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「キジ撃ちに行ってくる」の本当の意味とは? 意外と知らない「キャンプ用語」18選

キャンプは登山カルチャーとともにやって来た

 1786年のモンブラン初登頂が登山文化の始まりと言われていますが、日本では明治期に登山が始まっています。新田次郎の「剣岳 点の記」に描かれたように、ろくな装備もなしに3000m級(劔岳は2999mでしかも当時未踏峰)に登るのは至難の業でした。やがて大正時代に入るとヨーロッパ・アルプスで考案されたハーケン、カラビナ、ザイルでの懸垂下降といった道具と技術が、オーストリアやスイスといったドイツ語圏から日本に流入しました。 一方キャンプ文化もまた、この登山文化と一緒に明治期に入ってきました。公益社団法人日本キャンプ協会のホームページによれば、学生の合宿キャンプなど積極的に明治政府が取り組んだとのこと。19世紀末にヨーロッパで起こった、ワンダーフォーゲル運動も世界各国に影響を与えたようです。

 イギリス・アメリカではボーイスカウトが発案され、野外で共同生活する教育効果が認められるようになると、日本でも1916年にボーイスカウトが琵琶湖畔でキャンプを行ったとして「日本ボーイスカウト初野営の地」の記念碑が建てられ現存しています。 こうして振り返ると日本の登山・キャンプ文化が明治期の新進の精神と教育、自由と自然環境への敬愛から始まっていることが伺えます。工業化や近代化の産業革命で置き去りにされつつあった、山紫水明を再発見する人間回復運動と言ってもいいのかもしれません。明治期の日本はドイツ語圏、英語圏などの枠を超えて貪欲に取り入れていったのでしょう。その名残が、登山用語やキャンプ用語に隠れているのだと思います。

 初心者にはあまり聞きなれない用語がどこの分野でもありますが、ここでは少し知っておけばキャンプ世界が楽しく広がるキャンプ用語を少しばかり取り上げてみます。

キャンプ用語その1:キジ撃ち

 トイレに行くこと。野外では野〇〇になるため、藪に隠れる姿からこう呼ばれるようになりました。女性の場合はお花摘みとも言います。めっきり使われなくなった昭和レトロな表現になってしまいました。近年は環境問題から携帯トイレが推奨されます。 昔は周囲にトイレがない場合は、スコップで深く(30cm程度)穴を掘っていたすことがお決まりでした。埋め戻したら後続の人が掘り返さないよう枯れ枝でバツ印をマークしておきます。トイレットペーパーは自然に還りにくいので、葉っぱでこそぎ落としたのち水で尻を洗います。使用済みトイレットペーパーを焚き火で燃やす方法もありますが、火の粉が舞うので要注意。河川に直接排便するのはNG。というものでしたが、言葉だけでも、粋に使ってみてもいいのでは。

キャンプ用語その2:ケトル

 英:kettle。やかん。マニアックなものとしてはケリーケトル(ギリーケトル、ストームケトルとも)があります。内部が中空で煙突になっているため、台座の火皿で松ぼっくりや小枝などを燃料に超時短で1リットル程度のお湯を湧かせてしまえるエコなケトル。

 やかんとケトルの違いは、昔ながらの丸っこい土瓶型のアルミ製なら「やかん」。湧き上がりのホイッスル付きなど欧米風でオシャレだなと思ったら「ケトル」です。あなたはやかん派? ケトル派?

