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90年代バイクの価格暴騰が止まらない! 青春を共に過ごした「ゼファー」「RGV-Γ」「NSR」

バイク人気が再燃し中古価格が上昇中

 コロナ禍によって、他人と密にならずに楽しめる趣味や迅速に移動できる手段として、ふたたび脚光を浴びることとなっているオートバイ。しかし、いざ新車を買おうと思ってもそのコロナの影響や半導体不足で、世界中の生産工場はストップ状態と納車はいつになることやら。

 では中古へ……と思うと、これまた欲しいバイクのタマがない。それもそのはず。昔親しんだバイクたちは相次ぐ排ガス規制のおかげでその多くが絶版となり、今や高嶺の存在に。そこに加えて今回またたくさんの人が殺到するものだから、中古車価格は暴騰の一途へ。60~70年代のいわゆる「旧車枠」はもとより、最近では90年代のマシンまでその余波が及んでいます。今回は、そんな「特に高騰ぶりが目立つ90年代マシン」の国産4メーカー代表を紹介いたしましょう。

カワサキ・ゼファーシリーズ(1989~2007)

当時新車価格:52万9000円(400)/65万9000円(750)/84万9000円(1100)
現在中古相場:80~170万円(400)/140~270万円(750)/150~290万円(1100)

 今、90年代中古バイクの相場で一番アツいことになっているマシンと言ったら、やっぱりカワサキ。90年代ネイキッドブームの火つけ役となったのが、ご存じカワサキのゼファーシリーズです。

 往年のZ1・Z2をオマージュした王道ネイキッドスタイルに、エンジンももちろん空冷4気筒で、1989年に400から始まり、1990年には750、1992年には1100が登場。2000年代終わりまで約20年間に渡ったその生産時期は、じつはZ1・Z2よりも長いというものになりました。このバイクとともに青春を過ごしたというライダーも数多いことでしょう。 10年ほど前までは400だとタダ同然で手に入ったこともできたゼファーでしたが、登場からすでに30年あまりということで今では立派な「旧車枠」。Z1・2、Z400FXたちがもう手の届かない中古相場になってしまったこともあって、気が付けばあれよあれよという間にこちらも高騰。400でも今や100万円以上するのはちっとも珍しくないという状態に。1100や750だと200万円以上で取引されている場合が多いです。 そんなゼファーシリーズのなかでも、一目置かれるのが1996年から追加されたワイヤースポークホイールを履き、よりオリジナルZに近いイメージとなった1100RS&750RSの2台。

 カラーリングも火の玉やタイガー、玉虫などZで人気だったものが揃っています。もっともホイール形状から来る制約のために、スタンダードと比べてチューブタイヤであったり、フロントブレーキはダブル装着ではあるものの片押し2ポットキャリパーになってしまっていたり。ついでに車重も増えていたりと性能面ではちょっと劣っていたりするのですが、そこはスタイルの前には許されてしまう部分でしょう。

 スタンダードより販売歴も短く個体数も多くないので、今後はどんどん希少度が高まっていくと思われます。また、ワイヤースポークはキャストスポークと比べて圧倒的にサビやすいので、オーナーになったら小まめな洗車は忘れずに!

カワサキ・ゼファー400(1989モデル

 1989年に登場したシリーズ第1弾。初期型はメーターハウジングがフラット形状だったが、のちに砲弾形状に変わって、よりZっぽくなった。1996年からは4バルブとなり53psにパワーアップしたゼファーχ(カイ)も登場。現存個体はその多くがマフラーやハンドル、シートを中心に何らかのカスタムを受けており、完全ノーマルの極上車はかなり希少だ。

SPEC■全長2100mm 全幅755mm 全高1095mm シート高770mm■空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ 399cc 最高出力46ps/11000rpm 最大トルク3.1kg-m/10500rpm 乾燥重量177kg

カワサキ・ゼファー750(1990モデル)

 1990年に登場したシリーズ次兄。当時は400と1100の販売数に勝てなかったが、じつはオリジナルのZにもっとも近い雰囲気のスタイルを持っていたのがこの750。1100とともに400より2年早い2007年に火の玉カラーのファイナルエディションをもって生産終了となった。

SPEC■全長2105mm 全幅770mm 全高1095mm シート高780mm■空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ 738cc 最高出力68ps/9500rpm 最大トルク5.5kg-m/7500rpm 乾燥重量200kg

