表している。
同時に「ヨーロッパにWRCのための拠点を設け、優れたパフォーマンスを発揮するラリーカーを開発したい」との言葉を実践するように、ドイツ・アルゼナウにモータースポーツ活動の拠点としてヒュンダイ・モータースポーツを開設、まったく新しい体制でWRCに復帰した。
2016年にはヌービルとハイデン・パッドンが各1勝をマークするほか、i20クーペWRCに主力モデルをスイッチした2017年にはヌービルが4勝を挙げた。
以上、簡単にヒュンダイ・ワールドラリーチームの概要を紹介してきたが、実際のチームの雰囲気はドイツを拠点としているだけにヨーロッパのラリーチームといった印象だ。ヒュンダイから派遣されている数名の韓国人エンジニアがチームに帯同しているが、韓国のチームといった印象は少なく、“ヨーロッパ系の多国籍チーム”という表現がピッタリだろう。
WRCシリーズ後半、ヒュンダイが日本に乗り込んでくる
WRCのマニュファクチャラーズ部門を昨年2連覇のヒュンダイ。2018年にトヨタはマニュファクチャラーズ部門でタイトルを得たが、ここ2年はドライバーズ部門でのチャンピオンに輝いていた訳で、奪回なるかというシーズンなのだ。
これほどの実績であるのに、ヒュンダイはここ10年ほど日本市場に一般向けクルマを投入していないこともあり、日本ではあまり馴染みのないブランドになっている。だが世界に目を向ければヒュンダイのブランド展開模様には勢いがある。ベース車両のi20はBセグメントで売れているし、スポーティバージョンのNまで投入している。