居住性を左右するインテリアの快適性はどうか?
3台の豪華極まるインテリアはどうか。アルファード(試乗車はハイブリッド)のメーターはハイブリッド専用の1眼タイプだが、デザイン、色使いなどちょっと子どもっぽい印象。とはいえハイブリッド専用の大型センターコンソール、カーペットの豪華さもあって、プレミアム度はなかなか高い。
エルグランドはインパネのモダンなデザインが特徴的で、メーターからナビに続く部分はリビングの液晶テレビを中心としたAVセンターを彷彿させる。ただ、木目調パネルはいかんせんプラスチッキーで安っぽく、カーペットもアルファードのものとは大違い。ごく普通である。
対してエリシオンは、先進感のあるインパネデザインと大型センターコンソールの存在、質感の高い本木目を感じさせる木目調パネルが覆う面積の大きさによって、ゴージャス感では最上。シートサイズもじつはもっともゆとりがある。
乗員にとって特等席となる2列目シートは、アルファードが膝まわり空間のゆとり、長時間の着座での快適感に大きく影響するシートクッションの厚み、長さでリード。収納式オットマン、テーブル、LED間接照明、スライドドア部分のステップにまで置かれた豪華なカーペット、そしてハイブリッドならではのクラス唯一のAC100V/1500Wコンセントの装備など、装備面のプレミアム度は圧巻だ。
エルグランド(XLグレード)はキャプテン/ベンチ変幻自在かつテーブルにもなるマルチセンターシートが特徴的。オットマン&フットレスト、スマートに収納されるオーディオ&エアコン用のふたつのリモコンなどの装備も、ブラックレザー張りのシートとともにプレミアム度を盛り上げる。
ただし、1列目席同様にカーペットに高級感がないのと、スライドドアの窓がチルトのみで昇降しないのが難点。窓の開かない飛行機や新幹線気分で乗っているぶんには、モダンなシートデザインもあって、プレミアムな気分に浸れるかも知れない。
そしてエリシオンは、キャプテンシートのゆったりしたサイズ、1列目シートの大型センターコンソールから出てくる引き出し式大型ボックス、1列目シート背後のアシストグリップが目玉だが、シートのデザイン、そのスライド量ともにプレミアム度に欠ける印象。フットレスト、オットマンの用意もない。
3列目シートにも良好な居住性が求められるLLクラスミニバン
3列目席はアルファードの雰囲気がもっともゴージャス。シートは5:5分割のソファタイプ。膝まわり空間はクラス最大で(エリシオンの倍はある)、左右のポケットや電動カーテンがあったりと、3列目席にして新幹線のグリーン車並みの居心地が得られる。エルグランドは空間こそモダンな雰囲気でゆったりしているものの、フロアのシートレールの見え方もいまひとつ。
エリシオンは唯一、3人掛けにこだわった6:4分割シートながら(ライバルは5:5分割の2席独立)、ベンチシート風に見えてしまい、膝まわり空間はクラス最小。とはいえ、木目調パネルの高級感、ヘッドフォンジャックが3人分あるなど、最上級ミニバンとしての演出はなかなかである。 ここまでの項目では、今も昔もアルファードの強さが際立っているが、当時のライバル関係でエリシオンが圧倒していたのが走りだった。
動力性能と操縦安定性、上質感のある走りはエイリシオンが断然格上
2007年に行ったエリシオンvsLLクラスミニバンの試乗レポートメモに記されたライバル比較評価は以下の通りだ。
このクラスのミニバンは、走り出してからのプレミアム度にもこだわりたい。そこで俄然、際立つのがエリシオン。エリシオンプレステージのミニバン最強の300psというスペックはともかく、エンジンを問わないトルクフルかつジェントルで上質な加速感、しっとり重厚でロングドライブにも最適なしっかり感ある乗り心地、そしてエンジンをひとたび回したときのスムースで圧倒的な加速の迫力はまさにプレミアムだ。
