ビギナーからベテランまで楽しめる次世代モータースポーツ
滑りやすいスケートリンクを舞台に速さを競う新しいモータースポーツが、電気カートを使った「SDG’s ERK on ICE」である。SDG’sは持続可能な開発目標のことだ。ERKというのは、エレクトリック・レーシング・カートを略したものである。エンジンに換えてモーターを搭載したレーシング・カートを使い、サーキットやカートコースなどでレースを行う。
R34GT-Rとほぼ同じタイムを叩き出すERKカート
舘内端さんが代表理事を務める日本EVクラブは、このERKを使ったレースを早くから開催していた。これまでに筑波サーキットのコース2000などで30分耐久レースやタイムアタックを行っている。最速ラップは1分4秒台(ちなみに姉妹誌CARトップのテストでR34型スカイラインGT-Rが1分4秒400を記録)だ。強烈なGを感じる驚異的な加速の伸びに加え、コーナリング限界は驚くほど高いから速いタイムを出せるのである。
ERK on ICEは2020年からスタートした。いうまでもなく、これはインドアの新しいモータースポーツだ。ERKは電動マシンなので排ガスを出さない。CO2を出さないだけでなく、音も静かだ。だから建物のなかでもレースを開催できる。しかも氷上はミューが低いので、スピードもそれなりだ。ちょっと多めにアクセルを開けると、カートは滑って前に進まない。さらにラフなアクセルワークを行うと簡単にスピンする。
1周100mのオーバルコースで速さと到着タイムを競う
9月23日の秋分の日、その第2回大会が新横浜スケートセンターで開催された。この競技は、特製のスパイクタイヤを装着したERKを2台ずつ、アイススケートリンクの1周100mのオーバルコースに並べ、速さと到着タイムを競う。
ERKカートは観ている者をも熱くさせるワクワク感がある
もちろんカートの経験によって技量に差がある。そこで今回から3クラスに分けてレースを行った。ビギナークラス、エキスパートクラス、そしてマスタークラスだ。ビギナークラスとエキスパートクラスは20名ずつが参加し、4名ずつに分かれて5レースを行う。先導車の後をついて数周の慣熟走行を行った後、ローリングスタートもしくはグリッドスタートする。先導車をドライブするのは、モータージャーナリストのまるも亜希子さんだ。なお、ゲスト解説として竹岡 圭さんが来場し、イベントを盛り上げた。
レースの周回数は1、2周だからちょっとのミスも許されない。だが、多くの人は氷上のカートレースは初めてだから、コントロールするのに悪戦苦闘していた。速く走ろうと意気込むと、勢い余ってスピンするカートもある。だが、逆に華麗なカウンターステアやドリフトを決める猛者もいた。スピードはそれなりだが、ドライバーだけでなく観ている者をも熱くさせるワクワク感がある。
メディアVS一般人という組み合わせで行われたマスタークラス
メインイベントのマスタークラスは、モータースポーツの出場経験があるドライバーを中心にしたチームによって争われるレースだ。
前回はモータージャーナリストとメディアの編集者がコンビを組み、参戦した。が、今回はメディア関係者による4チームに加え、一般の参加者も募っている。一般参加チームは、アルボルアルデア(木村 順/土志田洸彰)、ブースカ隊長(大橋めぐみ/安井和弥)、KRFレーシング(川瀬明洋/行田広光)、TEAM PLUGO(山崎晴太郎/大川直樹)の4チームが選ばれ、出場した。
パシュート方式がレースを面白くする!
オーバルコースの両サイドに設けたスタートラインとゴールラインにライバル同士が分かれて並び、合図とともに猛ダッシュする。3周走って早く2台がゴールしたチームが、このレースの勝者だ。
奇しくも1回戦は一般参加チームとジャーナリスト・メディアチームの対戦となった。だが、勝ちに名乗りをあげたのは、Driverチームを除き、一般参加チームだ。Auto Messe Webチームはクジ引きでKRFレーシングチームと対戦することになった。
優勝は息が合った走りを見せたKRFレーシングチーム
14時45分。いよいよ、Auto Messe Webチームの出走の出番が回ってきた。結果から言うと、スタートは良かったが、暴れるマシンに手を焼き、トップ交代にも手間取ったため、惜しくも敗れ去っている。健闘していたDriverチームもKRFレーシングチームに敗れ、2回戦で姿を消した。ちなみに性能差があったようで、勝ったのは同じマシンだ。
決勝レースまで駒を進めたのはKRFレーシングチームとアルボル アルデアチームだ。緊迫したレースになったが、レーシングカートの強豪、KRFレーシングチームのふたりが最初にゴールラインを駆け抜けた。初めてコンビを組んだそうだが、息が合った走りを見せ、ストレートもコーナーも速い。