身近なクルマでありながら新時代を感じさせる3代目シビック
もはや“懐かCM”としてシリーズ化したいくらいだが、1983年9月に登場したワンダーシビックこと3代目シビックというと、やはりサッチモ(ルイ・アームストロング)の“What A Wonderful World”の歌声とともに、世界各国の風景にシビックが溶け込む映像が流れたあのCMが思い出される。とにかく渋く、雰囲気があって、3代目シビックの新しい世界観にワクワク、ゾクゾクさせられる……そんなCMだった。
ボディタイプは全3タイプが用意された
エポックメイキングだった初代シビックが1972年に登場、“スーパーシビック”の愛称で呼ばれた2代目は、初代の進化・洗練版だった。そして“ワンダーシビック”と呼ばれた3代目は、今から思えばわずか3代目だったのである。にもかかわらず、同じシビックながら2代目とは打って変わったクルマに生まれ変わったことに目を見張ったものである。
ボディタイプは3ドアハッチバック、4ドアノッチバックセダン、そしてシャトルと呼ばれる5ドアの全3タイプ。グレード名は2桁の数字で表わし、ハッチバックは2ボックスなので2とエンジン排気量の3(=1.3の“3”)か5(=1.5の“5”)の組み合わせ、同様にセダンは3ボックスで3X、シャトルは5ドアを表わし5Xの表記だった。
カッコよく乗りこなせる3ドアハッチバックのワンダーシビック
スタイルでいうと何といってもハッチバックが注目だった。いわゆるビュレット(弾丸)フォルムのロングルーフで、リヤエンドは裁ち落として大きなガラス面積のハッチゲートを採用。2ボックスというと、それまでは合理的でシンプルな道具感はあるけれど、同時にやや実用本位のクルマ……。そんなイメージもあったところに、ワンダーシビックの3ドアハッチバックは一気に洒落たデザインを新提案してきたのである。平たくいうとカッコよく乗りこなせる……そんな瑞々しい魅力をもっていた。 バリエーションのセダンもクリーンでやや背の高い、これもまた若々しいデザインだった。さらに5ドアのシャトルは、1981年に登場した初代シティの上級5ドア版といった趣で(セダンとともにハッチバックより1カ月遅れで)登場。 T.W.スクエアシェイプのこのシャトルも斬新なスタイリングで、コンセプトは新しいセダンながら、当時のRVブームに乗り、評判を得た。同じボディの4ナンバー仕様車のPROの設定もあった。このPROにも5ナンバーのシャトルと同様に、インパネ上面中央には、世界初を謳うポップアップ式ベンチレーションが備わっていた。