同じサイズでも見た目や乗り心地は変わる! 奥深いジムニーのタイヤ選びの極意とは
昔からの根強いファンに加え、そのレトロなスタイリングで一般ユーザーからも絶大な人気を誇る唯一無二の本格軽四駆、スズキ・ジムニー(JB64W)。カスタムに明るくない人でもプチイジりする人が多く、なかでもその筆頭といえるのがタイヤ交換だ。どんなタイヤがあり、どのサイズを履かせるのが正解なのか。その極意を詳しく紹介していこう。
■ジムニーのタイヤを交換する前に、どのサイズのタイヤが履ける?
標準で想定されているサイズとは
ジムニーのノーマルタイヤサイズは175/80R16で、そのタイヤ外径は約686mm。ジムニーのタイヤ交換は外径を大きくするパターンが多く、その場合、車検に通すにはノーマル比6%以内、つまり約727mmに外径を収めなくてはならない(総幅の問題もあるがこれは後述)。 ジムニー用として販売されている国産タイヤはこのサイズに収まっているものがほとんどで、ノーマルとまったく同じ175/80R16、その次に大きい185/85R16(約721mm)、それよりもう少し大きい195R16(約726mm)の3サイズ(同じ表記でもブロック形状などでサイズの前後はある。各メーカーのサイズ表を要参照)。これらのサイズであればブリヂストンやトーヨータイヤ、ヨコハマなど選択肢も広い。
JB64Wジムニーからイッキに注目が高まったサイズもある
上記サイズに加えて、ジムニーユーザーが最近よく履いているタイヤサイズが215/70R16だ。本来であればデリカやエクストレイル用になるが、BFグッドリッチのホワイトレタータイヤを合わせるスタイルがSNSを中心に爆発的に広まり、いまでは数カ月待ちというほどの人気ぶり。 その外径も約707mmと、先に紹介したジムニー専用タイヤよりも小さいため、外径に伴うボディへの干渉リスクは少ない(というかほぼない)。 ただし前述の通りジムニーの専用サイズではなく、あくまでも履けるサイズであるということを留意してほしい。というのは215mmのトレッド幅だと、フェンダーに収まるギリギリのサイズになるため。ただし平成29年に施行された、いわゆる「タイヤだけなら10mmはみ出しOKルール」に該当すれば理論上はパスできるレベル(ホイールサイズによってはNGの場合もあり)。なお、独立行政法人・自動車技術総合機構から発表されている規定は以下の通り。
■回転部分の突出禁止規定
自動車が直進姿勢をとった場合において、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30度および後方50度に交わる2平面により挟まれる走行装置の回転部分(タイヤ、ホイール・ステップ、ホイール・キャップ等)は当該部分の直上の車体(フェンダ等)より車両の外側方向に突出していないこと。
この場合において、専ら乗用の用に供する自動車(乗車定員10人以上の自動車、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く)であって、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30度及び後方50度に交わる2平面により挟まれる範囲の再外側がタイヤとなる部分については、外側方向への突出量が10mm未満の場合には「外側方向に突出していないもの」とみなす。
この理論に照らし合わせつつあらためて見ると、確かにセーフのようにも見えるが……。とはいえ車検上の検査員の認識などでNGとなる可能性がゼロじゃないことは考慮すべき。 またトレッド幅が広がるため、ハンドリングの感覚もそれまでとは異なってくる。この辺りも踏まえた上で、可能ならそのサイズを履いている人のクルマを試乗させて貰うなどしてサイズの選択の検討をしてほしい。
純正バンパーでは走行不可! けれども多くの人が履いているサイズの「正体」とその「履き方」
ところでジムニーをカスタムしているメーカーやショップのデモカーを見ると、もっと大きなタイヤを履いている例も多く見かける。その筆頭サイズが225/75R16で、外径は744mm。 この外径になると純正バンパーの加工(具体的には一部カット)や社外バンパーへの交換が必要になる。写真は同サイズのタイヤをバンパーとサスペンションがノーマルのジムニーに履かせ、ハンドルを切ったもの。結果ほぼ1回転程度でバンパーの裏側へ干渉した。「じゃあリフトアップすれば大丈夫?」と思うが、じつは1インチや2インチ程度のリフトアップだけでは干渉からは免れない。むしろバンパーを薄いものにした方が干渉リスクは軽減する。ただバンパーを薄くしてタイヤを大きくすると、全体のバランスを考えてリフトアップしたくなる。その印象もあって「大きなタイヤ履かせるならリフトアップ」というイメージがあるが、ジムニーに関しては同時にバンパーへの干渉も考えなくてはならない。
■タイヤ選びの考え方の軸とは
オンロード中心なのか、オフロードも考慮するか
ジムニー用のタイヤは多くのメーカーから色々な種類がでている。もちろんメーカーごとにその特性やデザインは微妙に異なるのだが、ざっくり分けるとオンロード用とオフロード用の2種類。 確かに普段乗りであればオンロード用の方がロードノイズも少なく、ゴツゴツ感も少なく快適。だが、見た目はいわゆるフツーのタイヤに近いので、ドレスアップ効果としての恩恵は少なめ。実際、タイヤ交換を検討しているジムニーユーザーが、選択肢としてまず考えるのはオフロード系が多い。SNSなどで見るそのスタイリングに惹かれて、自ずとそのあたりのタイヤが選択肢に入ってくるようだ。「イメージ優先でオフロードタイヤのなかでも一番ハードなM/Tタイヤをいきなり選ぶ人も。M/Tタイヤってオフロードでも上級者が履くようなタイヤ。オフロードタイヤを履きたい気持ちはわかりますが、M/Tの性能が必要な人ってほぼいない。履いてはいけないとは言いませんが、それなりのデメリットもあるということは頭に入れておいてほしいですね」とは広島にあるオフロード系タイヤに詳しいショップ「Sスタイル」の菅原さん。
とはいえ、リスクは承知の上でゴツゴツ系タイヤを履きたい気持ちもあるだろう。そこで狙い目なのが、オフロードとオンロードのいいとこ取りタイプだ。ここ数年トーヨータイヤが特に力を入れていて「R/T(ラギットテレーン)」という新たなモデルを開発。同様にヨコハマのオフロード系ブランド「ジオランダー」も同様のコンセプトを掲げた「X-AT」シリーズが登場するなど、普段乗りが基本ながらもオフロード感を楽しめるタイヤが続々登場。街乗りメインのビジュアル重視派のタイヤ選びはこの辺りを候補に入れるといいだろう。
いま大人気「ホワイトレター」はサイズと銘柄が限定&「ホワイトリボン」もあり
そんなオフロードタイヤのなかでも、いま圧倒的に人気なのがホワイトレタータイヤ。サイドウォールに刻まれたメーカー名やタイヤのシリーズ名が白文字になっているもので、GFグッドリッチの「オールテレーン」、トーヨータイヤの「オープンカントリー(一部サイズのみホワイトレター)」がとくに人気だ。前者なら215/70R16が、後者なら185/85R16がピッタリだろう。 またタイヤサイズは異なるが文字の外側だけ白くなっている「アウトラインホワイトレター」タイプや、文字ではなくリング状に白くなっている「ホワイトリボン」タイプも存在。先述したタイヤの特性やサイズによる干渉を考慮する必要はあるが、選択肢はかなり広いのがジムニー用タイヤ。自分にピッタリのモデルを見つけたい。