キャンプ用語その3:コッヘル/コッフェル

 アルミニウムやステンレス、チタン製の登山・キャンプ用鍋のこと。持ち手を畳んで複数重ねられ、コンパクトに携行できるクッカー。語源はドイツ語のKocher/コッハー(英語のクッカーと同意)。熱伝導の良いアルミは焦げずに炊飯できますが、耐熱温度は600℃程度。耐熱・耐久性ではステンレス。軽さではチタンに軍配が上がります。

キャンプ用語その4:ストーブ

 英米:Stove。日本では暖房用を指すが、欧米ではクッキング用もストーブと呼ぶ。ガスカートリッジ、ホワイトガソリン、アルコール、固形燃料を用いるバーナーも含めて「ストーブ」と呼ばれています。だが日本ではバーナーと呼ばれ、クッキング用として定着している感はイマイチ薄いです。 やはり日本では石油ストーブ、薪ストーブなど暖房用の印象が強いです。キャンピングストーブ、ポータブルストーブなどがあります。

キャンプ用語その5:スモーカー

 英語の「Smoker」には喫煙者と燻製器とふたつの意味があり、キャンプでスモーカーといえば燻製器を指すことが多いです。燻製を作るための道具には、温度管理ができる金属製等の製品から、簡易ダンボール、ダッチオーブンやスキレットなどの鍋底に網を敷いての代用など、さまざまなグッズ利用方法があります。 基本的には燻製用のチップから出た煙を溜めて、食材を燻すスペースがあればどのような方法でも可能です。桜のチップなどを用いるが、コツは不完全燃焼させ煙だけを立たせること。火が点くと食材が焦げてしまいます。

キャンプ用語その6:ザック

 荷物を入れて背負うためのバッグ。リュックサック。語源はドイツ語のRucksack(ルックザック)。英語ではバックパック。日本語では背嚢となり軍隊装備品のニュアンスが香り立つ。昭和初期の日本ではキスリング(スイス発祥)と呼ばれる、帆布製の袋の両サイドに大型ポケットが付いたものが用いられた。横長になるため、駅ですれ違う際に横歩きする姿から「カニ族」と呼ばれた。リュックを背負ってバイクツーリングする人が北海道に押し寄せた昭和の頃にも「カニ族」と呼ばれもしましたが、バイク音が出るので「ミツバチ族」と呼び名も進化したり。キスリングにはフレームがなく、パッキングには慣れと技術が必要。

キャンプ用語その7:ストック/ステッキ

 野山を歩くときに歩行を補助するために使用する杖。ストックはドイツ語のシュトック(Stock)、ステッキ(Stick)は英語読み。日本でストックはもっぱらスキー用を指します。近年はトレッキングポールと呼ばれます。スプリング内蔵でショックを和らげたり、岩場や草地、雪道や泥濘地などシチュエーションに合わせて先端のキャップを交換できるようになっており多彩です。

キャンプ用語その8:スキレット

 英:Skillet。一体成型された鋳鉄製フライパン。熱伝導率が低くゆっくり温まるため均一に調理できます。また冷めにくいため、鍋ごと食卓に出すスタイルも人気があります。重量があり手入れも必要なこともあり、使いこなすのに熟練を要するが愛好家も多いです。ダッチオーブン同様使い始めにシーズニングが必要。

キャンプ用語その9:ダッチオーブン

 アメリカ西部開拓時代から存在すると言われている鋳鉄製の鍋。ダッチ=オランダ人の鍋と呼ばれているのには、オランダ人が持ち込んだ説、オランダ人が売り歩いた説など諸説あります。蓋の上にも炭火・熾火を乗せ、上下から加熱することでオーブン調理ができます。焼く・煮る・蒸す・炊く・揚げる・燻製のほか、パンも焼ける万能鍋。欠点は激重で、オートキャンプ以外運搬は無理でしょう。

キャンプ用語その10:シーズニング

 英:Seasoning いわゆる慣らし。ダッチオーブンやスキレットなどの鉄製クッカーを空焼きし、黒錆皮膜を生成させて焦げ・錆びにくくする手法。焼いてオリーブオイルを塗布し、数回繰り返すことで皮膜が黒く形成されていく。シーズニングを終えたダッチオーブンはブラックポットと呼ばれます。

