VAB型WRX STIを以ってEJ20搭載車の生産が終了
ついに北米仕様のWRXが公開され、そのパワーユニットが2.4L水平対向4気筒ターボを搭載することが明らかとなった。国内仕様についてはその詳細についての発表がないものの、北米仕様と同じく2.4Lターボを採用することが濃厚なのではないかという噂が飛び交っている。 先代WRXでは、EJ20型水平対向4気筒ターボエンジンに6速MTを組み合わせた「WRX STI」と、FA20型水平対向4気筒直噴ターボエンジンに、リニアトロニックCVTとスバル自慢の運転支援システム「アイサイト」を組み合わせた「WRX S4」の2本立てでラインアップされていた。なかでもVAB型WRX STIは、1989年に登場した初代レガシィから長きにわたり搭載されてきた、EJ20型エンジンを搭載する最後のモデルとして、多くのスバルファンを魅了した。
主力エンジンとしてスバルの主要モデルに搭載
EJ20エンジンは前述のとおり、1989年に登場した初代レガシィ(BC/BF型)に搭載され、それまでスバルの基幹モデルであったレオーネに搭載のEA82型水平対向4気筒SOHCエンジンから、一気に当時トップクラスのスペックを誇るパワーユニットとへと進化した。 その後も改良を重ね、続く2代目(BD/BG型))から4代目(BL/BP型)までのレガシィに搭載されたほか、WRC(世界ラリー選手権)で3年連続マニュファクチャラーチャンピオンを獲得した初代インプレッサにも搭載。インプレッサ系では3代目(GC/GF型〜GRB/GVB/GH8型)まで搭載され、WRX STI(VAB型)へと引き継がれた。ほかにもSUVのフォレスターに初代(SF型)から3代目(SH型)まで搭載されたほか、7人乗りのエクシーガ(YA5型)にも搭載されるなど、一時はスバルのすべてのモデルに採用された主力のエンジンであった。
もちろん、世代ごとに大きく進化を遂げているだけではなく、モデルごとに過給機やスペックを変更するなど、同じEJ20という形式ながらそのバリエーションは数知れず存在した。
デビューから終焉まで改良を重ねファンの心をつかんだEJ20ターボ
初代レガシィセダンRS系/GT系/ツーリングワゴンGT系に搭載されたシングルターボ仕様のEJ20インタークーラーターボエンジンは、RS系が220ps、GT系は200psの最高出力を発生。ダイレクトイグニッションや水冷式オイルクーラーを採用するなど、令和となった現在でも十分に通用するスペックを誇る。
WRCで勝利を勝ち取るために開発されたインプレッサWRXには、レガシィ用をさらにパワーアップさせた240ps仕様のEJ20ターボを搭載。インタークーラーは空冷式へと改められ、ハイドロリックラッシュアジャスター付きダイレクトプッシュ式バルブ駆動へと変更、4速AT用にはタービンを小径にしてトルク重視型とした220ps仕様も設定された。 インプレッサはこのあとの世代でも空冷インタークーラーシングルターボを継承し、ライバルである三菱ランサーエボリューションとの熾烈なスペック競争へと突入。可変バルブタイミング機構AVCSや等長等爆エキゾーストなどの新しいメカニズム、吸排気系の見直しなどを経て、3代目インプレッサWRX STI(GRB型)では308ps/6400 rpm、43.0kg-m/4400rpmを誇るトップクラスのパワーユニットへと進化し、EJ20最終となるWRX STI(VAB型)へと継承された。 一方レガシィシリーズには、2代目モデルからはインプレッサと同じく空冷式インタークーラーとしつつも、タービンを2基搭載したシーケンシャルツインターボ方式(低速時にはプライマリーターボによるシングルターボのみ過給させ、高負荷になるとセカンダリーターボも過給させてツインターボ状態となる)を採用する。1996年の大幅改良モデルでは、当時の自主規制枠いっぱいの280psを量産2000ccモデルとして初めて達成した。 その後も3代目レガシィにシーケンシャルツインターボ方式を採用したが、ふたつ目のタービンが回り始める前のターボラグ、いわゆるトルクの谷がネックとなっていた。もちろん斜流タービンなどを採用することで、その谷間の解消を図るも、4代目レガシィではチタン製ツインスクロールのシングルターボ方式へ変更。等長等爆エキゾーストにより、それまでのドコドコ音という独特な排気音と別れを告げ、新しいボクサーサウンドが登場した。