エントリー価格を下げることが一番の理由
ではなぜ、そうした、パワースライドドアが付かないグレードがあるのだろうか。全車標準にできないのか? 理由は簡単だ。エントリーグレードがそうした設定であることからもわかるように、価格である。ノア&ヴォクシー、N-BOXの助手席側にパワースライドドアをオプション装備するだけでもそれぞれ6万7200円、5万5000円の追加料金なのだから、両側に付けるとなれば10万円以上、価格アップすることになるわけだ。
価格勝負の車種、グレード、営業車&社用車としての導入では、10万円を超える価格差は大きすぎる。とにかく安く買いたいという人にとって、パワースライドドアの有無は、購入価格の安さに勝てなくて当然だろう。パワー機構がなくたってスライドドアは、多少の力は必要になるもののイージークローザー機構さえあれば、なんなく開けられるのだから。ゆえに、スタート価格設定のからくり、営業判断もあって、パワースライドドアは全車標準化しにくいというわけだ。
いや、それだけではない。欧州車のミニバンや働くクルマをベースにした、ルノーカングーやシトロエン・ベルランゴなどが、そもそもパワースライドドアを持っていない点にも注目だ。そこよりもコストをかけるところの意識の違いがあり、また、実用車としての潔い装備設定の考え方でもありそうだ。
さらに、日本のような治安のいい国では、パワースライドドアが、安全のためにゆっくりと開閉してもあまり問題にはならないはずだが、ギャングの多い国(!?)では、力は必要だろうがいざというときにサッと、パワースライドドアよりも早く閉められる非パワーのスライドドアのほうが安心である。そういったことも、海外のスライドドアを持つ実用車に、パワースライドドアが重宝されない(普及しない)理由かも知れない。