全世界で愛用されているオフロードの名車
トヨタのスポーツブランド「GR(GAZOO Racing)」の攻勢が止まらない。メーカー純正で足まわりなどにライトチューンを施したグレード「GRスポーツ」は、これまで多くのトヨタ車でラインアップされてきたが、ついにオフロード車のハイラックスにもGRスポーツが追加されることとなった。
じつは日本でハイラックスの「GRスポーツ」が販売されるのは今回が初だが、海外市場では先行するモデルがいくつか登場していた。これまでの歩みを追いながら、日本仕様のディテールを見てみよう。
ダカール・ラリーでもハイラックスが活躍中
トヨタのピックアップトラック「ハイラックス」は世界規模でファンが多いピックアップトラックで、圧倒的な耐久性と実用性が人気の理由。2015年にフルモデルチェンジした現行型は8代目で、タイ、マレーシア、アルゼンチン、パキスタン、南アフリカで生産されている。日本では先代の7代目は販売されなかったものの、2017年からタイ生産の8代目ハイラックスが輸入販売されている。
TOYOTA GAZOO Racingはラリーレイド競技の最高峰ダカール・ラリーにハイラックスで参戦中だ。これは4輪独立サスペンションを備えた4WDで、5Lの自然吸気V8エンジンをフロンドミッドに搭載した特別仕様。2019年にはトヨタ初の総合優勝を果たしている。写真の左は2021年参戦車両、右が2022年参戦予定車両のプロトタイプだ。
じつは、「GRスポーツ」の名がついたハイラックスの先駆けとなったのは、オフロード車の人気が高い南米市場だ。2018年11月のサンパウロモーターショーで「ハイラックスGRスポーツ」がデビューして好評を博し、さらに2019年6月には南アフリカでも発売されているのだ。
そんな海外での人気を受けて、日本では2020年1月の東京オートサロンにて「ハイラックスGRGコンセプト」がお披露目されたのが記憶に新しい。これはGRガレージを展開するディーラー12社による企画で、「ハイラックスZ“Black Rally Edition”」をベースに、デッキバーやサイドステップなどのパーツをアルゼンチン工場から取り寄せて仕立てたものだ。わずか限定20台ながら、456万円で市販された。
フェイスリフト後、タイでひと足先に新世代GRスポーツが発売
8代目ハイラックスは2020年8月にフェイスリフトして、台形のフロントグリルが大型化。これを機に、南米とアフリカでセールス好調なGRスポーツがアジア市場にも導入されるのではとウワサされていたところ、まずは2021年8月25日にタイで新型ハイラックスGRスポーツが発表された。なおタイ市場では8代目から「ハイラックスレボ(HILUX REVO)」の名で発売されているため、正式にはタイ版の商品名はハイラックスレボGRスポーツとなる。
タイ版のGRスポーツは4WD仕様と2WD仕様で異なるデザインが与えられている。パワートレインは共通して2.8Lの直列4気筒ディーゼルターボで、最高出力204ps/最大トルク500N・mというスペックに、パドルシフト付き6速ATの組み合わせ。4WD仕様は「ハイフロア」と称して、デッキバー、専用18インチホイール、赤いブレーキキャリパー、そして随所にGRのエンブレムが奢られている。
一方2WD仕様は「ローフロア」の名で、23mmローダウンする専用サスペンションを備えてホイールも17インチに。専用エアロパーツを装備して4WDとは全くことなる風貌となっている。これはこれでメーカー純正カスタム仕様として完成度が高い。
そして満を持して10月、トヨタからついに日本仕様のハイラックスGRスポーツがカタログモデルとして発表されたというわけだ。