キャンプ用語その11:ハイキング

 英:Hiking よく聞く言葉ですが「健康のために歩く」ウォーキングに近い意味を持つ。野山のみならず、郊外や歴史探訪など特定のコースを歩いて回ることが主。ピクニックとは概念が異なります。

キャンプ用語その12:ピクニック

 仏:Pique-Nique、英:Picnic。野山や公園など自然のなかで食事を楽しむことで、主目的は食事です。サンドイッチなど予め用意するスタイルで、調理も食材のカットなど簡便。発祥はヨーロッパ貴族の狩りの合間のランチ。ヨーロッパの高緯度地帯では、夏の日差しを楽しむ意味もあります。

キャンプ用語その13:ワンダーフォーゲル

 独:Wandervogel/渡り鳥の意。略称はワンゲル。ドイツで19世紀末に始まった自然回帰・自由謳歌活動。広義の意味でのアウトドア活動全般を指し、山岳登山から、トレッキング、ハイキング、ピクニック、野外での合唱など幅広いです。日本では昭和初期に教育目的で導入され、高校や大学などにワンダーフォーゲル部が多数設立されました。若い男女が青春を謳歌するサークル活動のようなものでした。

キャンプ用語その14:レードル/ターナー

 英:Ladle/Turner /Cutlery /tongs。おたまとフライ返しのこと。日本人なら「おたま」、「フライ返し」と呼べばいいではないか、とも思いますが、キャンプに来ると呼び名がオシャレになる例。ナイフとフォークも「カトラリー」と呼ばなければいけません。バーベキューなどで具を挟んで掴む道具もトング。火バサミといってはちょっとかっこ悪すぎる? もちろんやかんはケトル。ちなみに「お玉」の正式名称は「お玉杓子」。この形状に似ていることから、「オタマジャクシ」と呼ばれたのがカエルの幼生の総称。

キャンプ用語その15:ツェルト

 独:Zeltsack。総称してテントの意。日本でツェルト(ツエルトとも)といえば、緊急時などビバーク用の軽量小型テントを指します。テントに近い自立型、タープのような1枚もの、ポンチョに近い被り物などさまざま。総じて軽量コンパクトなものが多いです。またUV、耐水、遭難時の視認性など製品によって特色があります。

キャンプ用語その16:メスティン

 Messtin(軍用ブリキカップの意)。広義の飯盒。日本ではおもに角型のアルミ製メスティンを指します。スウェーデン・トランギア社のメスティンが歴史的に定評がありますが、近年はアウトドアメーカー各社、100円ショップなどでも販売されています。 長らく日本では飯盒といえば、キドニー形状(腎臓型)の兵式飯盒が主流でした。昔から伝わっていた炊飯後ひっくり返して蒸らす必要はなく、鍋底を木片で叩くのも飯盒をボコボコに痛めるだけなので、やめたほうがいいです。熾火で調理すれば煤は付きません。

キャンプ用語その17:バーナーパット

 日:Berner-pad。キャンプ用コンロやガスバーナーの火力を拡散する金属製の網。炎が直接集中すると、ステンレスやチタンなど熱伝導の低いクッカーは焦げやすいです。金属メッシュで分散することで面で加熱できます。五徳に乗せて使用するため、シエラカップなど五徳に乗せにくいものでも安定するメリットも。パンなどが焼けるロースタータイプもあります。

キャンプ用語その18:ランタン

 英:Lantern。元はラテン語で松明の意。ランプも語源は同一。ランプは広義の照明であり固定式を指しますが、携行式をランタンと称します。ライトは光そのものを指すが器具でいえば「電灯」。LEDランタンやLEDライトはありますが、「灯油ライト」は聞いたことがありません。近年LEDの登場で明るさ(ルーメン)を競ってる感がありますが、爆光はほかのキャンパーの迷惑になります。明るければいいってものではありません。炎が揺れる灯油ランタン、キャンドルランタンの仄明るさと、都会にはない夜の漆黒を味わう大人の感性をぜひ身につけたいです。

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