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「ダブル観音開き」を採用したクルマって何? 今や希少な「観音開きドア」採用車を振り返る

「観音開きドア」採用車のメリット、デメリット

 セダンやクーペなどでは、ドアのヒンジがAピラーとBピラーの直下についているのがポピュラーだが、稀に反対側のCピラー側にドアヒンジがついているクルマもある。いわゆる「観音開きドア」というヤツだ。

 仏壇などの扉が、左右に開く形状になっているので、日本では「観音開きドア」と言われているが、英語圏では「コーチドア(Coach door)」や「スーサイドドア(Suicide door)」とも呼ばれている。

「観音開きドア」はリヤシートの足もと側が広くなるので、乗降性がいいというのが大きなメリットだ。高級車の代表、ロールスロイスが好んで採用するのはこのためで、国産車では初代クラウンも「観音開きドア」を選択している。

 また、リヤシート側に荷物を積むときに出し入れしやすいのも長所のひとつだ。 その代わり、センターピラーレスの「観音開きドア」では、後部座席のドアを開けるとき、フロントドアを開けてからでないと開けられないという問題があり、センターピラーがなくて開口部が広いがゆえに、ボディ剛性の確保が難しいというデメリットもある。

 さらに、普通のドアなら走行中何かの拍子でドアが開いてしまっても、風圧で締まる方向に力がかかるが、「観音開きドア」では風圧でドアが開く方向に……。これがsuicide door=自殺ドア、の語源という説がある。 

 というわけで、そうした少数派だが「観音開きドア」を採用した代表的なクルマをピックアップしてみよう。

マツダRX-8

 RX-7の生産終了後、最後のロータリーエンジン搭載車として2012年まで生産されていたマツダが誇るロータリースポーツのRX-8。ターボではなくNAロータリーの13B-MSP型『RENESIS』を搭載した。 3代目のRX-7(FD3S)よりもホイールベースを伸ばし、エンジンの搭載位置を低くし、前後重量配分50:50の理想的なフロントミッドシップを実現。その高い旋回性能は、いまでも抜きん出たものがある。 4ドアの「観音開きドア」を採用したのは、アメリカでの自動車保険の条件の影響といわれているが、世界で19万台以上販売された。

 またマツダでは、2020年にデビューしたハイブリッドクロスオーバーSUV「MX-30」にも「観音開きドア」を採用。 国産メーカーで、「観音開きドア」というと、いまではマツダのイメージだ。

ロールスロイス

 前述の通り、イギリスから立ち上がった最高級車のロールスロイスは伝統的に「観音開きドア」を積極的に採用している。 BMWの傘下になってもその伝統は変わらず、最上級サルーンのファントムをはじめ、SUVの「カリナン」や2ドアのドーン、ドロップヘッドクーペなども「観音開きドア」だ。 ちなみにロールスロイスでは「観音開きドア」のことを、「コーチドア」と呼ぶ。

トヨタ・オリジン

 トヨタでは1955年に初代クラウンに「観音開きドア」を採用。 それから45年後、その初代クラウンをモチーフに、トヨタが「累計生産1億台突破」を記念して2000年に1000台を限定生産した「オリジン」も、観音開きドアを継承した。トヨタではSUVのFJクルーザー(2006年~2018年)にも「観音開きドア」をチョイスしていたし、初代ヴィッツのプラットフォームを流用したピックアップトラック「bBオープンデッキ」も「観音開きドア」だった。

日産タイタン

 ピックアップトラックといえば、日産タイタン(初代)なども「観音開きドア」があった。

 アメリカの自動車メーカー以外では、初めてのフルサイズピックアップトラックとして登場。キングキャブ車に観音開きドアがあり、北米ではけっこう人気があった。 アメリカ車ではもう一台人目を引いたのは、高級車リンカーンの「コンチネンタル・コーチドア」というのもあった。

 これは量産車というより、職人が一台一台「観音開きドア」仕様に改造する特装車のような存在だった。

ホンダ・エレメント

 ホンダエレメントはUSホンダが生産したクロスオーバーモデル。生産台数は32万5000台以上といわれているが、日本では約2000台しか売れず、不人気モデルだった……。

ミニ・クラブマン

 シューティングブレイクとして用意されたミニのクラブマン(二代目)も、右側のみセンターピラーレスの「観音開きドア」という仕様。 ぱっと見、2ドアに見える「観音開きドア」の特長を活かしたデザインでもある。ちなみにクラブマンは、リヤゲートも「観音開きドア」。つまり、ダブル「観音開きドア」ということになる。

 ちなみに、日本では、360cc時代の軽自動車、スバル360や三菱の初代ミニカも「観音開きドア」の前兆とも言えるサイド一枚ドアのスーサイドドアだった。 そう言えばイギリスの「ロンドンタクシー」も、「観音開きドア」という伝統がある。 「観音開き」には流行に流されるものではない、乗り降りへの配慮が連綿と続いている、ということが言えるのではないのだろうか。

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