この記事をまとめると
■軽い気持ちで購入するのは危険
■専門店でもお手上げな可能性もアリ
■輸入車なら部品供給がまだマシな可能性も
今まで見向きもされなかったような廉価グレードも高騰
旧車流行りで、車両も高騰が続いている。本来は旧車に限らず、高年式の中古車でも人気が高いものは価格も高いのが当たり前。人気がないものは当然のことながら、安いのが普通だ。
最近のモデルであれば人気がないのは、その点を気にしなければ安く買える掘り出し物だったりするが、旧車の場合は高騰基調が波及しすぎて、マイナー車や低グレード車も引っ張られるように高くなっている。異常とも言える状況は、興味がある方なら実感しているところだろう。
軽い気持ちで購入してしまうと大変なことに……
しかし、人気モデル以外の旧車を買って維持するのは、無謀なのだろうか? 価格が高いと、程度や内容がいいように思えてくるし、維持するのも楽な気がしてくるだけに、実際はどうなのだろうか?
結論から言うと、気軽に買うのはやめておいたほうがいい。程度がバリバリにいいとしても、メンテナンスに手間がかかるのが旧車なだけに、まずパーツの入手に苦労する。名車であれば専門店がある可能性が高く、デッドストックの純正パーツをストックしていたり、重要部品は復刻していたりするし、流用情報にも長けていて、メンテナンスはなんとかできる。
専門店でも部品がなければお手上げ
専門店すらないクルマはどうするかというと、部品はネットオークションなどで探しまくる。もちろん探しまくったところで出てくるとは限らない。場所に余裕があれば、部品取り車を丸ごと購入してそこからもぎ取るというのも定番というか、手っ取り早い。しかし、マイナーだと部品取り車すら見つからないこともあるし、見つかっても所詮は丸ごと安く売っている車両だけに、必要な部品がドンドンと外せるわけではない。たとえばウイークポイントの部分はすでに外された状態だったりする。
年配の方がいるところはやってもらえる可能性もあるものの、ここでも当然部品の問題が発生する。熟練だからといっても部品調達が得意なわけではなく、せいぜい、部品持ち込んでくれたらやってあげると言われればまだ御の字といったところ。若いメカともなると、キャブレターのセッティングもできなかったりするから、整備環境はかなり悪い。
ネット全盛の時代、探せば対応してくれるところはあるが、近所にあるとは限らないというか、ない可能性のほうが高いだろう。長期間預けて、イチから手を入れるレストアなら、遠くても一回きりなのでいいとしても、メンテナンス程度だと遠いと実質無理。
ちなみに、今でもディーラーに持ち込む人はけっこういるという声をよく聞くが、オイル交換ぐらいはしてくれても、メンテや修理は断られると思ったほうがいい。理由としては作業できないというのもあるし、できたとしても売上げ、効率優先の昨今では、お不動様になってしまう可能性のある旧車を受け入れたくないというのもある。
仮に手に入らない部品を作ったとしても……
旧車業界でよく聞く、ない部品は作るというのはもちろん可能。ただし、莫大な費用と手間、時間がかかるし、そもそもマイナー車でそこまでするかというのはある。購入価格が高いとはいえ、実質は不人気車だ。しかも、価格が高かったから、程度がいいというわけではなく、あちこちに不具合が出ることもあり得るわけで、冗談抜きで「捨てたほうがいい」という結論になりかねない。捨てるのは言いすぎとしても、使えるパーツは外してネットオークションで売ったほうがいいかもしれないが、入札状況を見ていると不人気車では落札されず、そのまま再出品もされないという例も多い。
輸入車なら部品供給が充実している車種も多い
さらに輸入車というのも手だ。そもそも欲しいクルマがないというなら仕方がないが、旧車の味や雰囲気を楽しみたいなら、輸入車がオススメで、純正パーツは日本車よりもかなり長く供給されるし、社外品もあったりする。マイナー車でも世界のどこかに専門店があることも多くて、パーツを通販で購入することも可能だ。リーマンショック以降、純正パーツの供給状況はかなり悪化しているものの、日本車よりは数段増しではある。
パーツさえ手に入ればメンテしてくれるところはなんとか見つけられるだろう。筆者はレストア専門店から頼まれてパーツの手配をすることがあるが、例えば今までで驚いたなかでは、戦争前後に作られていたオペルのオリンピアというモデルだ。まず専門店があって、ほぼすべてのパーツが手に入ることにビックリ。最初はナメて最小限の部品しかないと思い、「あれはあるか、これはあるか」とやり取りしていたが、「いちいち聞くな。パーツカタログあげるから、そこに載っているものはすべてある」と言われて、旧車文化の懐の深さに驚いたことがある。
また自分ではFIAT500(今のではない)を30年以上所有しているが、イタリアンなクオリティは別にして、パーツに困ったことはない。ドイツやスイスにはお馴染みのショップもあって、基本的にはすべて輸入でパーツは揃えている。とくにスイスのショップはトッポリーノと呼ばれた初代FIAT500も扱っていて、加工の跡が生々しいオリジナルパーツも含めて、ほとんどのパーツが手に入れられる。
いずれにしても、後先考えずに旧車を購入するのは絶対に避けるべきで、メジャーモデルでも買ってからのメンテなどは確認してから買うのが鉄則。よく見かける人気車種でも苦労したり、費用がかかったりするだけに、マイナー車には独特の魅力があるのはわかるが、買うというのは相当の覚悟が必要ということは忘れないでほしい。