ホンダNSR50(1987~1999)
当時新車価格:21万9000円
現在中古相場:50~100万円
最近のバイク人気による中古車価格の高騰は、原付クラスにも及んでいるから驚き。使い倒されて朽ちかけた古いスーパーカブでも、アニメで若い子たちに見つかった影響か20万円以上となっているような状態。
そんな原付クラスで極上車だとザラに80万円とか目を疑う中古相場になっているのが、90年代の原チャリ小僧たちから絶大な支持を集めていたNSR50です。 リミッターカットを行えばノーマルでも90km/h近くの最高速を叩き出すそのパフォーマンスは、お財布が中型バイクに届かない少年たちをガッチリと鷲掴み。全国各地の峠では膝に空き缶やカマボコ板をガムテープで巻きつけてヒザスリで攻めまくる光景が繰り広げられたのでした。中型バイクが買えないんだから、革ツナギなんてもっと手が出なかったんですよ。
そんな90年代である意味もっとも身近な青春バイクだったうえに、絶版2スト人気も現在の価格高騰に拍車をかけることに。やっぱり原付でもNSR人気は一番ですね。最終型となるレプソルカラーで美車ともなると100万円以下ではもう買えない勢いです。 しかも今では現存車両の多くがレーサーに改造されてしまっており、公道走行が可能な程度のいい車両は意外と少ないのもネックになっています。保安部品を付けて、いわゆる「公道戻し」をしようと思っても、まず部品が揃わない。純正パーツの多くはすでに供給が途絶え、サイドスタンドひとつとってもネットオークションでボロボロに錆びたものを7000円くらいで入手するか、他機種のものを加工して無理やり取り付けるしかないといった感じなのです。従って今後も値上がりしそう。レーサー用の改造パーツは、まだ豊富なのですが……。原付二種クラスとなる兄弟車のNSR80は、もともとの数の少なさも相まってさらにすごい値段となっています。
ホンダNSR50
初代は3本スポークにダウンチャンバー。中期から5本スポークにアップチャンバー、新形状アッパーカウルにあらためられました。さらに後期でトップブリッジとフロントフォークまわり、テールカウルも変更。熟成が重ねられたエンジンも含めて、ミニバイクレース界ではこれら年代ごとに分かれたどのパーツが一番速くなるかの情報が知れまわり、一見するとノーマルの公道仕様でもチャンポンパーツのレース仕様からレストアされた車両も多数あるので注意が必要です。
SPEC■全長1580mm 全幅625mm 全高910mm シート高665mm■水冷2スト単気筒ピストンケースリードバルブ 49cc 最高出力7.2ps/10000rpm 最大トルク0.65kg-m/7500rpm 乾燥重量76kg
ホンダNR(1992)&ヤマハYZF-R7(1999)
当時新車価格:520万円(NR)/ 約400万円(YZF-R7)
現在中古相場:ASK!!!!
こうして見てくると、高騰している90年代バイクではその多くが2ストであることがひとつの特徴になっています。それは排ガス規制により、1999年限りでそのほとんどが消えてしまったからにほかならないからでしょう。そんな90年代において、今につながるもうひとつの流れも誕生しました。それが当時新車価格から500万円以上のプライスタグを付けた超絶プレミアムバイクたちです。
最近でこそホンダが2190万円でMotoGPマシンの公道版であるRC213V-Sを出したり、ドゥカティも同様に1195万円のスーパーレッジェーラV4といったマシンを発売。BMWなどもそれに続いているような状況ですが、その驚きを国産車で初めてもたらしたのが1992年のホンダNRでした。すでにホンダは1987年にレース用ホモロゲーションモデルとして限定のVFR750R(RC30)を発売し、その価格で世間を驚かせていましたが、それでも今ではごく普通の148万円。
しかしNRは常識のはるか上を行っていました。そのお値段、じつに520万円! WGPレーサーからフィードバックされた、通常ピストン2個を1個につなげたような楕円ピストンで実質V8の性能を持つV4エンジンを心臓に、外装も当時では珍しいカーボン製となっていた、まさに夢の結晶のようなバイクでした。 今ではよく見られるバックミラー内蔵のウインカーも当時としては新鮮。当時すでに楕円ピストンはレースで使えなくなっていたため純公道マシンであったのですが、2輪でもランボルギーニ・カウンタックのようなスーパーカージャンルが現れたといった捉え方をされていました。
アクセサリーとして同時発売されたカーボンヘルメットも20万円以上。どこのお金持ちが買えるんだろうとバイク雑誌を見ながら羨ましく思ったものです。
一方、RC30の成功を見たヤマハも、高価なレース用ホモロゲーションマシンのリリースを開始します。1989年に200万円でOW-01ことFZR750Rを、ホモロゲ登録可能な限定500台で国内でも発売。そして90年代最後を締めくくる99年にその後継となるYZF-R7(OW-02)を誕生させます。 しかし、やはり限定500台となるOW-02は日本では売られず、おもにヨーロッパ向けの海外販売のみということに。それはOW-01よりも倍となった約400万円というその価格にあったのでしょう。どうしても欲しい人たちには逆輸入という手が用意されていました。
かくして90年代に発売されたこの2台の超絶プレミアバイクは、その限られた台数もあってレア度に拍車がかかり、今では中古相場がつかない状態に。まず出物がありません。あったとしても、おそらく1000万円クラスは下らないことでしょう。
ホンダNR
ホンダが持てる技術のすべてを投入した究極マシンとして登場。バブルがもたらした最後の残り香が、520万円という破格のマシンの市販化を許してくれた。じつはそのバブル後の不景気に新古車が250~300万円くらいで入手できた時期があり、今ではそれを逃したことが大きく悔やまれることに。
厳密には生産性の関係から、ワークスレーサーとまったく同じ長円形状の楕円ピストンというわけにはいかず「正規楕円包絡線形状」だったりしますが、それでも唯一無二のエンジン。できることならオーナーになってみたいものです。
SPEC■全長2085mm 全幅890mm 全高1090mm シート高780mm■水冷4ストV型4気筒DOHC8バルブ 747cc 最高出力77ps/11500rpm 最大トルク5.4kg-m/9000rpm 乾燥重量223kg
ヤマハYZF-R7
スーパーバイクレーサーとして使用することを前提としていたYZF-R7(OW-02)。そのため公道走行可能な、ノーマルなままの現存個体数はわずか。1998年に登場したYZF-R1シリーズに連なるスタイリングが与えられたR7ですが、スーパーバイクレースは間もなく2003年に750から1000ccに移行し、レースそのものもR1に譲ることとなってわずか4年で消えたのでした。今年春に海外で発表された同名車種とは、まったくの別物です。
SPEC■全長2060mm 全幅720mm 全高1125mm シート高840mm■水冷4スト並列4気筒DOHC5バルブ 49cc 最高出力106.0ps/11000rpm 最大トルク7.4kg-m/9000rpm 乾燥重量176kg