小さな荷台がついているスズキ・マイティボーイだが
マー坊を買った当初は、薄いボードを簡単に加工しただけの「荷台の荷物が見えなければいいだろう」程度のトノカバーを取り付けていました。あるときルーフ側に開いて立て掛けていたボードが強風にあおられ、バタンと閉まった弾みでヒビが入り、修理しなくてはならなくなってしまいました。
愛着のある駄作でしたが、壊れてしまったら仕方がありません、ピックアップらしくカッコいい本格的なトノカバーの新作にチャレンジするチャンス到来です。
木型にFRPを重ねて作成することに
FRPで作りたいけど、オス型→メス型→本製品という手間が面倒なので、木型にFRPを被せる手法で作ります。まず始めに荷台にピッタリの木枠を作り、ベニヤ板を接着します。乾燥したら、ボディの傾斜に合うようにジグソーのベースに角度を付けて周囲を切り取ります。
カンナや木工ヤスリ、サンドペーパーを使ってコーナーやエッジを丸く加工します。裏側には補強の桟を入れ、FRPマットを貼り込みます。仕上がりの色を考えて、白いポリエステル樹脂を使っています。
ボードの表面にはFRPクロスを貼り、ポリエステル樹脂を散布してからゴムスキージで均一に広げます。
FRPが硬化したところで、ポリパテや厚付けパテでクロス目やエクボを埋めて平面や曲面に整えます。
裏側の木の桟にもFRPを被せてリブ構造にしようか迷ったけど、それほど重量のあるものでもないので、木肌のままで白く塗装しています。一応トノカバーらしく仕上がりましたが、開閉する機構が未定のままです。先代のトノカバーで蝶番を使っているので同じ手は使いたくないし、さあどうしようかな。
どうやって開閉させるか? それが問題だ
高級車のボンネットみたいにリンク式で開閉できれば、ヒンジを表に見せることなくスマートに処理できます。少々むずかしそうですが、この方法に決定しました!
条件に合いそうな、ホンダビートのリヤトランクフードのヒンジが入手できたので、不要な部分を切り取ってスリム化します。ヒンジのベースにはスチールラックのLアングルを使いました。これには長穴加工が施されているのでセッティングがしやすくなります。
荷台サイドのサービスホールを開けて、Fクランプでヒンジを仮留めしておき、アオリを降ろした空間から覗き込んで、ヒンジ受けプレートの微調整を繰り返します。非常に窮屈な体勢の作業なので、腰痛持ちには苦行ですが頑張りどころです。位置決めできたら、爪付きナットをヒンジ受けのプレートに圧入してからトノカバーにセットします。これでボルト4本でトノカバーとヒンジが合体できるようになりました。
一度仮組みして仕上がりをチェックしてみる
ではテストしてみます。とても滑らかに動いて垂直位置まで開き、そのまま静止します。
じっくり観察すると、トノカバーの前端がボディ側から離れながら開くので、ボディとの隙間をなくすことができます。そこで細長く加工したベニヤ板を追加接着して、裏側にアルミ角材の補強を入れたあとで、裏表ともFRP樹脂で補強しました。
ヒンジを黒く塗装してから荷台のサイドにボルト留めします(最終的には白塗装に変更していますが)。雨対策としてトノカバー下に雨どいを設け、雨水がホイールハウスの穴に流れるようにホースで導きます。
トノカバーのキーはフューエルリッドのものを流用
いよいよ最終段階です。いちばんの難題、トノカバーをロックする方法を考えます。ゴム製のフードキャッチもアリかなとも思いましたが、せっかくヒンジを目立たなくしておきながら、キャッチがゴツいというのもナニなので、キーロック式とします。ここで役立ったのが、フューエルリッドに使われていたキーシリンダーです。
このキーシリンダーなら同じメインキーで開閉操作ができて便利です。仕掛けはイラストのとおりです。(フューエルリッドの改造の顛末は「給油口を室内からオープンしたい」でリポートしています)。
キャッチの工作と同時進行でトノカバーの塗装を行いました。2液ウレタンスプレーの白で塗装したら、1輪車に載せて真冬の貴重な日光を受けられるように移動させます。低温だと2液ウレタン塗料の硬化が極端に遅くなるため、木の影を避けながら日光浴させるのですが、1輪車がとても役立ってくれました。
可愛らしい自作トノカバーがついに完成
キャッチが完成しました。トノカバーの下に付くステーは、バイクのシートロックのパーツです。トノカバーが閉まった状態のときの、ステーとアオリとの位置関係を知るために「すきまパテ」をアオリに貼り付けます。トノカバーをそっと閉めるとパテにステーの押し印が残るので、簡単にストッパーフックの位置決めができます。
フックの出るスリットをドリルの連打で開け、ヤスリで整えます。タッピングビス2本で装置を固定すれば、ストッパー側の加工は完成です。
次にキーを90度回転させてワイヤーを引く仕組みを作ります。アオリのロックレバーのサービスホールのカバーを開け、キーシリンダーの位置決めをします。
ここもドリルの連打で丸く穴を開けてから、回転ヤスリビットで正円に削り、キーシリンダーをセットします。
裏側にワイヤーを引く装置を取り付け、ワイヤーの張りと長さを調節します。アオリのロックレバーとカバーを元に戻してキーロックのでき上がりです。
キーを差し込み90度右に回すとロックが解除されて、トノカバーを上げることができます。キーはこの位置では抜けないので、90度戻したタテ位置でキーを抜きます。フックのツメが出たままの状態になりますが、トノカバーを閉めるとフックの首振りで自動ロックされます。
トラックらしからぬ小さな荷台のマー坊にお似合いの、可愛らしいトノカバーの自作が楽しめました。