カワサキ・ゼファー1100RS(1996モデル)

 満を持して1991年に送り込まれたシリーズ最高峰で、1100㏄の大排気量空冷4気筒が醸し出すのはまさに王者の風格。写真と諸元はワイヤースポークホイールのRS。1996年に登場し2003年までの7年間にSTDと併売されていた。

SPEC■全長2165mm 全幅780mm 全高1115mm シート高795mm■空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ 1062cc 最高出力93ps/8000rpm 最大トルク9.1kg-m/7000rpm 乾燥重量249kg

スズキRGV-Γ250SP(1996~1999)

当時新車価格:77万7000円
現在中古相場:200~300万円

 絶版となって久しい2ストレプリカにも人気が集まっていることは、もう皆さんご存じのはず。なかでも一番人気はレプリカブーム当時から最強と言われたホンダのNSR250R。1986年に登場した1型はともかく、1988年の2型からは中古相場で結構なプレミア価格となり、スイングアームが片持ちプロアームでカード式のメインキーといった装備も特徴的な最終型、それも上級版のSPでレプソルカラーだと250万円は下らないという結構な高騰ぶりとなって驚きです。

 しかし、今回ここで紹介したいのはそのNSRではなく、真の最強ながら不遇の2ストレプリカと言われる1996年に登場したスズキのRGV-Γ250SP(VJ23)です。 このマシンが発売された当時は、すでにレプリカ人気は衰えて世間はすっかりネイキッドブーム。スズキ社内でも賛否両論があったそうですが、あえてコストのかかる完全新設計の車体とエンジンが与えられてRGV-Γ250SP(VJ23)は誕生したのでした。それと言うのも当時はワークスΓのXR95が全日本250でチャンピオンを獲得し、WGP250での活躍も期待されていたことが背景にあったからかもしれません。

 VJ23はこのXR95から多くのフィードバックを受けている。アッパーカウルにはレース用のラムエアシステムが組み込められていたり、タンデムシートを外すと空力にこだわったワークスマシン譲りのテールカウル形状が現れてSP250レースではその真価を発揮できるなど、レプリカ復権の熱意が込められたアツいモデルでした。

 しかしながら、レプリカブームの再燃ならずVJ23は短命に。生産台数も2300台あまりだったと言われています。そんなマシンだけに現在での希少価値はバツグンで中古相場も超強気。ワークスマシンもまとっていたラッキーストライク・スズキの車体色はとくに高騰ぶりが目立ちます。

スズキRGV-Γ250SP (1996モデル) 

 国産最後の2スト250レプリカにふさわしい戦闘力が与えられていたVJ23。国産2ストレプリカとしては一番最後に設計されたマシンであるため、これこそ真の最強と呼んでいるスズキファンも数知れません。

SPEC■全長1965mm 全幅695mm 全高1095mm シート高765mm■水冷2ストV型2気筒クランクケースリードバルブ 249cc 最高出力40ps/9500rpm 最大トルク3.5kg-m/8000rpm 乾燥重量134kg

ヤマハR1-Z(1990~1999)

当時新車価格:48万9000円
現在中古相場:50~120万円

 ヤマハで最近の価格高騰が著しいモデルと言ったら、なんといってもこの9月限りで生産終了となったばかりのSR400。しかし、SRは43年の歴史が続いた、いわば80年代から続いてきたマシン……ということで、ここで紹介するのはもうひとつの注目株。それが2ストネイキッドのR1-Z、ちなみに正しい読み方は“アールワンズィー”です。

 1990年の初夏に、R1-Zは80年代に活躍したRZ250の後継車として登場しました。本来なら“RZ-1”と名乗りたかったところでしょうが、その商標はひと足早く日産自動車によって使われてしまっており、国道1号をイメージするR1を車名に……などといったもっともらしい説明がなされていた記憶があります。 ともあれ、R1-ZはRZを引き継ぐにふさわしい鋭さを持ったマシンでした。そのエンジンは初代TZR250(1KT)の2ストパラレルツインをベースに、ミッションの見直しなどで加速感や低中速域を重視したセッティングが与えられ、R1-Z用に専用設計された独特なクロス形状の鋼管ダブルクレードルフレームに搭載。チャンバーマフラーも右2本出しの専用設計で、カーボン巻きのサイレンサーがレーシーなスタイリングを誇っていました。

