クロスオーバーSUVの先駆け的存在
1994年、トヨタから突然のようにRAV4(Recreational Active Vehicle 4wheel drive)というクルマが発売される。1989年と1993年にコンセプトカーがモーターショーで展示されていたが、まさかこんなにポップなスタイルで登場するとは! 1990年代はRV(レクリエーショナル・ビークル)の時代だったので、こうしたクルマが出てくるのはおかしなことではないのだが、トヨタはまさに次の一手と言わんばかりにRAV4を発売した。
RVブーム全盛期に登場したエポックメイキングなクルマだった
1990年代のRVブームは、三菱パジェロや日産テラノ、トヨタ・ランドクルーザーやハイラックスサーフが牽引したもの。CCV(クロス・カントリー・ヴィークル)などとも呼ばれる、道なき道をどこまでも走れるクルマをあえて普段の市街地で使いこなす格好良さがもてはやされた。ところがこのRAV4。道なき道を走るには不安だが、一般的な日本の悪路も得意なうえ、舗装路での快適性にもこだわっており、いうなればこれがあればたいていのことには困らないよね! という性能を持ったモデルで登場した。
そんな初代RAV4のコンセプトは「アクティブでキュートなフォルム」「オンロードでもオフロードでも楽しめる確かな走り」「洒落たセンスと遊び心」の3つ。リサイクルしやすいように無塗装樹脂部品を多用したデザインは、無骨な面を残しながらも愛嬌のあるスタイリングに仕上げられたこともあり、老若男女に愛されるデザインに仕上がっていた。
実際に街なかでイメージカラーのブルーのRAV4を見かけた方も多いだろう。その鮮やかなカラーの愛らしいスタイリングは、当時、試乗や撮影をしていた際に「トヨタの新しいジープでしょ」などと、多くのオジ様方から声をかけられた記憶が残っている。本当はジープじゃないですけれど、と言いたかったがそれは野暮だろう。発売直後の注目度の高さは。歩行者から見られることで確信していた。
ちなみに当時ライバルとされたのはスズキ・エスクードだが、こちらはラダーフレームにパートタイム4WDを持つ本格CCVであり、ボディサイズ以外は比較の対象ではなかった。
デビュー当時は3ドアのみだった
初代RAV4のボディサイズは全長3695×全幅1695×全高1655mm。現在発売中のダイハツ・ロッキーが全長3995×全幅1695×全高1620mmだから、じつはロッキーよりもコンパクトだったのだ。
こうしたことから、当時のカローラ店販売仕様のRAV4 L(Liberty)、トヨタ・オート店販売車RAV4 J(Joyful)の月販目標台数合計2000台ではとても収まることなく、多くのバックオーダーを抱えることとなる。欲しくても買えないユーザーがあふれたのだ。
5ドアの追加でさらに人気がアップ
デビュー直後から人気モデルとなったRAV4は、人気がひと段落するころの1995年に、ホイールベースを200mm、全長4115mmに拡大した5ドアボディのRAV4 Vを発売する。
当時の販売店に話を聞いた話では、意外にもマーク2やカムリといった4ドアセダンからの代替えも多く、安価なRAV4が人気になると、販売店の売り上げが困るというセールスにはありがた迷惑なエピソードが……。これはRAV4が新しいクルマの形を示した証拠だろう、トヨタという会社の先見性をうかがわせてくれる。
そして1996年にはRAV4L EVを発売。世界で初めて大容量かつ長寿命のニッケル水素電池を搭載し、高効率永久磁石式同期モーター、高性能回生ブレーキを備えたEVで、一般電源での充電も可能にした仕様だった。
RAV4は現在のSUVと呼ばれる人気ジャンルの先駆けであり、海外での人気も高い。世界的にトヨタを代表するモデルの一台といってよいだろう。
そうそう、デビュー時はオジ様からの熱い視線と記したが、自動車雑誌でオーナー座談会を企画したら、驚くほど若い女性の方の応募があってぴっくり。彼女らはCMキャラクターのキムタクのファンだから、が理由の一番だったが、若い女性がクルマの本を読んで応募してくれたことにも驚いた。クルマ好きも自動車雑誌を読むのも男性。そんな思い込みを覆してくれたのが初代RAV4だった。
■トヨタRAV4
全長×全幅×全高:3695×1695×1655mm
ホイールベース:2200mm
車両重量:1150kg
乗車定員:4名
エンジン: 3S-FE 直列4気筒DOHC
総排気量:1998cc
最高出力:135ps/6000rpm
最大トルク:18.5kg-m/4400rpm
タイヤサイズ:前/後 215/70R16
ブレーキ:前/後 ベンチレーテッド・ディスク/ディスク
サスペンション:前/後 ストラット式/5リンクダブルウイッシュボーン式