クルマがもてはやされた一時代があった
“マークII3兄弟”の呼び方自体、今では相当に懐かしい。世の中のセダン離れが言われるようになり、各社の由緒ある銘柄が次々と消滅。そんななかでマークIIも2019年、最後のマークXの生産終了により51年の歴史に幕を下ろした。パタンと、とてつもなく大事な部屋の扉が閉ざされてしまった瞬間だった。
販売チャンネルごとに専売車種が用意されていた
今ではトヨタは全チャネルでトヨタ全車種を併売することになっているから、兄弟車はむしろ車種統合の方向にある。けれどかつては、販売チャネルごとに専売車種が用意されていた。当初は初代カローラのクーペ版として登場した“カローラスプリンター”が、カローラとスプリンターの2車種に分かれたのはその一例。もともとトヨペット・コロナの上級車種として誕生したコロナ・マークIIも、1976年12月に登場した3代目の時代に、初の兄弟車としてチェイサーを迎えた(登場は1977年6月)。 今回取り上げるのは、マニアにはX70系で通じる世代のマークIIを中心とした3兄弟。登場は1984年で、マークII/チェイサー/クレスタが揃ってフルモデルチェンジされたのはこの世代から。あわせて車名からコロナが外れ、マークIIが正式車名になった。整理しておくと、マークIIはすでに5世代目、3代目のマークII時代に登場したチェイサーは3代目、クレスタはこの世代で初のモデルチェンジとなり2代目となった。
1番人気だったのはマークIIの4ドアハードトップ
3兄弟をボディタイプでみると、マークIIは4ドアハードトップ/セダン/ワゴン、チェイサーは4ドアハードトップ、クレスタは4ドアセダンの構成。このなかでも1番人気だったのは、マークIIの4ドアハードトップだった。
チェイサーとともにハードトップが4ドアになり2世代目だったが、マークIIの4ドアハードトップは見るからに“ミニ・クラウン”の様相を呈した外観で、非常にインパクトがあった。とくに黒いCピラーはクラウンのイメージを象徴したディテールで、手元の当時のトヨタの技術資料をあたると“艶やかで高級感のあるクリスタルピラー(アクリル製リヤクォーターガーニッシュ)”と説明がある。
ちなみに1986年にはこのピラーをベージュの色さしにした限定車も発売されている。同様にメッキのグリルにビルトインした大型フォグランプ(当時このイエローバルブを不必要にオンにして走っているクルマが何と多かったことか!)も、クラウンのイメージに倣ったもの。“面一でスラントしたダイナミックなフロントまわり”と、資料には説明がある。
高級パーソナルセダンとしてのムードを高めたクレスタ
他方でスポーティが打ち出しだったチェイサーは、同じ4ドアハードトップでもプレーンなデザインとし、斜め格子を採用した薄く引き締まったフロントまわりが特徴だった。もう1台のクレスタは、サッシュレス4ドアだった初代から一転しキリッとしたセダンへと進化した。 とはいえリヤウインドウに折れガラスを採用することでキャビンをコンパクトに見せ、手の込んだ豪華なラジエータグリル(技術資料より)をあしらうなどして、高級パーソナルセダンとしてのムードを高めていた。ボディ色では、マークIIのスーパーホワイトIIは一世を風靡した人気色だった。ブロンズガラスも当時の流行りだった。