 TZR譲りのエンジンは開発陣の予想を超えるパフォーマンスを備えていたのでしょう。R1-Zは登場翌年の1991年には、早くもマイナーチェンジを受けてスイングアームピボットの剛性を強化。さらにまた翌年の1992年には馬力自主規制に合わせて、出力を5ps下げたにも関わらずエンジンマウントを強化しています。同時にタイヤもラジアルとなって、アツい走りに一層応えられるようになっていたのでした。

 しかしながら、90年代のネイキッドブームにおいてはゼファーを代表するリヤ2本サスの4スト直4に人気が集中。R1-Zはコアなライダーたちからは支持されたものの、1999年には排ガス規制によって生産終了となってしまいます。パンチの効いた2ストを持つR1-Zの魅力に多くの人々が気付いたのは、それがなくなった後になってからでした。最近の中古相場では100万円超えも目立つようになってきています。

ヤマハR1-Z (1990モデル)

 750キラーと呼ばれたRZ250の後継にふさわしいスポーティな性能が光っていたR1-Z。セパハン&モノサスの車体は2ストならではの軽さも相まって、峠では鋭い走りを見せてくれたのでした。

SPEC■全長2005mm 全幅700mm 全高1040mm シート高775mm■水冷2スト並列2気筒クランクケースリードバルブ 249cc 最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.7kg-m/8500rpm 乾燥重量134kg

ホンダNSR50(1987~1999)

当時新車価格:21万9000円
現在中古相場:50~100万円

  最近のバイク人気による中古車価格の高騰は、原付クラスにも及んでいるから驚き。使い倒されて朽ちかけた古いスーパーカブでも、アニメで若い子たちに見つかった影響か20万円以上となっているような状態。

 そんな原付クラスで極上車だとザラに80万円とか目を疑う中古相場になっているのが、90年代の原チャリ小僧たちから絶大な支持を集めていたNSR50です。 リミッターカットを行えばノーマルでも90km/h近くの最高速を叩き出すそのパフォーマンスは、お財布が中型バイクに届かない少年たちをガッチリと鷲掴み。全国各地の峠では膝に空き缶やカマボコ板をガムテープで巻きつけてヒザスリで攻めまくる光景が繰り広げられたのでした。中型バイクが買えないんだから、革ツナギなんてもっと手が出なかったんですよ。

 そんな90年代である意味もっとも身近な青春バイクだったうえに、絶版2スト人気も現在の価格高騰に拍車をかけることに。やっぱり原付でもNSR人気は一番ですね。最終型となるレプソルカラーで美車ともなると100万円以下ではもう買えない勢いです。 しかも今では現存車両の多くがレーサーに改造されてしまっており、公道走行が可能な程度のいい車両は意外と少ないのもネックになっています。保安部品を付けて、いわゆる「公道戻し」をしようと思っても、まず部品が揃わない。純正パーツの多くはすでに供給が途絶え、サイドスタンドひとつとってもネットオークションでボロボロに錆びたものを7000円くらいで入手するか、他機種のものを加工して無理やり取り付けるしかないといった感じなのです。従って今後も値上がりしそう。レーサー用の改造パーツは、まだ豊富なのですが……。原付二種クラスとなる兄弟車のNSR80は、もともとの数の少なさも相まってさらにすごい値段となっています。

ホンダNSR50

 初代は3本スポークにダウンチャンバー。中期から5本スポークにアップチャンバー、新形状アッパーカウルにあらためられました。さらに後期でトップブリッジとフロントフォークまわり、テールカウルも変更。熟成が重ねられたエンジンも含めて、ミニバイクレース界ではこれら年代ごとに分かれたどのパーツが一番速くなるかの情報が知れまわり、一見するとノーマルの公道仕様でもチャンポンパーツのレース仕様からレストアされた車両も多数あるので注意が必要です。

SPEC■全長1580mm 全幅625mm 全高910mm シート高665mm■水冷2スト単気筒ピストンケースリードバルブ 49cc 最高出力7.2ps/10000rpm 最大トルク0.65kg-m/7500rpm 乾燥重量76kg

ホンダNR(1992)&ヤマハYZF-R7(1999)

当時新車価格:520万円(NR)/ 約400万円(YZF-R7)
現在中古相場:ASK!!!!

