不人気とは言わせない! S14シルビアは今思えばいいクルマだった
1993年10月に発表された日産S14型シルビアは、走りが良く流麗なスタイリングなのに、なぜか不人気に烙印を押されている。先代S13型がキャッチコピー「アート・フォース」の名に恥じぬ優れたスタイリングで発売され、大人気だったからその影響はあるだろう。3ナンバーサイズになった理由も少なくないかも。同じ日産のスカイラインがR32型からR33型にモデルチェンした際、実際には進化しているにも関わらず、見た目の印象で「ぼてっとした(太ったように見える)」と評されて、同じ路線だったことも少なくないのかもしれない。 それはさておき今回は「アイ・ハント・シルビア」というコピーを掲げたシルビアのS14型が、デザインの好き嫌いは別として、クルマとしてどうだったのか? を考えてみたい。
走りはS13より正常進化していた
通常はコンセプトとか、装備や性能などから始めるのがセオリーだと思うのだが、走りの性能でいうと、S14型シルビアは市街地の快適性を除けば、すべて上まわっていたといってよい。市街地の、と言ったのはS13型とS14型を同時に乗り比べたことがないから。 攻めた走りのみだと、S14型は大きくて重くなったわけだがそんなことは感じさせない素晴らしいものだった。最初の試乗会はサーキットで行われたが、とにかく楽しくて速い。S13型の後期モデルに搭載されたSR20型エンジンは進化を果たしており、カタログ上のスペックを体感させた。 ターボのSR20DET型は最高出力220ps/6000rpm、最大トルク28.0kg-mを誇っており、S13型の205ps/6000rpm、28.0kg-m/4800rpmから進化していた。NAのSR20DE型もS13型が140ps/6400rpm、18.2kg-m/4800rpmに対して160ps/6400rpm、19.2kg-m/4800rpmとアップ。
意のままに操れるハンドリングだった
こうしたS14型の走りは、サーキットのでも優れていて、意のままにラインをトレースできるもの。路面のうねり、サーキットでも一般道でも完全に真っ平な路面はないわけだが、進化したタイヤとサスペンション、スーパーHICASの効果で軽やかな走りを会得していた。そしてコーナー出口で強めにアクセルを踏み込めば簡単にテールを振り回すことができ、試乗会ではたてまえ上禁止されていたドリフト走行も得意分野。当時今以上のヘタッピー! な筆者であってもテールスライドを味わえ、クルマを操る楽しさを堪能させてくれた。 これはS14型がボディ剛性やサスペンション、タイヤなどを進化させて、FRマシンとして幅広いユーザーがスポーティな走りを体験できる仕立てになっていたことの証明だ。サスペンションの形式はフロントがストラット、リヤがマルチリンクと変更はない。しかし、ボディ剛性の強化とワイド化によるトレッドの拡大、205/55R16タイヤの性能(S13型は205/55R15)の進化によって、ライバルたちと違う、FRならではの走りを体現していた。S13型のヒットによって開発予算も潤沢だったに違いない。S14型はしっかりと新型車、進化していたというわけだ。