空前のブームから30年、アウトドア人気の波に乗りMTBが激アツ
1980年代後半、日本でマウンテンバイク(以下、MTB)が大ブレイクした。筆者も小学校低学年のころ、トップチューブの上に多段ギヤシフトを備えたジュニアスポーツ自転車(筆者の周りでは「ギヤ段」と呼んでいた)に乗っていたが、その後中学生までは2台のMTBを乗り継ぎ、仲間とキャンプに出かけたりしていた。最近はスポーツ自転車の主役をロードバイクに奪われていたものの、再びMTBが注目を集めている気がしてならない。
これには今のSUVブーム&キャンプブームと因果関係があると考えている。かつてのMTBブームのときも日本は空前のRVブームだったのだ。つまり近年、四輪駆動車でキャンプに出かけたりしてアウトドアを楽しむ人が増えて、そんな人たちがアウトドアで自転車に乗ってみたくなり、休日のアクティビティとして注目されているのではないか。ではいったいMTBはフツーの自転車と何が違うのか。クロスバイクと比較してみた。
似ているようでまったく異なる「MTB」と「クロスバイク」
筆者が所有するMTB(左:スペシャライズド・エンデューロ エリート カーボン29)とクロスバイク(右:トレック7.4FX)。クロスバイクは5年以上前のモデルになるが、どちらも今の標準的な仕様だ。一見するとスポーティな自転車で「MTBのほうがタイヤやフレームがゴツイかな」程度の違いで見分けがつかないかもしれないが、細部においてまったく異なる。そこでふたつのスポーツサイクルの違いを解説してみたい。
【クロスバイク】
簡単に説明するとオンロードでスピードを出すことを目的としたロードバイクと、悪路走行が得意なMTBの中間的な存在。ロードバイクと同等の細めのオンロードタイヤが装着され、細めのアルミのフレームが一般的(フレーム素材としてクロモリやカーボンのモデルも存在する)で比較的軽量(10kg前後)だ。 シティバイク(ママチャリ)よりも漕ぎ出しが軽く、スピードも出るし街なかを中心としたサイクリングに最適。タイヤが細いので段差や未舗装路は苦手で、整備された舗装路専用向けの自転車だ。価格は5万円代〜10万円代ぐらいが一般的だ。
【MTB】
MTBは荒野や山岳地帯などの未舗装を走るための自転車で、頑丈なフレームに太くて全面に突起(ノブ、ラグ)が設けられた太いタイヤを装着する。写真は「フルサス」と呼ばれる前後にサスペンションを装備したモデル。このほかにフロントだけにサスペンションを装備した「ハードテイル」と、サスペンションなしの「フルリジッド」に分類され、その他目的別(走行シーン)に合わせて細かく分類されている。 撮影車両は前後に170mmストロークのエアサスペンションが装着されている。体重や路面に合わせてエア圧やコンプレッション、リバンドを調整できる仕組みだ。 オンロードを速く走ることには向いていないが、近ごろのMTBは快適で街なかでもむしろ段差などをあまり気にすることなく、ラフに乗ることができるのがメリット。アルミかカーボンのフレームが一般的で、価格はハードテイルで10万円台から、フルサスで30万円前後からとなり、さらに100万円以上のモデルまで存在する。
タイヤ&ホイールの違いを見ていこう!
【クロスバイク】
写真のクロスバイクのタイヤは700×32C(直径700mm×幅32mm)というサイズで、クロスバイクとしてはスタンダードなもの。タイヤ幅に関してはロードバイクでも太めを好む人は32Cを選ぶので、十分にスポーティなタイヤサイズで軽さと乗り心地のバランスが良い。リムとタイヤの空間にチューブが入っている。
【MTB】
MTBのタイヤは、少し前までは26インチサイズが主流だった。だが、今は27.5インチと29インチが主流になっている。タイヤ幅についても目的や好み、フレームによって異なるが、写真のMTBの場合は純正タイヤ幅がフロント2.6インチ(約66mm)、リヤ2.3インチ(約58.4mm)だった。撮影時はダウンヒルの準備をしていたため、2.5インチ(約63.5mm)のダウンヒルタイヤを装着しているが、トレイルに行くときは別のホイールに異なるトレイル向けタイヤを組んでいる。 ノブが立っていてゴツイし非常に重いが、悪路において抜群のパフォーマンスを発揮する。購入時はクロスバイクと同じようにチューブが入っていたが、チューブレス対応ホイールのため現在はチューブレス化している。