 こうして見てくると、高騰している90年代バイクではその多くが2ストであることがひとつの特徴になっています。それは排ガス規制により、1999年限りでそのほとんどが消えてしまったからにほかならないからでしょう。そんな90年代において、今につながるもうひとつの流れも誕生しました。それが当時新車価格から500万円以上のプライスタグを付けた超絶プレミアムバイクたちです。

 最近でこそホンダが2190万円でMotoGPマシンの公道版であるRC213V-Sを出したり、ドゥカティも同様に1195万円のスーパーレッジェーラV4といったマシンを発売。BMWなどもそれに続いているような状況ですが、その驚きを国産車で初めてもたらしたのが1992年のホンダNRでした。すでにホンダは1987年にレース用ホモロゲーションモデルとして限定のVFR750R(RC30)を発売し、その価格で世間を驚かせていましたが、それでも今ではごく普通の148万円。

 しかしNRは常識のはるか上を行っていました。そのお値段、じつに520万円! WGPレーサーからフィードバックされた、通常ピストン2個を1個につなげたような楕円ピストンで実質V8の性能を持つV4エンジンを心臓に、外装も当時では珍しいカーボン製となっていた、まさに夢の結晶のようなバイクでした。 今ではよく見られるバックミラー内蔵のウインカーも当時としては新鮮。当時すでに楕円ピストンはレースで使えなくなっていたため純公道マシンであったのですが、2輪でもランボルギーニ・カウンタックのようなスーパーカージャンルが現れたといった捉え方をされていました。

 アクセサリーとして同時発売されたカーボンヘルメットも20万円以上。どこのお金持ちが買えるんだろうとバイク雑誌を見ながら羨ましく思ったものです。

 一方、RC30の成功を見たヤマハも、高価なレース用ホモロゲーションマシンのリリースを開始します。1989年に200万円でOW-01ことFZR750Rを、ホモロゲ登録可能な限定500台で国内でも発売。そして90年代最後を締めくくる99年にその後継となるYZF-R7(OW-02)を誕生させます。 しかし、やはり限定500台となるOW-02は日本では売られず、おもにヨーロッパ向けの海外販売のみということに。それはOW-01よりも倍となった約400万円というその価格にあったのでしょう。どうしても欲しい人たちには逆輸入という手が用意されていました。

 かくして90年代に発売されたこの2台の超絶プレミアバイクは、その限られた台数もあってレア度に拍車がかかり、今では中古相場がつかない状態に。まず出物がありません。あったとしても、おそらく1000万円クラスは下らないことでしょう。

ホンダNR

 ホンダが持てる技術のすべてを投入した究極マシンとして登場。バブルがもたらした最後の残り香が、520万円という破格のマシンの市販化を許してくれた。じつはそのバブル後の不景気に新古車が250~300万円くらいで入手できた時期があり、今ではそれを逃したことが大きく悔やまれることに。

 厳密には生産性の関係から、ワークスレーサーとまったく同じ長円形状の楕円ピストンというわけにはいかず「正規楕円包絡線形状」だったりしますが、それでも唯一無二のエンジン。できることならオーナーになってみたいものです。

SPEC■全長2085mm 全幅890mm 全高1090mm シート高780mm■水冷4ストV型4気筒DOHC8バルブ 747cc 最高出力77ps/11500rpm 最大トルク5.4kg-m/9000rpm 乾燥重量223kg

ヤマハYZF-R7

 スーパーバイクレーサーとして使用することを前提としていたYZF-R7(OW-02)。そのため公道走行可能な、ノーマルなままの現存個体数はわずか。1998年に登場したYZF-R1シリーズに連なるスタイリングが与えられたR7ですが、スーパーバイクレースは間もなく2003年に750から1000ccに移行し、レースそのものもR1に譲ることとなってわずか4年で消えたのでした。今年春に海外で発表された同名車種とは、まったくの別物です。

SPEC■全長2060mm 全幅720mm 全高1125mm シート高840mm■水冷4スト並列4気筒DOHC5バルブ 49cc 最高出力106.0ps/11000rpm 最大トルク7.4kg-m/9000rpm 乾燥重量176kg

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