新型ランクルはガソリンとディーゼルエンジンをラインアップ
世界でゼロエミッション化が進んでいる。EUは、温室効果ガスの大幅削減に向けた包括案の中なかで、ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売を2035年に終了する方針を打ち出した。
数年前、ランドクルーザーも次のモデルチェンジでEVもラインアップされると噂が流れた。しかしランドクルーザー300が発表されると、EVはおろかハイブリッドの設定もなく従来のガソリン、ディーゼルエンジンのラインアップだった。なぜこの時代に電動車が用意されなかったのか、メーカーに聞けば即答えが返ってくるが、私なりに考察してみることにした。
世界中のユーザーのインフラ事情を考え
ランドクルーザーは戦後、GHQにより設置された警察予備隊(現・陸上自衛隊)への小型四輪駆動車納入を目指し製作されたトヨタ・ジープが祖となる。警察予備隊へは不採用の結果となったが、優れた走破性と耐久性は戦後復興の市場とマッチしており、1954年に商標権に抵触していた車名をジープからランドクルーザーと改名され民生モデルとして歩みだした。
隣りの家まで100km、ガソリンスタンドまでは200km。食料の買い出しは、2日間かけて町にでなければならない荒野に住む人、電気を潤沢に使えない国、また電気自体が引かれていない地域もある。
いいこと尽くめのようにも見えるがデメリットもある。ガソリン車と比べ、航続距離が短い傾向があり、充電に時間がかかる。ガソリン車は数分で給油を完了するが、電気自動車は数十分から数時間、充電に時間がかかることがある。また、充電スタンドの数も現時点では十分とは言えない。そしてこのデメリットは、発展途上国ではさらに拍車がかかるので、EVの運用に向いているとは思えないのだ。
なぜ新型ランドクルーザー300に現時点でEVがないのか、理由はこれだと私は思った。ランドクルーザーは世界のあらゆる環境で安全に運用できないとならないのだ。
クリーン改良ディーゼルの利点とともに
また、なぜ環境に悪いディーゼルエンジンがラインアップされているのかとの声もある。
これは1992年に関東および関西圏の市区町村を対象に制定された「自動車から排出される窒素酸化物および粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」、 いわゆる自動車NOx・PM法が施行され、当時のディーゼル車=黒煙を吐き空気を汚すクルマのイメージが少なかれ残っているからだろう。
だが現代のディーゼルエンジンは改良が加えられクリーンで低燃費、振動も少なく静かになっている。EUでは乗用車にもディーゼルエンジンが使用され、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのような高級車にもディーゼルのラインアップがある。
ディーゼル車は低回転からトルクが太く、凹凸の激しいラフロードや岩場では低速で路面状況を確認しながら進むことができる。さらに、ガソリン車と比べ重い荷物を積んでいても、発進や上り坂を容易に登ることが可能。また燃費もいいのでガソリン車と同じ容量のタンクなら航続距離も長くなる。
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンのように圧縮されたガソリンと空気が混ざった混合気にスパークプラグで点火するのではない。シリンダー内で空気を高圧力で圧縮し、高温になった圧縮空気に軽油を噴射して燃焼させる。そのため高圧縮に耐えられるように頑丈に作られている。そのぶん重くはなるが耐久性はガソリンエンジンを上まわり、高負荷の掛かる路面での運転にもアドバンテージがある。
生活現状をサポートする信頼性
冒頭でふれたが世界でゼロエミッション化が進んでいる。これはランドクルーザーも無視できないときが来る。そのときはどうするのだろうか。EVが追加されるのか、いや、水素エンジンがあやしい。
しかし今、ベストな選択は何か、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンになってくるだろう。ランドクルーザーは先進性より信頼性を優先するクルマではないだろうか。