走行会以外で個別にサーキットが走行できるようになる
モータースポーツの『ライセンス』は大きく分けてふたつ。レースやジムカーナといった公認競技への参加や、オフィシャルと呼ばれる公認審判員向けがひとつ。もうひとつはサーキットが独自に走る人へ向けて発給するものだ。一般的に『サーキットライセンス』と呼ばれており、取得と更新の料金や特典は施設によって異なる。
JAF公認のサーキットであれば内容に多少の差はあれど、間違いなくサーキットライセンスがあると考えていいはず。では所有しているとどんなメリットがあり、そしてどのような人にオススメなのだろうか?
取得費用は意外と高いと思うが……
まずは誰もが気になるはずの料金。富士スピードウェイの場合は新規取得の入会金が1万3100円、年会費が3万400円で合計4万3500円(税込)となる。ショートコース専用なら約半分だが、正直「安い!」と感じる金額ではないと思う。
多くのドライバーにとってサーキットを走る機会というのは、プロショップなどが主催する貸し切りの『イベント』であり、それならばサーキットライセンスもJAFのライセンスも不要。対してサーキットライセンスを使って走るのは、20分や30分といった時間単位で設定されている通称『スポーツ走行』枠で、原則としてライセンスを持ったドライバーしか走れない。
一般的なサーキット走行会の参加料金が1時間につき1万5000円~2万5000円と仮定すると、スポーツ走行は時間の長さにもよりけりだが4000円~と比較的リーズナブルになる。加えてイベントなどで占有されることの少ない平日が中心とはいえ、走行枠が多く時間も小刻みなので、インターバルを挟みながらの練習やセッティングには最適。そのため昔は公認レースに参加する人の練習という目的が多かった。
またサーキット走行会は事前の申し込みと支払いが必要なのに対し、スポーツ走行は予約が不要(サーキットによる)だったり走行料金も当日でオッケー。急にスケジュールが空いたので練習に行きたい、なんて状況になったときフレキシブルに対応しやすいのも嬉しい。
種類によっては取得条件が設けられているものもある
では続いてデメリットとは言わないが、占有の走行会と異なる注意点をいくつか。もっとも気を付けてほしいのはドライバーの装備だ。例えば宮城県のスポーツランドSUGOではスポーツ走行枠が2種類あり、ナンバー付きの車両が対象の『4C』は、レーシングスーツをはじめとする耐火性の安全装備が「強く推奨」という表現にとどまる。
またサーキットライセンスは例外こそあれど、取得した当該コースでしか有効とならない。以上を踏まえるとサーキットライセンスを持つべき人は、
- 公認レースの参加者または参加を予定している人
- 特定のコースをひたすら走り込みたいヘビーユーザー
- 平日に自由な時間が多く安全装備が揃っている人
これらに該当すれば入会金と年会費の元は十分に取れると思われる。最後に「当該コースでしか有効じゃない」の例外について手短に。近年はサーキット同士が連携してライセンスの共通化に取り組んでおり、富士スピードウェイでは鈴鹿サーキット/スポーツランドSUGO/筑波サーキットいずれかのライセンスを持っていれば、富士スピードウェイのスポーツ走行ができるようになった。
そしてスポーツランドSUGOでは岡山国際サーキット、オートポリスと提携し、それぞれライセンスの共通化を実現した。全国を転戦するレースの参加者や、遠征が好きな人にはありがたい限り。この流れがさらに多くのコースへ波及すれば、サーキットライセンスを持つメリットがさらに大きくなるに違いない。