ファンの多いブランドは評価がなぜ浮沈するのか
「初代が創業して、二代目で傾き、三代目が潰す」といった言葉があるが、名門でも名車でもそれを継承するというのは難しい。伝統的な車名を引き継ぐクルマたちも、モデルチェンジごとに評価が浮き沈みすることは珍しくない。クルマファンにとって長きにわたり話題となってきた、そんな傾向を振り返ってみたい。
スカイライン人気は代によって差が顕著に
日産車にとくにその傾向が強いものがあった。わかりやすいのがスカイラインだろう。
プリンス時代の初代、そしてポルシェ904を相手に善戦した元祖「スカG」、二代目のS54は別として、日産との合併後に登場した三代目の「ハコスカ」(C10)は、もっとも人気のある旧車として知られている。
注目すべきはこのあとだ。まずR30で、待望のDOHCエンジンが復活。ツインカムターボとなった「2000ターボRS」は、「史上最強のスカイライン」といわれ、モータースポーツでも日産ワークスとして、ハコスカ以来久々にレースに復帰を果たしている。
第二世代GT-Rも人気が乱高下
その反省から生まれたのがR32だろう。
そしてR33……。
そうしたR33に代わって登場したR34は、第二世代GT-Rのラストモデルということで、現在中古車価格が1000万円オーバーという超人気車種に。
というわけで、R30以降のスカイラインの人気具合を振り返ると、
R30が↗、R31が↘、R32が↗、R33が↘、R34が↗、と型式で偶数が上向き、奇数が下向きというのをクリアしているのがわかる(編集部注:販売台数ではなく、あくまで世間一般の評価)。
好調なスタートを切った平成シルビアの場合
同様にシルビアなども、S13が1.8~2Lサイズで価格が手ごろなFR、そしてターボモデルもラインアップ。「アートフォース・シルビア」のコピーにふさわしいきれいなスタイリングもあって、大ヒットを記録した。
スカイラインと並ぶ金看板フェアレディZの場合
もう一台、フェアレディZはどうか。
2008年に登場したZ34は、Z33よりもホイールベースを100mm短縮、およそ100kgもの軽量化が施されているが、価格帯が大幅に上がってしまったこともあり、存在感が薄い存在に……。
日産はファン心理をもっとよく理解して欲しい
こうして振り返って見ていると、日産の場合、ブランドイメージを守りつつ、ファンの期待に応える製品を出し続けるのがあまり得意ではなかったようだ。
なぜこうなってしまうのかといえば、作り手側が飽きるというか、「同じものを求めるファンなんてうんざり」と思っているところがあるからではないのだろうか。
しかし、どの分野でも、ファンとは同じものの反復作用に快感を覚える人たちのことだ。
かつてミュージシャンの大滝詠一が、比較的同じタイプの楽曲を作り続ける山下達郎に対し、「山下君は偉い! それは同じものを求めてやまないファンに対する、大いなる愛情だ」と評したそうだが、日産に足りなかったのも、まさにそのファンに対する愛情だったのではないか。腹腰を据えて、キープオン! そうすればファンは必ずついてくると思う。
同じ傾向は、ホンダにもあるように思えてならない。F1への参戦と撤退を繰り返すのもそうではないだろうか。2代目NSXや、S2000、S660の幕引きの仕方、シビックタイプRなどを見ていると、ファン心理がわかっていないのではとも。
その点偉いと思うのは、トヨタのクラウンやマツダのロードスター。そしてポルシェ911。これらのクルマはファン心理の呪縛に縛られながらも健闘していて、メーカーの大いなる愛情を感じられる存在である。