ブレーキパッド交換をセルフで行う場合は……
ブレーキパッド交換は国の認証工場か指定工場でしか認められていないと述べたが、これは作業をプロに依頼する場合のことで、整備士ではなくても、自分のクルマのブレーキパッドを自分で交換するのはオッケー。法律上でもなんら、おとがめがない。
そこで、パッド交換を自分でチャレンジしたい方に向けて、必要な工具などを整理していこう。パッド交換自体は原理やコツさえわかれば難しいものではないが、タイヤ&ホイールを外すためには、まずジャッキやクロスレンチが必要になってくる。
以下に箇条書きで記してみたが、プロに頼んでも左右2カ所で6000円(片側3000円)でやってくれるなら、値段相応というか、むしろお得なのでは? と思ってしまう。どう思うかはアナタ次第ではあるものの、決してお高くはないという気がするのだが、いかがだろうか。
ブレーキパッド交換に必要な工具
・ジャッキやリジットラック(ウマ)
まずは、タイヤ&ホイールを外さねばならないので、車体をジャッキアップするジャッキが必要。さらにリジットラック(ウマ)に乗せると確実。
・クロスレンチ
タイヤ&ホイールを外したり装着するためのクロスレンチ。もとに戻したあとに外れてしまわぬようきちんと締め付けるトルクレンチも用意しておきたい。
・メガネレンチ(スパナ)
ブレーキパッドはブレーキキャリパーのなかにあるので、キャリパーを外す際に、メガネレンチやスバナが必要。
・ブレーキピストンツール
摩耗したパッドから新品に交換する際には、キャリパー内の飛び出たピストンを押し戻すためにブレーキツールが必要。C型クランプでも代用は可能。
・ブレーキクリーナー
ブレーキ周辺はブレーキダストにまみれているので、点検を兼ねてキレイにクリーニングするといい。
・スポイト
ピストンを押し戻す際、仮にブレーキフルードがリザーバタンクいっぱいの場合は、溢れ出るのであらかじめスポイトで適量を吸い取っておく。
ブレーキパッド交換をセルフで行う場合の手順
1)ジャッキアップ
2)タイヤ&ホイールをはずす
3)キャリパーを開ける(はずす)
4)古いパッドを引き抜く
5)キャリパーの飛び出たピストンを押し戻す
6)新しいパッドを入れる
7)キャリパーをもとに戻す
8)タイヤ&ホイールをもとに戻す
9)点検&確認
一連の作業は以上のような流れになる。鳴き防止のグリスをブレーキパッドに塗ったり、ブレーキ周辺をブレーキクリーナーで掃除するなどは、必要に応じて行うといい。パッド交換の際には、ブレーキローターの減り具合も見ておくべし。
交換作業が済んだら、走り出す前に、ブレーキペダルを踏んで正確に動作しているかを必ず確認すること。走り出す際も、すぐには性能が発揮されないので、徐々にスピードを上げていくような走行を心がけるといいだろう。
ブレーキパッドのほかにブレーキまわりで整備しておきたいところ
今回はブレーキパッドに照準を合わせて解説しているが、ブレーキのシステム全体に目をやると、ブレーキパッド以外にもたくさんのパーツで構成されている。
交換が必要なものや劣化しやすい箇所としては、ブレーキローター、ブレーキフルード、ブレーキホース、ブレーキキャリパーなどが挙げられる。ブレーキホース、ブレーキキャリパーが古くなって劣化すると、ブレーキフィーリングが悪化したり、ブレーキフルードが漏れたりする。走行距離が10万km以上というようなクルマは、オーバーホールしたほうがこの先も安心して長く乗ることができるだろう。
そしてブレーキフルードだが、これもブレーキのなかでは重要な役割を果たしている。ブレーキフルードはドライバーが踏んだブレーキペダルの圧力を、ブレーキホースのなかを通りキャリパーに伝達させるもの。特徴として水分を吸収しやすい性質を持っていて、ブレーキフルードが水分を吸収すると(劣化すると)茶色っぽい色に変わる。そのほか、吸収された水分が沸騰すると気泡が発生し、ペダルフィーリングにダイレクト感がなくなるなど、制動力が落ちる原因にもなる。
「ブレーキのエア抜き」という言葉を聞いたことがある人も多いと思うが、ブレーキフルードの交換作業を行うことと同じだ。エアが噛んだ古いフルードを抜いて、新しいフルードに入れ替えるとエアは抜ける。まれに、新しいフルードに交換する際にも空気が入ることもあるので、注意が必要である。
ブレーキフルードを交換する際は、部品代と作業工賃で5000円ぐらいが目安。一般的なユーザーであれば、車検ごとに新しいフルードに交換するのがオススメだ。
クルマとバイクのブレーキパッドの違い
クルマ同様にもちろんバイクのディスクブレーキにもブレーキパッドが使われている。運動エネルギーを熱エネルギーに変換するというメカニズムも同じだ。ただ、重量がクルマよりもバイクの方が圧倒的に軽いため、一般的にはブレーキの負担が少ない。パッドの摩材もクルマより摩擦係数が全体的に低い。
しかし、負担が少ないからと言って、クルマよりもバイクの方がブレーキの交換サイクルが長いというワケではない。逆に短く設定されていて、5000km~1万kmが目安とされている。
バイクはブレーキがむき出しになっているので、ブレーキパッドの残量はチェックしやすい。残量による確認では、5mmぐらいが交換時期、2mm以下はとても危険な状態。
実は車検NGの基準はなし! 安全のためにこまめな確認を!
最後に車検とブレーキパッドの関係だが、タイヤの溝のように残量によって、車検がNGになるという基準は、じつは設けられていない。車検がたとえOKでも、ブレーキの利きに関しては、ドライバーや同乗者の命にも関わってくるので、定期的な点検はお忘れなく。あらためて申し上げると、ブレーキパッド、ブレーキローター、ブレーキフルードなどは摩耗や劣化を伴うため、早めの交換が必要であることは決して忘れてはならない。