たった1台だけのプロトタイプモデル
アバルトブランドがめでたく復活して、今やすっかりと定着した感がある。過去の名車やグレードをモチーフにして、うまくアップデートしているだけに、単なる昔の名前に頼った復刻ブランドではないのが人気を博している理由だろう。実際に街中でもよく見かける。
まさに勢いのあるブランドと言っていいのだが、最近大いに話題になったのが、アバルト1000SPだ。アバルト好きの方ならご存知のように、アバルトが手掛けたモデルにはふたパターンあって、市販車ベースとレースなどを目的としたプロトタイプモデルに分かれる。
リッター100psオーバーのエンジンを搭載
とくに後者はボディはもちろんのこと、アバルト自製のエンジンを積むモデルもあって、かなり過激だ。それゆえ、ファンは心を強く引きつけられる。1966年に登場したアバルト1000SPはそのなかでもかなりスペシャルなモデルで、SPは「スポーツ プロトティーポ(タイプ)」の略で、チューブフレームの上にグラスファイバー製のオープンボディを載せているのが特徴のスペシャルモデル。 手掛けたのはアルファロメオで活躍したマリオ・コルッチで、鋼管フレームを得意していた。通常のリヤではなく、コルッチのアイディアでミッドシップに積まれたエンジンはアバルトの流儀となる小排気量で、直4DOHC、982ccから105psを発生した。
ちなみにこちらはアバルトオリジナルではなく、フィアットの600ccがベースとなる。スペック的にはそこそこだが、車両重量はたったの480kgしかないことから、十分にモンスターマシンだった。最高速度は220km/hとされた。実際、さまざまなレースやヒルクライムで活躍したし、伝統のニュルブルクリンク500kmレースではクラス優勝、総合でも3位に入る快挙を成し遂げている。