今だから話せる試乗車でヒヤッとした経験
われわれのような自動車専門媒体で働いているメンバーは、自動車メーカーなどからクルマをお借りして取材に出かけることが多い。それはワインディングや街乗りの試乗のときもあれば、サーキットやテストコースでのフルテストもある。ときには試乗車でヒヤッとした経験も……。
ヤンチャをしすぎて、オーバースピードでスピンしかけたり、曲がりきれなくてアンダーを出したというったヒューマンエラーもちろんゼロではなかった。しかし、ここではおもにクルマ側、ハードの問題でヒヤッとした例をいくつか教えてほしいというリクエストが編集部からあったので、センパイや同業者にもいろいろ話を聞いてみた。 結論からすると、デキのいい最近のクルマの話は少なく、1990年代前半の体験ばかりが出てきた。「へぇ〜、そうなんだ〜」という思い出話として読んでほしい。
ビックリするほど止まらなかった某車
あの有名なRRスポーツカーといえば、某巨匠の影響で「後ろから巨人の手でいきなりつかまれたような強力なブレーキ」というイメージがあった。個人所有の車両を借りたとき、街なかで危険回避のためにちょっと強めのブレーキを踏んだら、簡単にフロントタイヤがロック!
そのスポーツカー用の上等なタイヤでなかったこともあるが、リヤヘビーのRRは荷重移動も考えずにポンと強いブレーキを踏むと、これほど利かないとは予想外。
滑り出しが読めないミッドシップ車
あるメーカーのミッドシップモデルを借りてテストコースで高速(?)スラロームをやってみると、とっちらかって収拾がつかない事態に……。
その車はエンジンとギヤボックスをFF車から流用したために、車高の割にリヤまわりの重心が高い。そのうえボディ剛性が不足し、リヤサスのジオメトリーにも難があり、リヤタイヤのキャパシティも足りなかったため、位相遅れのような症状が出て、挙動が読みづらくかなりデンジャラスなクルマだった。 こうした問題は、マイナーチェンジのたびに改善されていったわけだが、初期型からもう少しセッティングを煮詰め、第一印象がよければもっと人気が出て、評判がよかったかもしれない。
真っ直ぐ走らない
平成以降のクルマは、真っ直ぐ走るなんて当たり前のことと思っているかもしれないが、昭和のクルマは最高速テストなどをやるとハンドルがまっすぐでもクルマがブレるのがざらにあった。直進安定性はクルマの運動性能の中でもっとも重要な性能のひとつで、真っ直ぐ走るというのは素晴らしい技術だったのだ。
そうした直進安定性が平成になっても心許なかったクルマといえば、フェラーリの348(前期型)。フェラーリは308や328もフロントの接地感が乏しいクルマだったが、1989年にデビューした348も直進安定性があまり良くなかった。路面がフラットなテストコースではましだったが。 ある意味ハンドリングが速度リミッターになるようなクルマだった。タイヤやダンパーなどの進歩で、コンディションのいい今どきの348なら、直線でそこまで怖い思いはしなくて済むはず。