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未だ納車は約1年待ち! それでも熱狂的ファンが「ジムニー」に不満を漏らさない理由とは

ジムニーのイメージ

この記事をまとめると

■発売から3年が経っても1年近い納車待ち
■軽規格ながら本格派な運動性能と外観が人気
■生産ライン拡大も難しくこれ以上の増産ができない

発売から約3年でも人気はまったく衰えず!

 軽自動車でありながら本格オフローダーの実力をもち、日本のみならず世界中にファンをもつスズキ・ジムニー。4代目となる現行モデルは、2018年に登場。発売開始とともに注文が殺到したが、今でもその人気は衰えていないという。長期納車待ちであっても、ファンが待ち続ける理由はどこにあるのだろうか? 販売現場の声を交えながら解説しよう。

ハスラーを見に来たにも関わらずジムニーを選ぶことも

 ジムニーの納期がいっこうに縮まらない。販売店では以下のように説明する。「現行ジムニーの発売は2018年だから、今では約3年を経過するが、納期は相変わらず約1年と長い。小型車のジムニーシエラは、1年半を要する。次々とお客さまが増えてくる感じだ。納期の遅れには、昨今の半導体不足も影響を与えている」。

 ジムニーはどのようなユーザーが購入しているのか、この点も尋ねた。「発売当初は先代ジムニーからの乗り替えが多かったが、今はさまざまなパターンが見られる。ハスラーを目当てに来店されたお客さまが、後席をあまり使わない場合、ジムニーを選ぶこともある。とくに若年層と、子育てを終えた中高年齢層のお客さまに人気だ」。

 コロナ禍の影響もあるのだろうか?

「通勤の手段を電車からクルマに変えるため、新車を買うときは運転しやすい軽自動車が好まれる。外観が個性的なことから、ジムニーの人気も高い」とのこと。以上のようにジムニーは、ファミリー層を除いたすべてのユーザーの間で好調に売れている。

 ジムニーの外観がシンプルで、「カッコ良く見せよう」といった背伸びをする意図をまったく感じさせないことも魅力だろう。しかもジムニーは、耐久性の優れたラダーフレームを備える本格的な悪路向けのSUVだから、ボディの小さな軽自動車でも本物の風格や存在感が漂う。

 エンジンを縦向きに搭載する後輪駆動が基本の4WDを備えるため、前輪駆動の軽自動車に比べると、ボンネットが適度に長い。各部の寸法比率は、ミドルサイズやLサイズの悪路向けSUVに準じており、造形的なバランスが優れていることも特徴だ。

 そして最近はSUVが人気を高めて車種の数も増えたが、ヤリスクロスからハリアーまで、前輪駆動のプラットフォームを備えた乗用車的なシティ派SUVが圧倒的に多い。その結果、今ではユーザーがシティ派に飽食気味になり、SUV本来の野性的な雰囲気を感じさせる車種が見直されている。

 例えば新型ランドクルーザーの納期は、販売店によると今では2年以上に達する。輸入車では、ジープ・ラングラーがフォルクスワーゲン・ポロ、メルセデス・ベンツAクラスと同等の台数を販売している。ジムニーもこの流れで人気を高めた。

 とくにジムニーは、本格的な悪路向けのSUVなのに、売れ筋グレードが160〜190万円に収まる。ランドクルーザーやジープラングラーに比べると大幅に安いから、売れ行きが伸びるのも当然だろう。

生産台数をアップさせているがそれでも追いつかず……

 そしてジムニーの届け出台数は、2018年7月に登場した直後は1カ月平均で約1900台だったが、2021年1〜8月は約3200台に達する。発売当初に比べると、生産台数を1.7倍に増やしたが、それでも納期は縮まらない。

 ユーザーとしてはさらに増産してほしいが、実際は難しい。増産には投資が必要で、なおかつ将来の売れ行きが下がると、余剰な生産設備を持つことになるからだ。増産したら、そのペースを保つ必要がある。

 ジムニーの生産規模は現状が限界で、今後も納期の遅延が続きそうだ。この状況は、ユーザーの不満の裏返しでもある。各メーカーともに商品開発が海外向けになり、200万円前後で購入できる魅力的で、個性も備える小型車/軽自動車が大幅に減った。欲しいと思える車種がジムニーしかないから、1年に達する納期も我慢している。

 自動車メーカーは「なぜ日本でジムニーがここまで人気を高めたのか」を真摯に研究すると良いだろう。日本向けの商品開発で、良いヒントが得られるに違いない。

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