チューニングすればもっとファンなクルマになったかも!?
当時の記憶をたどると、走らせた第一印象はフロア剛性の高さである。ホンダは古くから(おそらく80年代)、エンジンを横倒しして低重心のミッドシップを開発していると噂されていたが、このZでようやく市販化に成功。当時の軽としては背が高い部類に入るにも関わらず、優れたボディ剛性と重量配分のおかげだろう。 高速道路でも非常に安定していたし、峠道でも怖さを感じずに気持ちよくドライブを楽しむことができた。いち早く電動パワーステアリングを採用していたが、こちらに対しての記憶は薄いので、あまり気になってはいないのだろう。記憶は美化されるというが、当時として軽自動車とは思えないほどの走りを実現していたことは間違いない。趣味車や、家族向けのセカンドカーとしてはぴったりだったといえる。ミッドシップ4WDのマシンなんて、まるでスーパーカーではないか!
もちろんもっとパワーがあれば、と思う場面もあったからだと思うが「これは、チューニングすればかなりイケるのでは?」と感じていた。
昔のことながら鮮明に覚えているのは、当時真剣に購入を検討したからだ。当時の上司にチューニングについて相談すると「構造上かなり金がかかるよ」とまで言われたことまで覚えている。欲しかったのは、決してZZトップ(北米のロックバンド)がCMを担当していたためではない。MT車があれば、無理をしてでも購入していたに違いない。それだけクルマとして優れていたと思っている。5速MTモデルがあったなら、後世に残る名車になったかもしれない。 これほど優れたクルマながら2002年に一代限り(初代とは別物と考えると)で販売終了となってしまったのは、やはり3ドアATのみの仕様、そして価格が大きな影響を与えたからだろう。
新規開発が詰め込まれたオールニューのZの価格はNAが114.8万円、ターボが128.8万円。現在の軽自動車では決して高くはないが、当時としては高額の部類に入る価格設定だった。
ちなみに同時期に同じくKムーバーとして発売されたライフは、87.8~122.9万円。フィットの前のコンパクトカーであるロゴが、1.3Lながら83.0~142.8万円。まだ軽自動車には安さが求められていた時代だっただけに、少し割高であることが販売の足枷になったのかもしれない。
望み薄だけどUM-4コンセプトの軽EVを求む!
ホンダZはUM-4が生み出す広い室内と荷室、低重心と前後重量バランスによる優れた走行安定性が魅力。SUVが大人気の現在発売されえていれば、軽のSUVとして人気を集めたに違いない。スライドドアが無理でも5ドア仕様で発売されていればと悔やむのだが、時代に対してやはり登場が早過ぎたのかもしれない。 あえて同じクルマとして捉えるなら、初代から2代目までに24年の年月が経過してしまったが、願望を込めて言わせていただければ、3代目はエンジン搭載床下部分にバッテリーを敷き詰めた、Honda eと同じEVとして復活してくれると「面白いのでは?」と思わず妄想してしまうのだが……。
■ホンダZ(ターボ)
〇全長×全幅×全高:3395mm×1427mm×1675mm
〇ホイールベース :2360mm
〇トレッド 前/後:1280mm/1290mm
〇車両重量:970kg
〇乗車定員:4名
〇最小回転半径:4.6m
〇室内長×室内幅×室内高=1665mm×1220mm×1135mm
〇エンジン:直列3気筒縦置きSOHCターボ
〇総排気量:656cc
〇最高出力:64ps/6000rpm
〇最大トルク:9.5㎏-m/3700rpm
〇タイヤサイズ:175/80R15
〇ブレーキ 前/後:ディスク/LT油圧式
〇サスペンション 前/後 ストラット式/ド・ディオン式