CT110ハンターカブを自分好みにDIY!
イラストレーターでDIYが大好きな阿部忠雄さんが、26年所有するホンダCT110 ハンターカブ。キャンプツーリングの相棒として、自分好みにカスタマイズを続けている。そんな阿部さんがこれまでいじってきたなかで、「これはオススメ!」なモディファイをお伝えしよう。今回は中古のステアリングダンパーを装着!
CT110ハンターカブにステアリングダンパーを装着する
カブのように小柄な車体で、細いタイヤを履いているバイクは、走行中の路面状況に敏感すぎる傾向があります。路面の変化を拾いすぎてハンドル操作が安定しないのです。ダートはもちろんのこと、例えば峠道などによくある、融雪剤の流れを導くための細い縦ミゾが刻まれたカーブを走るときなどは、あらぬ方向に流されそうになりドキリ!とすることもしばしばです。
アスファルト道路の左端の波打つような凹凸も要注意です。大型バイクなら軽くいなせるような状況でも、カブなどの小型バイクだとハンドルの取られ方が違います。そんな神経質すぎるハンドリングを、角の取れた滑らかな動きに変えてくれるのが「ステアリングダンパー」、通称「ステダン」なのです。
他車種のステアリングダンパーを流用
大型バイクの場合は、高速コーナーでのキックバックの抑制で威力を発揮する重要パーツです。もちろんカブでもコーナリングの安定性が格段に高くなりますが、荒れた路面にせわしなく敏感に反応するハンドルを、マイルドに制御できることのほうが装着する意味合いが高いでしょう。15年ほど前になりますが、わがハンターカブにもステダンを導入することにしました。とはいえ、ほかのバイク(CB450K1)に装備していたステダンを新品と交換したあとの「お下がりのステダン」です。
このステダンには、過去にメンテナンスのために分解した記録が残っています。分解に至った不調の原因は、オイルにエアーが入ったらしく、シャフトのスライドとともにチューッという異音が出て、ダンパー効果の抜けが感じられたことです。オイル漏れはありませんでしたが、内部がどうなっているのか知りたかったことも手伝って、興味津々で分解したことを憶えています。
過去使用したダンパーを分解してオーバーホール
記録を辿ってみましょう。まず調整ダイヤルを外したら、ピロボール側のスナップリングを外しオイルシールを抜きます。シャフト全体を引き抜くのと同時にシリンダーの下からオイルが流れ出すので容器で受けます。
ダイヤル側のシャフトと、ピロボール側のシャフトを繋いでいるストッパーを外すとピストン部と円板バルブ部でシャフトが二分できます。このストッパーと、ストッパーを受けるミゾの幅の誤差が大きすぎたので、ステンレスのリングを入れて遊びをなくします。ダンパーの初動時の段付き感はこれで解消されました。シャフトやオイルシールにキズもないことから、エアーの混入は一時的に小さなゴミを噛んでしまったのが原因なのかもしれません。
ひととおり清掃をしたら元どおりに組み立てます。交換オイルはヤマハのサスペンションオイルの中粘度のG-10を使いました。シャフトを出し入れしてエア抜きを繰り返し、気泡が出なくなったところでオイルシールを組んで、ワッシャープレートとスナップリングで止め、調整ダイヤルを付けて完成です。
取り付けることで得られる快適性、安全性は格別
ステダンの動きを簡単にイラストで描いてみました。調整ダイヤルを「弱」から「強」に回すと、内部の偏心円板バルブが右に回転して、1クリックごとにオイルの通路のオリフェスを狭めていきます。ここを通過するオイル量が制限されて、シャフトの動きは徐々に硬くなります。
このステダンの場合は7段調整式ですが、クリック数を小刻みに多く設定すれば、より緻密な制御が可能となります。シャフトにはピストンのほかに、柔らかなゴム状のピストンがセットされています。気密性がありそうな材質なので、封入ガスの代役としてオイルの熱膨張やキャビテーション、急激な入力などに対応しているものと思われます。
オーバーホール後はエア噛みもなくなり、動き出しからスムースでダイヤルどおりの減衰力が得られるようになりました。このステダンをハンターカブに装着した当初は、ステアリングステムの右端から右側のエンジンガードにタテ位置でセットしていました。
ですが現在は、左側エンジンガードへと斜め方向にセットしています。ハンドルを大きく切ったときのステダンの首振りが少なくなり、走行中に左手で調整ダイヤルを操作できるので便利です。
大型バイクでのスポーツ走行に不可欠ともいえるステダンですが、装備することで操縦安定性が向上するのは、ハンドルの動きが軽すぎる原付クラスの方が断然上だと思いました。少し割高感のあるパーツですが、取り付けることで得られる快適性、安全性は格別です。