自ら“トールボーイ”とも名乗っていた初代ホンダシティ
初代ホンダ・シティの登場は1981年10月29日。まさしく今からちょうど40年も前のことになる。例によって(!)同じ年のビルボードチャートを見渡すと、シーナ・イーストン、レイ・パーカーJr.、REOスピードワゴン、ダリル・ホール&ジョン・オーツ、ブルース・スプリングスティーン、コモドアーズ、ダイアナ・ロス……といった顔ぶれが並ぶ。生まれる前、生まれたての方には「ふーん」といったところだろうが、とっくに生まれていた筆者など、懐かしくも今でもしばしば聴く楽曲のメロディラインが次々と思い浮かび、つい原稿を書く手が止まってしまうほど(!)だ。
もちろん初代シティは、今でも40年前とは思えないほど鮮烈なインパクトを持って記憶のなかにある。あらためて手元にあるカタログを見返してみると、後ろにはホンダディーラーのスタンプが押してあるカタログが紛れていた。
しかも複数のディーラーのものがあった。当時の筆者は社会人になる直前だったが、よほどシティのことが気になったらしく、何軒かのディーラーに出向いてはカタログを貰い、実車を触りに行っていたらしい。まだ今のようにネットで何でも情報が手に入る時代ではなかったから、新車が出ると、気持ちをワクワクさせながらディーラーに出向いていたころだ。
ついでながら、恐ろしいことに当時のカタログのなかに、“見積書”が挟まっていることを今回発見した。最初のシティのバリエーションだった4ナンバーのPRO T(2シーター)とPRO F(4シーター)の試算を依頼していて、学生の分際で、セカンドカー持ちの生活スタイルを画策していたのかもしれない。
とにかく何もかもが斬新なクルマだった
シティはニュースにあふれてる……のキャッチコピーどおり、とにかく何もかもが斬新なクルマだった。シビックよりも背の高い全高(1470mm)と、トラックよりは低いがセダンより70mm座面の高い、見下ろし感覚の運転ポジションは、新しさのひとつ。自ら“トールボーイ”とも名乗っていた。
さらに割り切りもかなりのもので、先に触れた4ナンバー以外のグレードでも室内は鉄板剥き出しだったし、プラグ、エンジンオイルの点検に便利なよう、フロントグリルは開閉式になっていた。後席は3段のリクライニング+2アクションでクッションごとチップアップさせれば最大198Lのラゲッジスペースも作れた。
ラゲッジにはモトコンポを積載することができた
それと注目を集めたのが初代シティと同時発売された“モトコンポ”と呼ばれる、全長1185mm、乾燥重量42kgのミニバイク。ハンドルとシートを畳めば、シティのラゲッジスペースにすっぽりと載せられた(横に寝かせて積むこともできた)。2輪メーカーでもあるホンダらしいアイデアだった。ちなみにホンダでは、2001年に当時のステップワゴンへの車載を前提にした、折り畳み式電動アシスト自転車ステップコンポを発売している。 ただのコンパクトカーの範疇に留まらず、矢継ぎ早にバリエーションを投入し、楽しませてくれたのも初代シティの魅力だった。デビュー翌年の1982年にはターボ(9月)、ハイルーフ仕様のマンハッタンルーフ(11月)が登場。