パワステの操舵感、ダブルウィッシュボーンサスペンションがもたらす低重心感覚溢れる操縦性、姿勢変化を抑えたフットワークなど、ドライバーが感じるプレミアム度ではベストと言っていい。
エルグランドも3.5L V6エンジンを搭載するが、スペックは240psと平凡。しかも運転感覚、乗り心地ともにアメリカンともいうべき大味なテイストだ。段差、荒れた路面で足まわりがバタつくあたりも、走りのプレミアム度という点ではマイナス要因。高速道路などのフラット路を一直線に豪快にクルーズするのに向いているのがエルグランドではないか。
アルファードはクラス唯一のハイブリッドに試乗した。2.4L直4エンジンベースの旧世代型ハイブリッドということで、モーター走行時の電気自動車的に滑らかな走行感覚、静かさ、燃費の良さこそ褒められるものの、絶対的動力性能ではここでの3.5L V6搭載のライバルに敵うはずもなく、日常的に必要にして十分と表現できる動力性能にとどまる。もし、速さもプレミアム度のひとつ……と考えるなら、アルファードの場合、3L V6のガソリン車を薦める。
一方、操縦安定性では、低床パッケージ、前後ダブルウィッシュボーンサスペンションを備えたエリシオンが圧倒する。プレステージグレードの試乗メモを読み返すと、以下のようなリポートになる。
エリシオン・ブレステージの走りは、少なくとも街中をゆったり流すシーンでは300psの威力を感じにくい。トルクの豊かさこそ実感できても、爆発的に速い……という印象は薄い。DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)の制御もあって、あくまでもジェントルかつウルトラスムースな加速感が持ち味だ。乗り心地は18インチタイヤと専用サスペンションがもたらす、標準車よりやや硬めのタッチとはいえ、じつに滑らかかつフラット。プレステージの名に相応しい、期待を裏切らない乗り味だ。
とはいえ、ジェントルな印象はそこまで。ひとたびアクセルを深く踏み込めば、最高出力300ps/最大トルク36.0kg-mの迫力、怒濤の加速力を否が応にも実感させられることになる。まさにスポーツカーさながらのシートバックに背中がめり込むような加速感とGがもたらされるのである。
操縦安定性もライバルを圧倒! 中古車を狙うのも悪くない
ゆとりがあり過ぎる3.5L V6のエンジンパフォーマンスだけじゃなく、エリシオンは操縦安定性も素晴らしい。パワステの操作性はウルトラスムースで、切れば切っただけ素直に反応する乗用車感覚のステアリングフィールが好印象。ライバルに比べて圧倒的と言える低重心感覚は、アルファードやエルグランドには望めないエリシオンならではの魅力と断言できる。
そしてエンジンの低振動性能、圧倒的な直進性の良さ、さらには山道でさえ活発に駆け回ることができる低重心感覚溢れるフットワークは感動ものである。
もちろん、エリシオンは2.4L直4モデルでもクラスベストな上級感ある走りが味わえる。何しろエンジンのスムースさは少し前の3L V6並み。高回転まで回すことが苦にならず、ゆえにスペック以上の動力性能を引き出せる。しかも乗り心地は重厚かつスムースそのもの。プレステージグレードの3.5Lモデルの追加で影が薄くなってしまった3Lモデルは、重量級ボディを軽々としかし上質感たっぷりに走らせることができる実力の持ち主だった。
静粛性に関してはさすがに4気筒モデルの比ではない。個人的な印象としては、強面のプレステージグレードより、スタイリング的に標準グレードのほうが、エリシオンらしい上品さがあっていいと思えるのだが。
今では中古車として100万円以下で手に入るエリシオン。プレステージグレードでも100万円台前半だから、ちょい古めながら、大海原を疾走するクルーザーをモチーフにした、豪華な室内空間、前後ダブルウィッシュボーンサスペンションを奢った、このクラスとして走りに特化したホンダ最上級ミニバンの世界を味わうのもいいだろう。