モトコンポ登場のインパクトは凄まじかった
初代シティの開発コンセプトは「新感覚ニューコンセプトカーライフビークル」。小さな専有面積で居住性の高いトールボーイデザインを採用するとともに、優れた燃費と動力性能を発揮する新開発コンバックス(コンバックスとはCompact、Blazing-Combustion、Axion=高密度、速炎燃焼、原理)エンジンを搭載したコンパクトカーであった。
現在でいうとBセグメントに当たるだろう。そしてシティ搭載用として同時発売された、トランクに載せられるバイク「モトコンポ」と合わせた四輪+二輪の六輪ライフを提案。目的地までの移動はクルマで行き、目的地ではバイクで楽しむという、二輪も四輪も手掛けるホンダならではのクルマが一家に一台の時代から、一人一台の時代といった先を行く提案がなされていた。
この積載できる専用開発バイクのモトコンポは、車載するために小型軽量で作られたうえ、燃料やオイルの液漏れ防止機構や折りたたみ式ハンドルとステップを採用。
それでいて49ccのエンジンは、2.5psの2サイクルエンジンを搭載して、外出先、例えばキャンプ場に行った際の買い出しなどに対応できるプラスワンのツールであった。
現在でも人気が高いスクエアな形状が印象的なモトコンポだが、当時でも大柄な大人が乗ると、まるでサーカスの熊のような何とも言えない、笑いとほほえましさを周囲に誘った。だが、シティのリヤサスペンションの形状をモトコンポが積めるようにトランクスペースを改良した点は、FFを得意としたホンダらしい商品企画。
FFのメリットによる積載性の高さは、後の燃料タンクを前席下とした初代フィットにつながるような先見の明の高さの証明と言える。
面白いのは当時の販売計画で、シティの月販8000台に対して、モトコンポは1万台であったこと。二輪で世界のトップを走るホンダとしては、シティを買わないユーザーでもモトコンポを買うと踏んでいたことだろう。しかし、この四輪+二輪の六輪生活は1980年代ではうまく受け入れられなかった。シティは売れたが思うほどモトコンポは売れず、2代目シティではバイクを車載するコンセプトは継承されず。現在の六輪というとクルマ+自転車となるのだと思うが、テレビCMを含めてシティは時代を先取りしていた。
素晴らしいパッケージは初代フィットに継承された
シティは、初代プレリュード同様にフラッシュ・サーフェス・ボディを採用。トールボーイながら、ホンダ自慢のピラー(柱)とガラス面の段差を抑えた特性を備えて、見た目以上に優れた空力性能を誇ったうえに、高さが生み出す見下ろすような運転感覚を重視。ほかにはない個性や使い勝手を演出した。そのパッケージングは初代フィットに伝承されたようにも思えてくる。 エンジンはER型直4OHCで、1231ccの排気量から67ps/5500rpm、10.0kg-m/3000rpm(MT車)を発揮。タイヤサイズは165/70HR12(R・ハイパーシフト)であったが、700kg以下の軽量ボディで軽快な走りであっという間にヒットモデルとなるのである。
そして一年後の1982年9月、高性能ターボモデルが発売されることなる。
■初代ホンダ・シティR(ハイパーシフト)
〇全長×全幅×全高:3380mm×1570mm×1470mm
〇ホイールベース:2220mm
〇トレッド 前/後:1370mm/1370mm
〇最低地上高:160mm
〇車両重量:700kg
〇乗車定員:5名
〇室内長×室内幅×室内高:1615mm×1310mm×1175mm
〇エンジン型式/タイプ:ER型水冷直列OHC4気筒CVCC
〇総排気量:1231cc
〇最高出力:67ps/5500rpm
〇最大トルク:10.0kg-m/3500rpm
〇燃料消費率(10モード走行):19.0km/L
〇最小回転半径:4.5m(車体4.9m)
〇トランスミッション:副変速機付き4速MT(ハイパーシフト)
〇サスペンション:マクファーソンストラット独立懸架
〇ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング
〇タイヤサイズ:165/70HR12
〇車両本体価格:84万5000円(東京地区販売価格)
■ホンダ・モトコンポ
〇全長×全幅×全高:1185mm×5357mm×910mm
〇車両重量:45kg
〇エンジン型式/タイプ:AB12E空冷2サイクル
〇排気量:49cc
〇最高出力:2.5ps/5000rpm
〇タイヤサイズ 前後:2.50-8-4PR
〇当時車両価格:8万3000円(一部および離島は除く)