日産2大ブランドの個性派コンプリートカーを振り返る
日産の純正カスタマイズモデルと言えば、レーシーなニスモとプレミアムスポーツなオーテックを思い浮かべる人が多いことでしょう。今や多くの車種を手掛けるニスモとオーテックジャパン(以下オーテック)ですが、過去には両ブランドのより尖った仕様が、同じ車種に設定されていたりしました。今回は両方設定されていた車種と、その尖ったオリジナリティあふれる内容をご紹介!
R33スカイラインGT-R
1995年に登場したR33型スカイラインGT-R。R32から続くチューニングブームと車検の規制緩和の影響により、多くのユーザーとショップがチューニングベースとしたモデルです。そんなR33ですが、日産ワークスであるニスモも、ハイチューンドマシンのベースとしました。
こうして登場したのが400psを発生する、ニスモコンプリートの限定モデル400Rです。そのチューニング内容は多岐に渡り、当時の新車価格で1200万円というプライスが付けられました。
当時の日本車としては高額ですが、チューニング内容と「メーカーワークスチューンの400ps GT-R」ということを考えれば、破格と言えるモデルでした。
そしてオーテックが手掛けたR33が、スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40thアニバーサリーです。簡単に言ってしまえば「4ドア版GT-R」なのですが、単純に既存のパーツを使って4ドアGT-Rを作り上げたのではなく、リヤシートやフェンダーなど必要な部分は新たに設計されました。
わずかな生産台数の限定モデルというのに、新規でフェンダーを作るという生産工程を考えると赤字必須な判断には驚かされます。
S14シルビア
当時の走り屋御用達モデルであったシルビア。R33とほぼ同じ時期に登場したS14も、チューニングベースとして親しまれました。
1994年に登場した、S14シルビアベースのニスモコンプリートマシン270Rは、ニスモ創立10周年を記念して30台限定で登場。その名が表す通り270ps(ノーマルは220ps)を発生するチューニングマシンです。
先に紹介した400Rと比べるとインパクトに欠けるかもしれませんが、エンジンのパワーアップだけでなく、冷却系や駆動系の強化、サスペンションの改良まであらゆる部分の性能を向上。非常にバランスの取れた、シルビアチューンのひとつのお手本と言えるような内容でした。
オーテックが手掛けたS14シルビアであるオーテックバージョンK’s MF-Tは、後期型をベースにチューニングされました。
270Rと同様にトータルチューニングが施され、250psにパワーアップされていましたが、特質すべきはそのエクステリアデザイン。空力や冷却を考えたエアロパーツが装着されているのですが、目を引く大型リヤウイングは時代を感じさせます。
K12マーチ
日産のスポーツモデルと言えばスカイラインやシルビアに目が行きがちですが、モータースポーツにおいてアマチュアレーサーを支えたモデルとして、マーチを忘れてはいけません。3代目となるK12マーチには、ニスモもオーテックもホットなモデルを用意していました。
ニスモが手掛けたS-tune COMPLETEは、当時行われていたワンメイクレース「マーチカップ」の参戦車両をイメージして開発。カップカーとおそろいのデカールなどがオプションで用意されていました。
ノーマルではキュートなイメージのマーチ、このコンプリートモデルは20mmローダウンと控えめなエアロパーツ、スポーツホイールが装着されている程度ですが、わずかなエクステリアチューンで一気にカッコよくなっているのが好印象です。
エアロパーツやサスペンションのほかにも、エキゾーストシステムやコンピュータのリセッティングなどが施され、ハイオクガソリン仕様となっているのがヤル気を感じさせるモデルです。
オーテックが手掛けたマーチである12SRも、エンジンやサスペンションなど総合的なファインチューニングがバランスよく施されているのが特徴です。
こちらもハイオク仕様となっていて、S-tune COMPLETEの90psよりもハイパワーな108psという最高出力を誇ります。
そのほかスポーティに仕立てられた内装や、専用のエアロパーツが用意されていて、S-tune COMPLETEよりもチューニングカーらしい見た目とヤル気にさせる内外装が特徴です。
ストイックにドライビングを鍛えるならS-tune COMPLETE、所有欲も満たすならば12SRといった棲み分けでしょうか。スポーツモデルのみならず、エントリーのコンパクトハッチバックでも魅力的なチューニングモデルを選択肢のなかから選ぶことができたのは、ニスモとオーテックの両方がある日産ならではと言えるポイントです。